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業務変革時の留意点

テーマ選定の背景

・人口減少や生産年齢人口の減少により、DXなど生産性向上及び既存業務からの変革の必要性に迫られている。
・中小企業や小規模企業でも上記が求められ、中小企業診断士による伴走支援の機会もあると推測される。
・企業内診断士である私は、本業にて、ERPなど基幹システムの入れ替えや新規システム導入を経験した。
・各担当者がExcelなどを用いて実施している業務に対して、効率化や情報の一元管理などを目的に新規システムを導入した際に、「なぜシステムを使わなければならないんだ」などある種の抵抗が見られた。
・本業で経験した、業務変革時の社内の抵抗を事例に、中小・小規模企業におけるDXなどの業務変革時の留意点を下記書籍も参考に考察する。

榊巻 亮 著. 抵抗勢力との向き合い方, 日経 BP 社, 2017

抵抗の発生と成長

榊巻は著書『抵抗勢力との向き合い方』にて、抵抗が発生する理由及び抵抗の強さに関して下記のように示し、「変革を起こそうとすると、抵抗は必ず起きる。」と述べている。
(榊巻 亮 著. 抵抗勢力との向き合い方, 日経 BP 社, 2017, Kindle 版 P25より引用)

・抵抗が発生する理由
①現状維持バイアス
②保有効果
③損失回避性(プロスペクト理論)
出典:榊巻 亮 著. 抵抗勢力との向き合い方, 日経 BP 社, 2017, Kindle 版 P25-26より引用

・抵抗の強さ

出典:榊巻 亮 著. 抵抗勢力との向き合い方, 日経 BP 社, 2017, Kindle 版 P33-34「図2-1 抵抗の強さレベルの4段階」より引用、筆者再作成

本業では・・・
・「現状維持バイアス」、「損失回避性」により抵抗が生まれ、「レベル3:何が何でも反対」まで抵抗が育っていったと思われる。
・これは、システム導入前の課題検討段階において、社内のキーパーソンしか参加してもらわなかったことに起因すると思われる。
・キーパーソン以外の方の当事者意識が低く、またキーパーソン以外の方に対して業務変革後のありたい姿の共有が甘くなり、不満が成長し、強い抵抗になったものと考えられる。

中小・小規模企業における業務変革時の留意点

上記で紹介した著書、本業での経験、中小・小規模企業の組織構造を考慮すると、下記3点が重要になると考える。

①みんなで変革後のありたい姿の作成と共有
②発生してしまった抵抗には、小さな成果と根気強くフォロー
③トップの積極的な関与

①みんなで変革後のありたい姿の作成と共有
・榊巻 亮 著. 抵抗勢力との向き合い方, 日経 BP 社, 2017, Kindle 版 P75 図3-3「問題解決の6層構造」では、下記手順で目指す姿を作成していくとしている。
(現状→課題→原因→施策→効果/投資/リスク→目指す姿)
・中小企業診断士の得意とするところ。DXなど業務変革時には、支援チームからの一方的な提示ではなく、この過程を経営トップから一般社員含め全員で各ステップを踏んでいくことが望ましいと考える。
・大企業ではなかなか難しいが、経営トップから社員までの距離が近い規模の小さな会社では実現できる可能性が高まると考える。
・変革後のありたい姿までみんなで共有。抵抗の発生を早い段階で防ぎ、発生したとしても可能な限り小さくしたい。
・またありたい姿の作成・共有により、社内の一体感も醸成される。

②発生してしまった抵抗には、小さな成果と根気強くフォロー
・榊巻は著書『抵抗勢力との向き合い方』にて、効果としては小さくてもよいから、現場が「変わったな」と実感できる施策を素早く実行すること(例えば、承認の廃止や集計の自動化)を推奨している。
(出典:榊巻 亮 著. 抵抗勢力との向き合い方, 日経 BP 社, 2017, Kindle 版 P107-108より筆者要約)
・筆者も本業にて、すぐに効果が実感できる簡単な施策を繰り返し実行し、抵抗する方々との距離を少しずつ縮めるよう努めている。
(時々辛辣なご意見も頂き、心が折れそうになることもあるが根気強く…)

③経営トップの積極的な関与
・2021年版中小企業白書では、デジタル化推進による業績への影響について、経営者が積極的に関与している企業では75%の企業でプラスの影響が出ていることが示されている。
・これには下記要因があるのではないかと推察する。
1) 変革後のありたい姿の作成と共有により、経営課題の解決を図りつつ社内の一体感を高めている。
2) 会社としての本気度、危機感を示し、抵抗と対峙することにより変革を最後までやり遂げている。

まとめ

・中小・小規模企業の業務変革において、抵抗を最小限にとどめ、また抵抗に対処するには、下記3点が重要と考える。
①みんなで変革後のありたい姿の作成と共有
②発生してしまった抵抗には、小さな成果と根気強くフォロー
③経営トップの積極的な関与




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