レコード/2種類の記憶/いいですよ
あるカフェに行ったら、20歳くらいの店員さんが別の店員さんに「LET IT BE」のレコードをプレゼントしていた。
その一週間後、別のカフェに行ったら、壁に「LET IT BE」が飾ってあった。
人間の記憶には大きく2種類があるという。
ストーリーとストレージ
人間がものを記憶するときには、まず体験したことを一時的に覚えておいてから、しばらくして「思い出」としてしっかり脳に刻む。前者を担うのが海馬と前頭葉、後者を担うのが側頭葉、らしい。
つまりストーリー(story)を味わって、そのあとストレージ(storage)に入れておくということだ。
とくに恐怖・不安を刺激するストーリーをしっかり覚えるそうだ。喜劇より悲劇を正確に記憶する。
プレゼント
川沿いのカフェにて、イケメンの若い店員さんが別の店員さんにビートルズの「LET IT BE」というレコードをプレゼントしていた。
話を聞いてみると、退職する同僚へのプレゼントらしい。でもイケメン店員さん自身は「サージェント・ペパーズ」のほうが好きなのだそうだ。
昔の小節かドラマみたいなオシャレなことをする若者に感嘆した。
アビーロードは聴いたのに
そういえばLET IT BEをちゃんと最初から最後まで聴いたことがないな......なんて考えていた。
中学聖日記(理由なき反抗)
その次の週、別のカフェに行ったら壁に「LET IT BE」が飾られていた。
「中学生のときに貰ったものです。もうプレーヤーも持っていなけれど、飾るにはちょうどいいと思いまして」と店長は言った。
店長は60代くらいの歳に見える。壁に飾られているのは、もしかしたらビートルズ解散直後に発売したレコードかもしれない。
レリビー
その次の日、私もLET IT BEのCDを買った。タイトル曲はさすがに知っているものの、はじめて聴く曲がいっぱいあって驚いた。
家でアルバムを聴いていると、妻から「"家、ついて行ってイイですか?"を思い出す」と言われた。
全くおなじ音楽作品でも、聴き手のストーリーがそれぞれ異なる。(家族ですら差が出る)
私もいつか、誰かにLET IT BEをプレゼントしようと思った。でもCDのほうが聴きやすいよね。