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福島の甲状腺検査継続の正当性を問う

原発事故後の福島で実施されている甲状腺検査について、がん疫学の専門家である津金昌一郎先生に伺いました。

https://synodos.jp/fukushima-report/28592/

今回の記事でお伝えしたいことはいくつかあります。

まず、福島の甲状腺検査は疫学研究である、ということ。
疫学研究と「見守り」(心理的サポート)とを同じ手法で同じ集団に対して行うというのは無茶だ、ということの理由は、以前稲葉俊哉先生に伺いました。

元々は、県民の不安に応えるためとして始まったはずの甲状腺検査でした。
その検査に、後から疫学研究としての側面(放射線被ばくと甲状腺がんリスクとの因果関係を調べる)が付け加えられました。

けれども、疫学調査としても、福島の甲状腺検査は既に破綻している、つまり、甲状腺検査をどれだけ続けても、放射線被ばくと甲状腺がんリスクとの因果関係はわかりません。

それから、疫学特有の性質や考え方について、できるだけ詳しく、わかりやすくお伝えできればと思って書きました。

そうしようと思った理由は、「手品」を使う人がいるから、です。

疫学は、特有の性質や考え方を持っているために、一般の私たちにはよくわからない部分がどうしてもあります。
そのために、いわば疫学を濫用し、自身の政治的主張をする研究者(活動家)がいます。
そのため、原発事故後の福島の放射線影響についての記事や論文の中には、一見辻褄があっているかのように見えるけれども、科学的には誤りや「偏りの生じやすい」手法による研究を基に書かれたものがたくさんあります。

これを、「手品」と指摘なさった疫学の専門家がいらっしゃいました。

勿論「手品」は、科学者の間では退けられます。
でも一度世に出てしまえば、その「手品」は誤解を生み、多くの被害をもたらします。

「手品」の正体をきちんと知っておくことは、原発事故後の福島の科学的な状況を正しく把握するために、役に立つと思っています。

そして最後に、甲状腺検査が「見守り」ではなく医学研究になり、国際的な勧告や知見を完全に無視するかたちで継続されているために、福島の子供や若者たちが被っている害について、触れました。

公衆衛生は、健康な人に健康でいてもらうためにある、という津金先生の言葉をかみしめています。

もうひとつだけ。

WHOの国際がん研究機関(IARC)が、2018年に勧告を出しています。
津金先生が、最後に「今後の福島の甲状腺検査のあるべきかたち」として提示なさった具体的な内容は、その勧告に則したものです。
もちろん、そもそもスクリーニング検査はしないことは前提として、https://synodos.jp/fukushima-report/22298/


「あなたは甲状腺検査の対象者ですよ」という通知をしないこと。
それが、甲状腺検査受診者の積極的な募集をしないこと、の具体的な意味でもあります。

そうあってこそ、かえって、今も本当に不安に思う方の丁寧な心のサポートが可能になる、と私も考えています。


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