遠藤政城

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最近の記事

生活を手もとに戻すためのケア

小さな少女が、トラックの前に飛び出そうとしている。見知らぬ人がそこに通りかかる。彼女は、少女を助けるべきだと思うが、本当にそうすべきなのか確信がない。そこで、一連の手短な計算をする。 トラックは、減速しても間に合わない速度で走っているのか。もしかしたら減速すれば間に合うのか。トラックの運動量は減速したとしても少女に激突するほど大きいのか。彼女は結局、トラックは少女に追突するという結論に達する。(目の前で)彼女の考えた通りになる。 森田真生さんの『計算する生命』に引用された

    • 今月、買った本(2021年10月)

      ● デジタル遊牧民/牧本次生、 デビッド・マナーズ(工業調査会)  Digital Exodusをテーマとした武邑塾の第一回「Digital Nomad」の中で、当時バイブルとなっていた1冊という話が気になり入手。 ● 幻覚剤は役に立つのか/マイケル・ポーラン(亜紀書房) ● 真面目にマリファナの話をしよう/佐久間裕美子(文藝春秋) ● ドラッグの誕生/渡邊拓也(慶應義塾大学出版会)  今、欧米で起こっている「幻覚剤ルネサンス」について調べるために購入。政治と結びついて規制

      • 今月、買った本(2021年9月)

        ● 企業家としての国家/マリアナ・マッツカート(薬事日報社)  武邑塾で武邑光裕先生がマリアナ・マッツカートをおすすめされていたのを聴き購入。日本語訳はこの1冊のみとのことだったけれど、12月に新しい訳書の出版が予定されているみたいで楽しみ。 ● モビリティーズ 移動の社会/ジョン・アーリ (作品社) ● モバイル・ライブズ/アンソニー・エリオット、ジョン・アーリ(ミネルヴァ書房) ● モビリティーズのまなざし ジョン・アーリの思想と実践/小川(西秋)葉子(編)(丸善出版)

        • お葬式という「悲しさ」の受容儀礼

          よく、日本人は宗教感覚が薄いといわれる。 たしかに、特定の信仰をもってその行動規則や道徳観にそった生活を送る人は多くはないだろうし、宗教にのっとって生活を送る人がいるという実感もピンときにくい環境にあると思う。 けれども、生活習慣の中にまったく宗教的な行事が根づいていないかといえば、そうともいい切れない。元旦には神社へ詣で、キリスト教式の挙式では神の前で「契約」をし、親族が亡くなるとお葬式をおこなう。クリスマスを妙に意識し、ハロウィーンには仮装行列で街がひしめきあう。 た

        生活を手もとに戻すためのケア

          マスクはなにを隠蔽するのか?

          ● 史上、最も唇から遠い時代 ●2020年、はじめての緊急事態宣言の発令をきっかけに、ファッション・ブランド nisai は 1st kiss collection と題し、「史上最も唇から遠い時代」をテーマに展示会を開催した。リモートで100人のキスマークを集め、それらをもとに服作りをおこなう。服にあしらわれた唇模様には金箔がほどこされ、時間とともにはがれ落ちる金箔に隠蔽(マスク)されたクチビルの姿は、マスク習慣により何が変わろうとしているのかを暗示させる。 デザイナー

          マスクはなにを隠蔽するのか?