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ライブ参戦レポ/新たな試みが続出したLOVEBITESの東京ガーデンシアター公演

日本のヘヴィ・メタル・バンドLOVEBITESが2824年9月1日,今年最初にして最後となる日本国内での単独ライブを敢行した。会場は有明にある東京ガーデンシアター 。以下はそのライブ参戦レポである。

○総論

この日のライブにおける最大のポイントは,LOVEBITESとしての新たな試みがいろいろと導入されていたことだろう。結果として,LOVEBITESとファンが一緒になって極上のエンタメ空間を作り上げることができたと思う。。

様々な仕掛けはライブに双方向性をもたらした。今までのライブでは演者と観客の間に多少のやり取りはあったものの,基本的にはアーティストが一方的に楽曲を演奏する(あるいは語りかける)というスタイルだった(これはLOVEBITESにかぎったことではないが)。

しかし今回のライブでは,LOVEBITESの面々自らがアクションを起こして観客とのコミュニケーションを従来のライブとは比べ物にならないくらい密度の濃いものにしたり,あるいはオーディエンスが積極的にライブに参加することを半ば強制することによって強い一体感を醸成することに成功していた。

つまり,演者と観客の距離感が今までのライブとは段違いで近かった。その最たる例が,メンバーがアリーナの通路を練り歩き,ファンとハイタッチしながら曲を演奏した“Raise Some Hell”であり,観客にスマホのライトを点けることを促した“A Frozen Serenade”であり,撮影OKとなった”Soldier Stands Solitarily"なのである。

絶賛ワールド・ツアー中ということもあり,演奏はとてもタイトで,ある種の風格さえ漂わせていた。しかし演奏そのものよりも,むしろ観客との距離の取り方や会場全体を煽るやり方に,より大物っぽいアーティスト感があったと思う。欧州を転戦した経験は,そのような所にこそ生かされていたのかもしれない。

セット・リストは強気の攻め一本槍で,緩急どころか急急急という感じだった。しっとりした曲ももちろんあったが,基本的にはアグレッシヴ。なかでも“Set The World On Fire”のようなSlayerリスペクトのスラッシュ系の曲のインパクトは凄まじかった。公演の数日前にリリースされたEPには典型的なスラッシュ・メタル路線の曲がなかっただけに,なおさらその凄みを感じた次第である。攻撃力の高い曲は,以前よりも明らかに迫力が増していたと思う。ビジュアルからは想像できないこの手の曲があるのが彼女たちの強みだ。

さて,ここからはグッズ購入から開演までの所感と,今回のライブのポイントについて書いておこう。

○物販

東京ガーデンシアター には14時30分ごろに到着した。すでにグッズ購入の待機列はかなりの長さだった。幸い曇り空だったので強い日差しはなかったものの,うだるような蒸し暑さに立っているだけで汗が吹き出した。

1時間ほど並んで,お目当てのTシャツを無事に購入。Motorheadオマージュのデザインがクールである。

入場開始まで時間があったので,有明ガーデン5階のフードコートで遅めの昼食。まわりはLOVEBITESのTシャツを着た人ばかり。おまけに店内のBGMでは時々LOVEBITESの曲が流れるので,否が応でも気分が高まった。

多数設置されたデジタル・サイネージもLOVEBITES一色
運良く金テープもゲット

○入場

17時05分に入場列に並んだ。何とか持ちこたえていた天候がついに崩れ,ポツポツと雨が降り出した……かと思ったら,あっという間に豪雨に。傘を差しても濡れるくらい激しい雨だった。ライブ直前に不穏な……という気がしないでもなかったが,個人的にはむしろこれから始まる激しいライブを物語っているような荒天に心が躍った。

17時30分,着席。今回の座席は2階,アリーナCブロックの5列目。会場内の位置としては上手のやや後方である。前方にはプレミアムシートのエリアがあるので,5列目とはいえステージまでの距離はかなりあった。プレミアムに落選したことを少し呪ったが,座席が列の端だったのでそこはラッキーだったかもしれない。

ぐるっと場内を見渡して,東京ガーデンシアター が素晴らしい構造をしていることに気づいた。客席はすり鉢状になっていて,アリーナから見た光景は圧巻のひと言。ミュージカルやオペラがよく似合いそうな,いかにも「劇場」という雰囲気がLOVEBITESにぴったりだなと思った。

○ドラムの位置がめっちゃ高い!

開演前にステージを眺めていて最も驚いたのが,ドラムが置かれている位置だ。もともとドラムは台座の上に配置され,少し高いポジションになることが多い。しかしこの日のドラムは,おそらく高さ2mはあろうかという巨大な構造物の上に鎮座していたのである。すり鉢状に3層もの高さを誇るスタンド席の迫力に負けじと対抗しているかのようであった。

○新曲“Unchained”の破壊力

ライブ直前にリリースされた5曲入りEPから披露された新曲は“Unchained”のみだった。とはいえ,この曲のインパクトは絶大。EPを聴いた時からこの曲は絶対にライブで盛り上がると確信していたが,その予想は見事に的中したと言っていいだろう。会場はものすごい盛り上がりだった。

会場が異様な高揚感に包まれる中,続けて披露されたのは“Stand and Deliver (shoot 'em down)”。これまたライブで圧倒的な煽動力を誇る屈指の名曲だ。この流れには最高にしびれた。

○映像にCGが!

