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二つとも微妙

 24年ぐらい前でしょうか・・・
製造業でもネットで受注する時代としてホームページ制作が流行り出したのは・・・
私も、本を片手にHTMLで自社サイトを立ち上げたのが2001年9月10日のことです。
※)翌日が9.11テロだったので、簡単に開設日を思い出せるという・・・

当時、購買界でカリスマ的存在となり、著書やコメンテーターとして製造業界では一世を風靡したのが坂口孝則氏です。

色々な提言をしてくれるのは良いのですが・・・
時々、首を傾げたくなることも・・・

今回の提言もどうでしょうか?

1) 企業が運送トラックを待たせた時間を公表する
2) 価格交渉時の決算書提示のルール化

上記記事より

2024年問題は、基本的に個人宅への再配達が要因として大きいわけです。
だから残業時間を規制されると再配達が滞ってしまうから問題になるわけです。

実際問題として、
アマゾンの個人配送から撤退した佐川急便は利益を増加させ、
個人配送にこだわったヤマト運輸が利益を減少させた。
この事実からも再配達こそ業績を落す根源と理解できます。

さて。企業間配送の場合、基本的には待ち時間に応じて追加費用負担が求められます。

例えば、上記サイトではウチが契約している 大阪府の赤帽料金が記載されています。

料金表を見てもらえば一目瞭然ですが、待機時間を30分超過するごとに税込みで1,100円の追加費用を請求されます。

積載で手間暇をかけさせると、作業費用も追加請求されます。

つまり、多くの企業では、運送トラックを待たせたりしないのです。
待たせるのは、就業時間外に運送トラックが来た場合です。
この場合、企業サイドも時間外手当を支払って荷下ろししないといけなくなるので、原則として就業時間外に配送してくるのを禁止しています。
それでも長距離を走ってきた運転手さんとかが会社の近辺で仮眠を取りながら就業開始まで待つのを妨げることは無いですが・・・

もし、運送トラックを待たせる会社を公表すれば・・・
それは、

ジャストインタイムを厳格に行なっている会社を炙り出す

だけのことになります。
トヨタ系列の会社が大半を占めることになるんじゃないでしょうか?
運送トラックが大挙押しかけて待っているのは、時間指定が厳格で遅れるとペナルティを課せられるからです。
畢竟、はるか前の時間に到着するようにしますので、現地で待つことになるのが常態化するわけです。

坂口理論でいくのならば、
法人間輸送で2024年問題を解消するには、ジャストインタイムを撲滅する
しかないわけです。
政府に強力な圧力を有する経団連の利益確保手段を奪えますか?
かなり難しいでしょうし、再配達の規模に比べれば軽微な改善にとどまるのではないでしょうか?

それに、公表についても抑止力は無きに等しいです。
つい最近も価格交渉に対して非協力的な企業や下請法違反企業が公表されていましたが・・・
まったくもって改まることは無かったです。

現実に効果が出ていないので、そんなことを提言したって意味がないだろうに・・・としか思えません。

次に、決算書の提示義務ですが・・・
これも無意味ですし、問題が多いです。

坂口氏は人件費の上昇についての証拠になると言っておられますが・・・

上場している企業が公開している決算資料は、

  • 貸借対照表

  • 損益計算書

  • 株主資本等変動計算書

  • 個別注記表

だけです。

坂口氏は、非上場企業に対し、上場企業以上の情報開示義務を課すつもりなのでしょうか?
そうでないとして、損益や貸借を出せ、というお話であれば・・・
大雑把すぎて根拠薄弱と言われるのがオチです。
損益では、総人件費の総額変動は把握できますが、社員の給料が上がったかどうかまでは判断できません。
なぜなら、期の途中に人員が増えたり減ったりしているからです。

年間の平均給与500万円で 社員数が100人いるのなら、人件費は5億円です。
ここで、人件費が5%UPしたからという理由を提示したいと思うと、総人件費は5億2500万円になっていないといけません。
仮に、定年退職で2~3名辞めていたら、どうなるでしょうか?
5億1000万円から5億1500万円にしかならないでしょう。
上昇幅2~3%とみなされ5%の根拠なしとされればどうするんでしょうか?

また、良くあるのが、黒字が計上されている場合です。
これだけ黒字が計上されているのだから、値上げなんていらないよね? とされるのがオチです。

ここ最近のガソリン高騰により、運送企業で赤字を計上する企業は20%台にまで引き上がっています。
が、ガソリン高騰前までは、15%以下でした。

意外に思われるかもしれませんが、運送会社で赤字って少ないのです。
むしろ、儲かっている企業の方が多いのです。

少し古い記事ですが、帝国データバンクの調査結果が下記です。

儲かっていると言ってますよね。。。

実際、私の友人経営者には、運送会社社長が何人もいますが、みんな羽振りが良いです。(SNSで高級料理を食べ歩くのをUPしている運送会社社長の多いこと多いこと・・・)
つまり、決算書で見る限りでは、別に値上げなんてしなくてもいいんじゃない? という状況なのです。

問題なのは、再配達が多すぎて、残業させられまくりの運転手がきついということなのです。
反面、個人事業主レベルの残業枠を気にしないで良いところの場合は、一個を配送する時の単価が問題になるわけです。
黒字化するために一つでも多く配送しようとします。
ただ、インボイスの影響もあり、今後、彼らのような個人事業主レベルの運送業者は減ると予想されます。
そうなると、時間&人数の減少により、運搬業務が滞るというお話になります。

だから、置き配に力を入れるとか宅配ポストを拡充するという方策の方が、ずっと有効になるわけです。

しがないオッサンにサポートが頂けるとは、思ってはおりませんが、万が一、サポートして頂くようなことがあれば、研究用書籍の購入費に充当させて頂きます。