読書記:「新しい資本主義」(原丈人著、 PHP研究所)(2009.12.21日経産業新聞寄稿)

------後日のコメント------------------
2021年に誕生した岸田内閣の経済政策の中心は「新しい資本主義」。この本のタイトルと同じだけですはなく、分配の見直しの視点が同じで、岸田総理自身が著書の原丈人氏の活動を政府の会議体と両輪になるものと述べています。
この書籍で紹介されている公益資本主義」の分配施策は既得権層の考え方とは異なる部分が大きいため、すんなりとは発展しないかもしれません。
しかしZ世代と呼ばれる若い人々の価値観との親和性が高いため、これからの社会において具体的な進展が見られるようになると考えています。
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 著者は米国を中心に現在の世界経済の主流となっている「金融資本主義」に対峙(たいじ)する概念として「公益資本主義」を提唱している。日本人でありながら米国を拠点にベンチャーキャピタリストとして、短期利益獲得ではなく、社会的に価値を生み出す企業へ投資する方針で大いなる実績を上げており、その意見には説得力がある。
 公益資本主義とは「会社の事業を通じて公益に貢献すること」である。この考え方はものづくりを基盤とした日本企業の経営理念に脈々と息づいており、日本人にとって納得感を持って受け入れることができるものである。
 世界的な金融危機を体験した現在では、ますます説得力を感じるが、本書は単なる啓蒙(けいもう)書ではない。会計分野の事例として、時価会計は新しい価値を創造しようとする立場からすると極めて不利益が大きいという考えを示す。しかし単純に批判するのではなく、現行の会計基準とも矛盾しない税制による解決策を提示するなど実践的な提言書なのである。 

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