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コロコロ変わる名探偵

「私は、凶器が灰皿だなんて一言も言ってませんよ」
探偵の指摘に僕はハッとする。
「被害者は鈍器で殴られたとしか言っていない。なのに、凶器が灰皿だと知っていた。それは、鈴木さん……。あなたが犯人だからですよ!」
探偵は誇らしげに宣言するが「ちょっと待って」の声。
「その推理はおかしいわ。だって、あの部屋には、鈍器とよべるものは灰皿しかなかったのよ。私も、鈍器ときいて、すぐに灰皿を連想した。だから、その理屈で彼を犯人とするのは無茶よ」僕はホッとしたが「それよりも」と女は続ける。
「灰皿で殺したということは、衝動的な犯行でしょ。計画しなかった、いや、できなかったと考えるべき。だったら該当するのは一人しかいない。それは当日になって、急遽、ここに呼ばれた鈴木さんよ」
女は鼻を高くしたが「いやいや」と別の声。
「鈴木さんが犯人の理由はそうじゃなくて……」
と三人の探偵が言い争うが、いずれにせよ、僕が犯人であることは間違いないようだった。

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