2020年5月29日 / 報われないことに一生を賭ける

以下の記事に感動した:

「ほとんどのがんの基礎研究者は、新薬を一生で一つも作れない」と記事にあるが、実際にそうなのだろう。漫画「フラジャイル」の67話にも、「新薬は一生にひとつ作れば天才と言われる世界」とあった。

それでも、研究者は、新薬を一生で一つも作れないだろうと分かっていても、こつこつと研究を続けていく。それを聞くと、私は震えるほどに感動するし、本当に頭が下がるような思いがする。私自身もそうありたい。

しかし、頭を冷やしてみれば、研究者でなくても、一生を費やしたいというものを持っている人は多いだろう。そうして、前にも書いたが、芥川の言葉を思い出すのである:

人間は、時として、充されるか充されないか、わからない欲望のために、一生を捧げてしまう。その愚を哂(わら)う者は、畢竟、人生に対する路傍の人に過ぎない。
          芥川龍之介「芋粥」

人生は、人それぞれだ。他人の人生は分からない。そもそも自分の人生すらよく分かっていないのである。結局、人は生きているだけで尊いということになるのかもしれない。


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