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マーカス的音楽分析〜騎士たちの踊り プロコフィエフ

音数学」...音楽は概して数学であり、そのほとんどは数学のようにシステマチックに説明できるという信条に基づいて音楽を分析すること。

今回抜粋的に分析したのがプロコフィエフのバレエ音楽、ロミオとジュリエットから「騎士たちの踊り」。1935年という比較的最近に作られた曲でもあり、使われている和声は基本的な曲のそれとは違う。
ここ音源と楽譜を貼っておく。


P1 グランカッサとベース郡による堂々たる始まり

Dance of the Knights - Prokofiev_ページ_01

作り ベース・・・CB, Vc,  Gran Cassa, Tuba, Trb, C.Bsn, Bass Cl
          和音・・・Vc, Va, Hrns, Bsn
         メロ・・・1st and 2nd Vl, Cl
曲は堂々のEmから始まる。特にこの音域でのtubaがかなり重々しい響きがする。それをCBなどの他の楽器でダブリングさせることで、楽譜にある通りまさに”pesante"という響きがする。

P2 0:15~ ドミナント的性質を帯びるメジャーセブン

Dance of the Knights_ページ_02

第1小節のベースF#-Gという流れは、基本的な和声理論で行けば、GmのドミナントであるD7を用いる場合が多かったように感じる。しかしここではプロコフィエフは濁ったサウンドが欲しかったのか、ルートとセブンスが長7度で濁るDM7を使用している。また他にもオーソドックスな書法であればドミナントが来る場所で彼はメジャーセブンスを用いている。例えば、このP2の最後の和音であるBM7は次のページで

Dance of the Knights_ページ_03

Emへと確実に解決をしているのである。従来の方法でいけば、BM7にあるA#はAナチュラルであるのが常である。筆者は最初これは誤植ではないかと思った。現に筆者以外にもいくつかのピアノアレンジがこの和音をB7と勘違いして編曲されている。例↓
https://musescore.com/user/146316/scores/5367340

P4 0:35~ マイナーメジャーセブンフラット5という和音

Dance of the Knights_ページ_04

P4の2小節目も筆者が最初に誤解したコードでもある。当初、これはBハーフディミニッシュに違いないと思ったが、テューバが受け持つA#の音でそれが違うと分かった。誤植のような気がしなくもないが、この濁った音もまたプロコフィエフの狙いなのだろう。

このマイナーにフラット5もしくな#11という音は、ジョン・ウィリアムスの曲で聞いたことがある。このような濁りも映画音楽において、また効果的に用いられる。

0:11~ のVl, Vaの和音がマイナーに#11を足した和音である。

P7 1:05~ Fmスケール

Dance of the Knights_ページ_07

P4-5でもあったように(Dmで)、ジャズ的見地から分析するとここでは、Fエオリアンが機能を支配している。コードはFmで、メロディはFエオリアンの構成音のみを弾いている。

P11 1:45~ 終始のドミナントにトニック音

Dance of the Knights_ページ_11

エンディングでは、特にわかりやすいV-Iという流れができているのだが、スコアを見てみると少しユニークなものがあるのがわかる。従来で行くならば、ドミナントのB7のトニックの音であるEが入るのは好ましくない。なぜならD#という導音がEに解決するという明白な流れを阻害するものと見做されるためである。これはジャズにおいても同じで、このトニック音、ドミナントから見れば11thという音はドミナントの3rdと非常に濁った音がするため忌避される。

アメリカのバークリーでジャズを勉強したベーシストのAdam Neelyもこのドミナント11という和音について否定的な意見を言っている。
7:06から〜

"....However, in the case of Eb11 chord, there are some pretty nasty intervals that arise when you take a look at the inner voices. For example, the G on the bottom and the Ab on the very top create a very nasty minor 9th interval." 
訳)...しかしEb11においては、もし内声を見るならとても不快な音程があるのが分かると思う。例えば、この和音におけるG音とAb音は短9度を形成しており、それがとても不快な音程であるのだ。

プロコフィエフはこの和音に対して、単なる先取音だからよしとしたのか、それともジャズのように11thをテンションとして扱ったのかはわからないが、この禁忌を破ったとも言えるサウンドが欲しかったは間違いない。

話は変わるが、このプロコフィエフの書法は今日の映画音楽作曲家にさまざまな形で採用されているのは間違いだろう。そのせいか、ある人達にはこの騎士たちの踊りがスターウォーズの曲と似ていると思わせたようである。こんなイタズラが外国で少し流行ったようである。


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