ゲゲキタの映画(ゲゲ謎)を見てきた記 ネタバレ

好きでね、水木しげる先生。鬼太郎は子供の頃から慣れ親しんでおり、小学校低学年の時に鬼太郎妖怪図鑑??で鬼太郎の出生シーンを読んで目玉の親父が怖すぎてギャン泣きしてね。あれ本当に怖かった。お母さんはともかくお父さんの目玉が死体から出てくるところが凄い怖かった。
その後も悪魔くん、河童の三平、総員玉砕せよ!などを履修しつつ、そしたら100周年?ですって奥さま。
楽しみで公開前から前売り買って待機してたんです。
そしたらね、公開初日に食中毒になった。ネットに上がっていく大評判を横目に私は便器に向かって嘔吐祭りしてたんですよ。そんな悲しい大人が劇場特典も尽きた頃ようやく見られた、その感想です。

〇感想〇

前評判どおりの抜群の昭和度。誰でもどこでもスパスパタバコ吸ってるのもそうだけど、序盤の会社のシーンでデスクに何もねぇー!!決裁箱(木製)しかねぇー!!のは本当に昭和感満載でしたね。もしかして現代っ子は知らないのではなかろうか、決裁箱というものの存在を……
電車を乗り継いで山道をタクシーで走り、トンネルを抜けるとそこは…因習村……思ったより人口が多いぞ!というのと季節夏なんだ!というのにびっくり。みんな平気で長袖着てるから…昔はクールビズもなんもないからビジネスマンは夏でも背広だったんだね。道中の木立の奥、森の影、暗闇の描きかたが水木先生っぽさを感じました。単に暗いというのではなく、何が潜んでるのかわからん密林の、命の闇が隠れている感じ…

そして沙代ちゃん時ちゃん可愛すぎた。フラグをどんどん立ててくので「死ぬんやろな…」という気持ちが沸き上がる。糸目の石田彰は糸目の石田彰すぎた。期待を裏切らないキャスティングでしたね…
一番衝撃だったのは乙米ねえさんがさ、読みかた「おとめ」なんですよ。予習段階で私は完全に「おこめ」だと思っていた…ずっとおこめ姉さん可愛いな、と思っていた…
楽しい因習村の因習ファミリーは、白塗りの引きこもりの長男時麿、犬神家の長女ポジ乙米姉さん、だらしない女枠の丙江さん、2匹目の引きこもりの次男孝三、気の弱い女と見せかけた狂犬庚子おばさん、ヒロイン枠沙代ちゃん、体が弱い無垢の象徴時ちゃん。そう男が……男がなにかと弱いのだこの家は……
そしてこの因習ファミリーは本当にクソなんですが、じゃあこの作品の因習村度が高いか?というと、因習村の嫌さは人間の嫌さ、単なる人間がたかが金や権力やしがらみのためにそんなメチャクチャする?っていうことをしてしまう愚かさ卑劣さ惨めさにあるので、本作のようにダイレクトに超常現象が絡んでる場合純粋な意味での因習村成分は薄れるんじゃないかと思うんですよね。超常現象は簡単に人間をおかしくしてしまうので…それは人間本来のナチュラルな醜さとはまたちょっとちがう要因になる……

三姉妹についてはおこめ姉さん(誤)と長田の仲が気になりました。というか長田、自分の妻とはろくに会話してないのにいざという時に奥様を守る、奥様を庇うなど奥様への忠誠心が高く、この人の本当の心は奥様にあるんだろうな…と…
正味な話、沙代ちゃんの父親が本当に克典かどうか(クソ爺ワンチャンあるのでは)ということも気になるんですが、それより時ちゃんの父親が長田の方があやしいな…??だって長田ほとんど妻子に関心ないもんな???
おこめ姉さんとの間に肉体関係は無いとは思うんですが(根拠はない)、長田→おこめ姉さんはあると思った。
丙江さん、いいところのない役ですが私は好きですね…昔のすごくキュートな感じ、駆け落ちに失敗したという過去……おそらく丙江さんはかつての沙代ちゃんであり、沙代が水木といい感じになった時に脅したのも、そりゃ金品目当てもあったかもしらんけど、嫉妬もあったんじゃないかな。お前一人だけ救われると思うなよ。逃げられると思うなよ、と。かつて自分は運命から逃れようとして失敗したわけだから…
そういう過去を考えると丙江さんが今はあんなだらしない感じになってるのも人間の悲しさ、という感じがしてやるせない。憎めない。だからおこめ姉さんも丙江が死んだ時にはあんなに慟哭していたのではなかろうか。庚子と違って自分の地位を脅かさない(庚子は男児を産んでいるので)し、逃げようとして失敗したことに対するあわれみもあったのでは……ばかで可哀想な子、と……庚子は正味なところ陰気で気の強い女、という感じだったのだが、おこめ姉さんにたてついた時は「時ちゃんの母」としての愛を感じたのだが、その、お前……知っとったんか?時ちゃんがどうなるか、知っていたのか?って思うと、最後に時ちゃんを迎えに来たのが母親である庚子ではなく沙代姉ちゃんだったのと……辻褄が……

