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浜口雄幸

 金融緩和の解除を要求する市場や世論を見るにつけ、

100年前の日本の失敗

を思い出さずにはいられません。

当時の日本は今以上にグローバリズムや自己責任論が強い世の中でした。
そして、金本位制という当時の金融業界では当たり前のグローバルスタンダードへの復帰が先進国で流行する時代でもありました。

当時の日本は国内景気がまだ回復途上にあったにもかかわらず、金本位制に復帰したのです。
当時の世論は、「弱い企業は淘汰され市場から退場するよう促すべきだ。」というものでした。
現代でいえば、ゾンビ企業淘汰論です。

のちに、浜口雄幸自身が失政だったと深く反省するぐらい、日本経済を痛めつけ、国民を苦しませることになったのです。

翻って、現在。

ゾンビ企業を淘汰せよ!
マイナス金利(金本位制ではない状態)は邪道だから正常(金利上昇)に戻せ!

という感じで、まだまだ回復できていない日本経済に対し、随分と無茶な要求が押し付けられているなあ・・・と思ってみています。

現代日本において、金融緩和が上手くいかないのは当たり前のお話でして、
お金をジャブジャブ市場に回し、そのお金を増税(社会保険含む)で回収しているだけだからです。
また、海外流出も半端じゃないですね。
日銀が頑張って金融緩和しても、政府がお金を国内で循環させる政策を出さないまま増税で回収を図っているわけですから、何年たっても日本経済が抜本的に立ち直らないのは当たり前なのです。

喩えるなら、
大量出血して瀕死の状態にある患者に対し、輸血(大増税)をバンバン行ないつつ、新たな傷口(海外に資本提供)を増産しているようなものです。
本筋は、止血と新たなけが防止のはずです。
それをせずに輸血し続けても、患者は自力で動き出すことが出来ません。
単純なメカニズムなのに、かれこれ30年ぐらいはこんな感じです。

さて。いずれにせよ、企業物価指数も消費者物価指数も頭打ちし、物価は安定傾向に入っています。
2024年は2%インフレを維持するでしょうが、2025年以降は2%を維持するのは困難という見方が増加し始めています。
※)これを回避すべく春の産・官・連合が徒党を組んでの賃上げを図っているわけです。

まあ、急激な金利上昇でさえなければ、日本経済が棄損するほどのことはないでしょう。
ゾンビ企業にしても、わずかな金利上昇程度では、すぐにどうこうすることは無いです。
※)というか固定金利で借りてるところ結構多いですよ。

むしろ懸念材料は、設備投資意欲の減退です。
リース契約や銀行融資による設備投資というのが一般的です。
(大企業の場合、政府補助金をふんだんに使っていますが・・・)
この金利が大きくなると、10台購入していた機械を9台に減らすとか、5年で買い替えていたのを7年に延ばすといった形で、設備投資意欲が減退します。

ただでさえ、国内需要が弱く、設備投資意欲が減退しているところに金利上昇圧力が加わるわけですから、より一層、需要減となるでしょう。
そうなると、受注量が減った国内企業が価格競争に突入することになります。敗れたところは倒産もありえるでしょう。

その結果、

実質賃金は減少し、国の社会保障負担は増加し、社会保険料の掛け率はUPし、国民の可処分所得は減少し、個人消費が目減りする。

という流れになります。

何のことは無いです。

金利の上昇はデフレ圧力を強める

というごく普通のありきたりの理屈です。

苦笑いしてしまいませんか?

長年デフレに悩みインフレ目標を立て金融緩和を行なってきたのに
少しばかりインフレになったぐらいで大騒ぎし
インフレ対策のために金融引き締めを求めるという構図

おかしなお話です。

賃金水準が先進国の中で最下位になったから復活させたい。
そのために円高に持って行きたい。
だから、金融引き締めで為替を操作すればよい。

いやいや。それじゃあ、為替操作国ですがな。。。

経済が強くなれば自然と自国通貨は強くなる。

経済の原則です。
円安になるのは、日本経済が弱いからです。
回復基調? にあるらしい日本経済に金利上昇という冷や水を浴びせ、一時的な円高を得たところでどうなのでしょうね?

個人的には、

  1.  日銀のマイナス金利終了&FRB金利引き下げによる円高

  2.  為替差益が出ても値下げは無く、厳しい状態に

  3.  ゾンビ企業の倒産による失業者の増加で賃金は頭打ちに

  4.  失業給付や補助金助成金負担が増え、さらに増税基調に

  5.  可処分所得が減ることで個人消費がさらに低迷

  6.  需要の少なさと金利上昇のWパンチで企業の設備投資減

  7.  日本が本格的な不況に突入する

  8.  株安・円安・債券安・人口減に陥り日本経済は再起不能に

というのが、ここ5年ぐらいのスパンで発生するのかな? と。

今の日本に必要なのは、

  •  金融緩和の維持

  •  大規模な財政出動を実施し、国土強靭化と防衛力強化、
     海洋資源、宇宙開発に重点投資を行なう

  •  財政出動の受注企業に対し国内調達比率規定を課す

  •  手形制度の廃止、銀行振込の徹底、手数料元負担の法制化

  •  消費減税による個人消費の刺激

  •  生前贈与特例法案を制定し貯蓄移動を促す

  •  赤字企業統廃合法案によりゾンビ企業を破産させずに
     吸収合併を促進

だと思います。
まあ、20年ぐらい前にも同じような提言をし、郵政民営化や派遣法に反対しました。その当時も世論とは逆のお話をしてましたねえ・・・

郵政を民営化したところで官僚腐敗は払しょくできないこと、ユニバーサルサービスが低下し地域衰退を促進してしまうこと
派遣法の場合、消費税と相まって非正規雇用が増え、少子高齢化に拍車をかけること

を予測し、反対しました。

もう少し前は、小選挙区制度に反対していました。
特定の団体による議員輩出能力が高まる事や、獲得票が少ない議員の登場による政治家としての質が下落すること、小選挙区にしたところで政治とカネ問題は解消しないこと、日本の野党に二大政党制に耐えうる政党が存在しないこと、小さな意見を反映しづらくなること等々ですね。

もう何十年も前から、これはマズイですよ、と反対意見を提示するも、世論は全力でそちらに邁進し、十年二十年後になってから、あれは失敗だったというお話になる。
(最近ようやく小選挙区や郵政民営化、派遣法が失敗だったという論調が強まってきていますけどね・・・遅いんですよもう。。。)

複雑な思考なんて要らないと思うんです。
シンプルに、単純に、それほど博識ではなくても、

人間って、こういう場合、どう動くんだろう?

と想像し、未来予想図を構築する。
知識不足の部分や考察不足の部分は、予測が外れると思います。
それでもまあ、大まかな流れについては、大体的中しています。

さて。
冒頭の浜口雄幸の緊縮財政による失政の後に再登場した高橋是清によるリフレ政策(積極財政)で、日本経済は息を吹き返しました。

歴史に学ぶ

という観点から見て、あらためて複雑な気持ちになっています。

いやいや、日本経済は底堅く回復していて金利上昇にも耐えられる、となるのか?

もしくは、

金利上昇というポーズを取らないと円安に歯止めがかからないとして、お茶を濁しつつ景気低迷状態をさらに延長していくのか?

それとも、輝かしいぐらいに日本が再成長していくのか?

答え合わせは、5年後? 10年後ぐらいかなあ???
その時まで、noteを続けている自信は無いのですけれども・・・

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