見出し画像

邪馬台国の謎 (18)

 邪馬台国論争は様々な比定地を生み出してきました。
代表的なものは、第六話で一覧にしています。

さて、今回は、邪馬台国沖縄説(台湾説)を考えてみようと思います。
魏志倭人伝の中で、著者の陳寿は邪馬台国の位置を

会稽かいけい東冶とうやの東

と記述しています。(以下の第十二話で取り上げています)

この表現が正しいとすれば、沖縄県から種子島ぐらいまでの緯度の中に納まるということになります。
少なくとも陳寿の頭の中では、そうなっていたのかもしれませんね。
倭国=日本という考え方からすれば、当時の沖縄県は倭国という扱いにはならないので、陳寿が間違っているという意見が大勢を占めるわけです。

その一方で、陳寿の見解を肯定的にとらえ、

いやいや本当に沖縄だったんじゃね?
もしくは、台湾だったとか?

という意見が、邪馬台国沖縄説 や 邪馬台国台湾説として登場してきてもおかしくはないわけですね。
つまり、倭人は日本人の祖先ではないという考え方です。

倭人が日本人の祖先ではない。
魏志倭人伝や従来の論争を見てきた私としては、この考え方は凄く新鮮に映ります。

魏志倭人伝に記載された方向と距離と素直に読めば・・・確かに沖縄や台湾に辿り着いてもおかしくはないからです。
(というか、作者自身がそう書いてます。)

ここで引っかかるとすれば、水行10日 陸行1月という記述です。
単純に読むのであれば、沖縄ないし台湾の北部に到着するのに船で10日。
そのあと、陸路一か月と読めるからです。

沖縄本島の場合、縦断するとすれば100Km。
一日3~4Km進めば一か月かかりますが・・・
さすがにゆっくり過ぎるかもしれませんね。
それなりに険しい山道や沼地等々を歩行するか、もしくは、行く先々で歓待されて前に進めないとかでしょうか?
台湾の場合、300Kmぐらいありますので、一日10Kmの踏破で一か月となり、納得のいく距離感になります。

ただし、これは帯方郡からの総距離が一万二千里という距離の一致に過ぎないお話です。
南とはいっても、沖縄や台湾は、『南西方面』です。
魏志倭人伝には、「東」や「南」という表現はありますが、「西」という表現はありません。
その北岸といった感じで「北」という表現もあります。
つまり、沖縄説も、距離では畿内説になるという説と同様、「西」という方位についての記述がないことを説明しなければいけなくなります。

ただ、畿内説だと松浦半島から見て東方ないし、東北東であるのに対し、沖縄説だと南から南南西であることから、方位としては「南」で押し通せるかもしれません。
台湾説になるともう完全に「南西」になってしまいますが・・・

沖縄説、台湾説については、さらに疑問点がいくつか出てきます。
一つ目は、なぜ朝鮮半島経由で朝貢を行なったのか?
ということです。
海流の関係というのは考えられます。
黒潮の流れは早く、横断して中国大陸に進むよりは、島伝いに九州へ上陸し、朝鮮半島経由の方が安全でしょう。
が、後世の琉球王国はそういうルートでの朝貢はしていないです。

二つ目の疑問点として、九州方面から沖縄にかけて連合国家があったとして、それだけ広範な連合国家を形成する必然性がどこにあるのか?
という点です。
当時の通信技術で、ここまで広範な国々を取りまとめるのは至難の業だったと思いますし、そもそも邪馬台国連合は、相攻伐しあう乱世を取りまとめ、平和な関係を構築するためのものでした。
つまり、九州から沖縄まで1000Km単位の遠距離にある国々、しかも海で隔てられている国同士が、そのような軍事的緊張関係に陥る危険性は低く、連合国家という緊密な関係を構築する必要性はなかったと考えられます。

三つ目に狗奴国の存在です。
沖縄を邪馬台国とするなら、狗奴国は台湾。
台湾を邪馬台国とするなら、狗奴国はフィリピンぐらいになるでしょうか。
琉球にしても台湾にしても、国家と呼べるだけの規模になるのは、12世紀とか13世紀以降と言われています。
それより1000年も昔になる3世紀に国と呼べるほどのものはなかったとされています。
実際、呉の孫権が台湾に軍を派遣して人狩りを行なわせていますが、未開の地すぎて失敗しています。

以上のことからも、邪馬台国沖縄説や邪馬台国台湾ですは、成り立たない部分の方が多く、説としての面白さはあるけれども、多分、違うだろうなあという印象が強い説になります。

もちろん、私の知らない様々な証拠が出てくるかもしれません。
それでも、国家として機能し始めた年代から見て、邪馬台国に比定するには、相当に難しい地域だろうなという考えは変わりそうにないです。

私はこのように考察しましたが、イヤイヤ違うよ、邪馬台国は沖縄だよ、あるいは台湾だよ、とおっしゃられる方は、是非是非、そう考えた理由を教えて頂ければありがたいです。

しがないオッサンにサポートが頂けるとは、思ってはおりませんが、万が一、サポートして頂くようなことがあれば、研究用書籍の購入費に充当させて頂きます。