時ちゃんは本当に可哀想だった。あんな鬱屈ファミリーに生まれたのに、なんといういいこ…時ちゃん、と呼ぶ時に父も水木も声が本当に優しくて、なんていうか、人類が普遍的に持ってる子供に対する大人の愛みたいなものを感じた……
そして沙代ちゃんも……可哀想…
正直沙代ちゃんが狂骨無双した時、いいぞ!!やれ!!お前にはその権利がある!!殺せ!!全てをメチャクチャにしろ!!お前を虐げた、見殺しにした全てを!!やっちまえ!!お前のロックを見せてやれ!!って思ったのは私だけではあるまいよ。ある意味親父や水木が大立ち回りしてる時よりもカタルシスはあった…うらみのちからを見せてやれ!!みんなのうらみのちからオラにくれ!!そして同時に思ったのである、「元気玉使うタイプの間桐桜、新しいな…」と(突然飛び出すHF)
そうなんだよね。正義マンがみんなの力をオラにくれ!できるなら恨みの力をオラにくれ!もできてしかるべきなんだよ。無関係の私も差し上げたいと思った。怒りの力を沙代ちゃんに。
沙代ちゃんのエピソードはとことん胸糞で悲しかったけど、要所要所で水木は沙代ちゃんのことを女というより子供、守るべき対象と考えてるように思えました。いや、利用はしてるけど。それでも沙代ちゃんの、既に狂骨に取り憑かれ3人も殺してるお嬢ちゃんの手をとって、東京に行こう、君は東京に行くべきだ、って言えるの、すごくない?野心のために少女の恋心を利用するのも水木なら、人を殺してもなお沙代ちゃんを守られるべき存在だと思えるのも水木なのよ…沙代ちゃんが求めてるのは運命の人だったから、やっぱりそれは食い違っているんだけれど、水木に襲いかかるところだけは人間に戻って自分の手で、ってやっているところに、私は沙代ちゃんの水木に対する恋情を感じました…水木にとって沙代ちゃんは運命の人ではなかったけれど、沙代ちゃんにとって水木は運命の人だったんだと思うよ…恋に恋してただけだとしても……

クソおじいに関しては単純にヘイトしかないのですが、最近の若者は~というのを聞いて「うるせぇ!!!オッコトヌシ様を見習え!!!先陣切って敵に突撃して〇ね!!」と何故か無関係のオッコトヌシ様の株が上がりました。自分の一族が弱くなった、それを嘆きながらも、始末の付け方が全然ちがう…やはりそこはオッコトヌシ様、モロの元彼なだけはありますね……
このクソおじいに対する感情もそうなのだけれど、色んなところで水木の戦争を生き残った者としての過去、大義を口にするものに対する怒りだとか、生き残ってしまったものとして背負ってるものだとか、色んなシーンで来歴が効いてきてて、いい味出ててえがっだ……
戦闘シーンもかっこよかったですね。ぼくらの知ってる幽霊族最後の夫婦と映画版の二人のビジュアルのちがいもちゃんと最後に説明がついてて、エンドロールでは、あの私の幼少期のトラウマが……い、いい話だ!!いい話になってる!!えっこれいい話だったんだ!?という感動がありました。
私この話知ってる……けど、こんな話だって知らなかった……みたいな。
とにかく二時間の中に因習村、妖怪話、戦争のエピソード、愛じゃよ、色んなものがギュっと詰まってきちんとまとまったいい映画でした。見られてよかったし、また見たい!!




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