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茅の輪(ちのわ)くぐり

 お世話になっている方が怪我をしたので、天神さまに快癒をお願いに何度かお参りした。お陰さまで怪我は快方に向かっているが、ちょうど神社には茅の輪が設けられていた。
 そういえば昨年も茅の輪が設けられていたなぁ、と思いだした。ただの飾りではなくて、本殿にお参りする前に作法にしたがって、三回茅の輪をくぐることになっている。
 この茅の輪くぐりの行事は、もともと宮中や神社において、身の不浄を祓い災いを防ぐために旧暦の6月に行われていた「なごし」という行事に関連があるそうだ。ちょうど、大晦日に大祓を行うのと同様に6月にも行われていたのだという。
 このお祓いの行事の一環として、神社においては、鳥居の下で竹に茅(かや)を巻きつけて作った茅の輪をくぐって罪・穢れを払う習俗が近畿地方を中心として一般に行われているらしい。
 したがい、どうやら東京ではあまり一般的ではないらしい。だが、同じ天神さまである亀戸天神社や湯島天満宮でも、茅の輪くぐりが行われるらしいので、さすがに京都にルーツをもつ神さまだと思うしだいである。

 この茅の輪だが、八岐の大蛇退治の神話で知られる素戔嗚命(すさのおのみこと)に関連づける伝承もあり、蛇を形どったものだとも言われる。したがい、6月にいろいろな処で行われる水神の祭りとも関係があると考える民俗学者もいる。
 旧暦の6月というのは田植えが終わった頃であり、物忌が期待される月である一方、時があらたまる一つの大きな区切りとも考えられるそうだ。正月を迎える前に、大晦日に大祓を行うのと同じように、7月に対しては水無月祓えや六月祓えというものが行われるというのである。
 私などは、そういう話を読むと「二倍年歴説」つまり、かつては1年を7
月と12月とで2つに区切って数えた名残りなのではないか、と考えてしまうのだが、話はそう簡単ではないようである。
 というのも、各地では6月1日を「氷の朔日」(こおりのついたち)などと呼んで、一年の折り目とする習俗もあるからである。ちなみに、昔の宮中において旧暦6月1日に氷室の節会という行事が行われたことから、この呼び方があるらしい。

蛇と水神の関係については拙文「水の神、水の精霊」でふれています。

また、下記で「二倍年歴説」についてふれています。


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