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【SWOT分析】は難しい・・・

 昔、中小企業家同友会という会に所属しておりまして・・・
経営理念(Aコース)・経営方針(Bコース)・経営計画(Cコース)とあり、それぞれに一泊二日で泊まり込みで合宿セミナーがあり、それを受講したことがあります。
(その後、サブリーダーとして講師の補佐役としての参加も経験しましたので、何回合宿に参加したのか、正確には覚えていません。)

【SWOT分析】は、経営方針を考える2番目のセミナーの際に、取り組んだ課題です。
当時を振り返ると、初学者は表形式にまとめるところまでで、完結してしまうことが多いです。
理由は簡単で、【機会】や【脅威】、【強み】や【弱み】が、同じ軸線上に揃っていないからです。

例えば、数年後の予測として、

「これから先、エネルギー危機になるだろう」

というステートメントを書き出したとします。

  • 新たにエネルギーを供給する企業にとっては【機会】になります。

  • エネルギーを大量消費している企業にとっては【脅威】になります。

ここまでは、当たり前ですよね。

でも、そこまで大きなエネルギー消費をしていない企業の場合、差し迫った【脅威】にもなりませんし、【機会】にもなりません。
でも、セミナーとかを受講していると、普通にこういうマクロな外部環境のステートメントが出揃っていきます。
(数年先だったり、対象範囲を広げていく中で、発生してきますので、当然と言えば当然なのかもしれませんが・・・)

こういう事例は、
自社や顧客にどれだけのインパクトを与えるのか? 」
という視点が欠落した場合に、良く起きます。

反対に、『風が吹けば桶屋が儲かる』ぐらいに、自社や顧客に結びつけられるのであれば、これはこれで、アリにもなります。
(セミナー講師は、この辺を期待していることが多いです。理由は発想の枠を広げるためです。)

とかく今の世では 有ふれた事ではゆかぬ。
今日の大風で土ほこりが立ちて人の目の中へ入れば、世間にめくらが大ぶん出来る。
そこで三味線がよふうれる。
そうすると猫の皮がたんといるによって世界中の猫が大分へる。
そふなれば鼠があばれ出すによって、おのづから箱の類をかぢりおる。
爰(ここ)で箱屋をしたらば大分よかりそふなものじゃと思案は仕だしても、是(これ)も元手がなふては埒(らち)明(あか)ず

— 無跡散人『世間学者気質』より、慣用句辞典 より転記。[5]

古文調なので、現代語風に書くと、

風が吹くと、砂ぼこりで視力の落ちる人が増える。
(当時、視力の弱い人の職業が、三味線の弾き語りだったから)
三味線が良く売れるようになる。
(当時、三味線には猫の皮を剥いではりつけていたから)
猫の数が減る。
猫が減れば、ネズミが増える。
ネズミが増えれば、木箱のようなものをかじるようになる。
そうなると、桶もかじられるので、桶屋が儲かる。

現代語風

となります。
さすがに、我田引水すぎへんか、と思ってしまいますが・・・

こういった我田引水になるのを避けるために、卑近な事例を【機会】や【脅威】に設定してしまうと、今度は、短期的なお話になってしまい、

もはや、【To Do List】じゃね?

となってしまいます。

ここら辺の弊害を抑えるには、
【PEST分析】【3C分析】の段階で出たステートメントをきちんと、
『顧客や自社に関わることで、数年以内に発生しそうなこと』
にまで、ストーリー展開できるように修正しておくことになります。

【PEST分析】とは、

P:Politics(政治的)
E:Economy(経済的)
S:Society(社会的)
T:Technology(技術的)

PEST分析

こういった感じで、範囲が途方もなく広いのです。
数年後の政治情勢は? 
経済的な状況は? 
社会はどのように変わっている? 
技術革新はどこまで進んだ? 
という感じで、マクロ(巨視的)過ぎるんですよね。
ここから、自社の事業分野に話を持ってこようとすると大変なわけです。

一方、【3C分析】とは、

Customer(市場・顧客)
Company(自社)
Competitor(競合)

3C分析

数年後のお客さんは、何を望んでいるか?
数年後の自社は、どのようになっているか?
数年後のライバル会社は、どのようになっているのか?

