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レビュー/多様性が一段と増したLOVEBITSの新譜「ELECTRIC PENTAGRAM」

2020年2月9日 Text by Kotaro MASUDA a.k.a. TAROO-METAL

ELECTRIC PENTAGRAM / LOVEBITES
2020年1月発売

LOVEBITESが前作「CLOCKWORK IMMORTALITY」をリリースしたのは2018年12月。それからからわずか1年余りで早くも3rdアルバムが登場だ。

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美しいメロディを軸に据えた疾走感あふれる曲や,スラッシーな曲,ギャロップ・リズムを刻む曲など,これぞLOVEBITESと呼ぶにふさわしいナンバーが並ぶ。さらに本作では楽曲の幅がグッと広がっており,ロック調の曲やシャッフルのリズムを取り入れた曲もある。新境地開拓とまでは行かないまでも,実にバラエティに富んだ内容だ。特筆すべきは1曲1曲のクオリティの高さで,とりわけアルバムの最後を飾る“Swan Song”は,LOVEBITESらしさを極限まで美しく磨き上げた珠玉の名曲だと思う。

バンドの顔であるasamiのヴォーカル・パフォーマンスも素晴らしい。パワフルなハイ・トーンに目が(耳が?)奪われがちだが,本作では過去2作に比べて中音域を生かした歌い方をする場面が増えたと感じる。表現のレンジが広がったことが,このアルバムが彩り鮮やかだと感じる理由の一つだろう。また,けっして今までが「ハイ・トーン一辺倒」だったというわけではないが,高音域主体の曲が多いと聴き手の「体力」も消耗しがち。その点,中音域を生かした曲は聴く方も力まずに聴くことができるので,集中力を保ったまま全12曲を一気に聴くことができる。

曲ごとの感想は以下の通り。

01 Thunder Vengeance
SLAYERっぽい曲調が魅力的なファスト・ナンバー。単に速いだけでなく,ドラムの手数足数が多いのが特徴。ペースが途中でいったんスロー・ダウンして,その後再び突進する展開もSLAYERっぽくてカッコいい。

02 Holy War
壮大なスケールを感じさせる,いかにもLOVEBITESらしい美旋律スピード・メタル。キーボードによるシンフォニックな味付けもよい。ギター・ソロのフレーズがとても細かくてテクニカル。

03 Golden Destination
いわゆるギャロップ・メタル。Iron Maiden風味あふれるリズムが,これまたLOVEBITESらしい。安定したリズムを刻むベースのmihoとドラムのharunaの息の合ったプレイがこの曲の生命線。

04 Raise Some Hell
2019年11月23日にVeats Shibuyaで行われたFC限定ライブで初披露された曲。メタルというよりは,Motorheadのような突撃力のある骨太ロック。荒々しいドライブ感とライブ映えすること間違いなしのサビのコーラスが強く耳に残る。asamiのちょっとダーティーな歌い方も曲によくマッチしていると思う。

05 Today Is The Day
前作「CLOCKWORK IMMORTALITY」収録の“Rise”に似た雰囲気の曲。キャッチーなメロディとツーバス・ドコドコのリズムがそう感じさせる理由かもしれない。どちらかというと中音域を主体に歌うasamiの声が魅力的。

06 When Destinies Align
間違いなくこのアルバムを象徴する素晴らしい曲。ドラマ性と美しいメロディに満ちていて,とてもアグレッシブな疾走感あふれるパワー・メタルだ。miyakoとmidoriによるスリリングなギター・バトルは必聴。MVだとギターを含め楽器隊の凄まじいプレイっぷりがよく分かる。

07 A Frozen Serenade
序盤な物静かな曲調から一転,サビになると感涙もののドラマチックなメロディが洪水のごとく押し寄せる。内に秘めた激情,情熱の激しさを感じさせるが,終盤に出てくるmiyakoによるアコースティック・ギターがこの曲のエモーショナルな側面を際立たせていると思う。そこから曲がスピード感を増して展開していく構成も凝っていて素晴らしい。

08 Dancing With The Devil
曲名を目にした瞬間,Van Halenの“Runnin' With The Devil”を思い出してしまった(本来まったく関係ないのだが)。それはさておき,この曲はLOVEBITESにしては珍しいミッド・テンポのハード・ロックだ。ブルージーなasamiの歌い方がロックっぽさに拍車をかけている。それでいてメロディーはキャッチーでサウンドも重量感に満ちている。

09 Signs Of Deliverance
LOVEBITES印のスピード・ナンバー。美しく流れるサビのメロディ・ラインが古き良きジャーマン・メタルっぽくて良い(つまり初期のHELLOWEENのよう)。 中音域を駆使して歌うasamiのパフォーマンスが光る1曲だ。

10 Set The World On Fire
これまたSLAYERのような邪悪さを感じさせるオープニングが印象的。ギターリフやリズムの刻み方,曲の構成までもが1曲目の“Thunder Venjeance以上にSLAYERっぽい。LOVEBITESの曲としては今までで一番スラッシュ色が濃いと思う。

11 The Unbroken
このアルバムで最も異彩を放つ曲。シャッフルのリズムが意表を突くが,テンポよく軽快にズンズン前進するので心地よい。明るく開放的な色彩に満ちたサビも今までの彼女たちの曲にはないテイストで,実に新鮮。

12 Swan Song
アンドレ・マトス在籍時のANGRAの曲だと言っても通じるのではないかと思った。それほどシンフォニックかつクラシカル。そして何より儚く美しいメロディが絶品。背後で幻想的に紡がれるピアノの旋律とのコントラストも素晴らしい。

【収録曲】
01 Thunder Vengeance
02 Holy War
03 Golden Destination
04 Raise Some Hell
05 Today Is The Day
06 When Destinies Align
07 A Frozen Serenade
08 Dancing With The Devil
09 Signs Of Deliverance
10 Set The World On Fire
11 The Unbroken
12 Swan Song

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※アメブロからの転載です。

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