この日のライブは生配信されていたこともあり,ステージ両脇のスクリーンにはライブ映像が映し出されていた。その映像に,曲に合わせてCGによる演出が加えられていたことが新しかった。

たとえば,“M.D.O.”ではサビの部分で掛け声に合わせて“M”,“D”,“O”の文字がスクリーンに大写しになり,“Set The World On Fire”では炎が立ち上り,“Thunder Vengeance”では稲妻がスクリーンを切り裂いた。

今までのLOVEBITESのライブでは映像はあまり積極的に活用されていなかったが,今後は増えるのかもしれない。映像を効果的に使えばライブは豪華になるので,大歓迎である。

○スマホのライトを点灯せよ!

“A Frozen Seranade”演奏前のMCでは,asamiさんからスマホのライトをつけてほしいというお願いが。いっせいにスマホを取り出してライトを点ける観客たち。曲が始まるとステージ上部からは雪を模した泡のようなものがハラハラと降り注ぎ,フロアと客席には無数の灯りがゆらゆらと揺れる。会場は美しく幻想的にきらめく光の粒で満たされた。

ドラマティックで美しい楽曲の魅力をいっそう際立たせる視覚的な演出は,実に感動的だった。まさにアーティストとファンが共同作業で作り上げた珠玉の時間,そしておよそヘヴィ・メタルのライブとは思えない美しい空間と言えよう。間違いなく今回のライブのハイライトの一つである。

◯まさかの撮影OK

感動的な”A Frozen Serenade”が終わると,なんとasamiさんの口から次の曲は撮影OKとのお許しが。しかも「#LOVEBITES」を付けてSNSに投稿してどんどん拡散してほしいというお達しも。このまさかの展開に場内はこの日一番の大騒ぎとなった。興奮の坩堝と化す東京ガーデンシアター。次々とスマホが高く掲げられる中,告げられた曲は”Soldier Stands Solitarily"であった。

まさかメンバー自ら「今までで一番難しい」と言ってはばからない屈指の難曲を全世界に向けて拡散OKにするとは完全に予想外であった。LOVEBITES史上最もテクニカルで速いこの曲がライブで披露されるのは,今回が2回目である。ただでさえ高難度の曲なのに,その曲をライブでプレイする経験が絶対的に足りていないにもかかわらず「撮影OK」「全世界に拡散」と高らかに宣言したLOVEBITES。プロのミュージシャンとしての矜持を見た。

ちなみに,喜び勇んでスマホを掲げて撮影した私であったが,心の準備が間に合わず最初はステージ全体を映すことができず,miyakoさんだけしか捉えることができなかった……。

撮影した動画から切り出したワンシーン

○演奏中にメンバーがアリーナに!

上述のように,“Raise Some Hell”ではドラムのharunaさん以外のメンバーがステージから降りてきて,アリーナ前方の通路を練り歩きながらパフォームするというLOVEBITES史上最大のサプライズが発生した。

歌いながら,あるいは演奏しながらファンとハイタッチを交わすasamiさん,miyakoさん,midoriさん,そしてFamiさん。この演出には全観客が狂喜乱舞。もう少し後方の通路にも来てくれたら,私もハイタッチできたのに……とちょっぴり悔しい思いを抱いたのであった。アーティストとファンの距離を文字通り縮めるこの演出,今後のライブでもたまにでいいから取り入れてほしい。

○バズーカ砲が登場!

ライブが終わると各メンバーがステージ前方に出てきて,ピックやスティックをフロアに投げ入れるのはよくある光景だ。運良くアイテムをゲットできた人にとっては最高の記念になるが,基本的には最前付近に陣取らないと手に入れることは不可能だ(そしてもちろん運も味方につける必要がある)。

ところが今回は,プレゼントを射出するためのバズーカ砲が登場した。スタジアムなどで客席に向けてプレゼントを放つ,あれである。メンバーは1人ずつ順番にバズーカ砲による砲撃を(楽しそうに)行い,放たれた砲弾ならぬプレゼントは見事にアリーナ後方まで届いたのだった。

この一幕の和気あいあいとした雰囲気は見ていてほっこりしたし,ファンに対する各メンバーの愛と気遣いが感じられて,何とも楽しいひと時であった。

○衣装がマイナー・チェンジ!?

曲とは関係ないが,メンバーの衣装がマイナーチェンジしていた。デザインがちょっと変わっただけなのに,従来の衣装よりもさりげなく上品になっていたと思う。FamiさんとHarunaさんがお揃いの髪型にしていたり,asamiさんが大きなリボンを付けていたりしたことを含め,ビジュアル面での変化は女性バンドならではの魅力,楽しさの一つだろう。

【セット・リスト】
01 The Crusade
02 When Destinies Align
03 M.D.O.
04 Rising
05 Wicked Witch
06 Unchained
07 Stand And Deliver (shoot ‘em down)
08 Set The World On Fire
09 The Final Collision
10 Thunder Vengeance
11 Holy War
12 A Frozen Serenade
13 Soldier Stands Solitarily
14 Judgement Day
15 Raise Some Hell
16 Don’t Bite The Dust
17 The Spirit Lives On
18 Under The Red Sky
19 Shadowmaker
20 We The United

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