こういった感じで、ぐっと卑近な問題になるんです。
で、いきおい『現在の延長線上』で、考えてしまうことになるのです。

そりゃあそうですよね。
数年後、ウチの会社は、GAFAを凌ぐ巨大企業に成長しています、なんていう突飛な話には、なりにくいものです。
反対に、顧客がライバル企業に奪われ、全滅するというシナリオもなかなか描くことが出来ない設定になります。(とはいえ、GAFAよりは現実的だが・・・)
となると、今と同じとか、5%とか10%とか少しだけ変化させた予測を立ててしまう。
こうなってしまうと、スケールが小さすぎて、【To Do List】程度で十分になってしまいます。

結局のところ、
【PEST分析】で対象を大きくすると【ピンボケ】に。
【3C分析】で現実的な予測をしてしまうと【To Do List】に。
なってしまいがちなのです。

ですから、

『風吹けば・・・』という形で手繰り寄せる形
『レンガを積むように・・・』一段一段積み上げていく形

双方向からのアプローチ

私は、双方向からのアプローチで歩み寄る考え方にしています。
私の友人は、願望をセットする手法を使っていました。

  • 【機会】・・・ 自社が飛躍的に伸びるウハウハな外部環境は何?

  • 【脅威】・・・ 自社が潰れてしまうぐらい過酷な外部環境は何?

というものです。
これは、レンガを積み上げる方式でありつつ、大胆な設定により、手繰り寄せるのとは違った我田引水ぶりを発揮し、規模を膨らませる発想法かなと思いました。

色々な手法があるので、どれが優れているというわけではないです。
大切なことは、きちんとしたストーリーが展開できるようになっていることです。
なぜなら、ストーリーが分からない方針には、誰もついて行きたいと思えなくなりますし、上層部からの許可も出ないからです。

他に、【強み】や【弱み】の設定の仕方でも、
現状を分析し、成長・維持・減衰の3方向のシナリオを描く、
というものがあります。

時間軸で今後数年間を予測し、

自社が成長していく分野を【強み】
自社が衰退していく分野を【弱み】

【強み】と【弱み】

と、捉える方法もあります。

大切なことは、

【機会】に対し、【強み】を活かして、

ビジネスを拡大していくことになります。
二番目が、

【強み】を活かして、【脅威】を克服していく

ことになります。

それ以外の【クロスSWOT分析】は、優先度を下げても良いと思います。

シンプルに考えるのであれば、
【強み】を見出し、強化し、幅広く展開していく
これだけで十分なのではないかと思います。(特に小規模企業の場合は)

じゃあ、【SWOT分析】は不要なの? となるのかというと、そうではないと思います。
【弱み】をどのように克服するのか? もしくは、目立たなくするか?
【機会】や【脅威】に対し、どういった【強み】を構築すれば、戦っていけるようになるのか?
複合的な視点から見るのに、役立つと思われるからです。
ただ。
小規模企業だと、多分、そこまで手が回りません。
資本や人手が不足してしまい、注力できなくなることの方が多くなります。

全てに手をつけるが、いずれも中途半端にしてしまうのならば、
一つだけでも良いから、徹底して実践する方が良いからです。

会社が置かれた環境を踏まえ、注力できるポイントを絞るのか?
少々手を広げても大丈夫なのか?
この辺は、各企業の状況次第といったところでしょう。

ということで、立派な分析表を作らなくても良いですし、
最初は【To Do List】レベルから始めてみることをお奨めします。

しがないオッサンにサポートが頂けるとは、思ってはおりませんが、万が一、サポートして頂くようなことがあれば、研究用書籍の購入費に充当させて頂きます。