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金持ちジュリエット

ロレンス修道士が処方した仮死の毒により、ジュリエットは息を引き取るように眠った。
『ジュリエットは薬を飲んで仮死状態にあるだけ』
そうロレンスは手紙に記し、信頼する人物に託してロミオ以外の誰にも渡してはならぬと命じた。
だが、その手紙はロミオに届かなかった。ジュリエットが亡くなったと勘違いしたロミオは、冷たくなった彼女のそばで毒を飲み、自害した。
薬の効き目が切れるころ、ロレンスはジュリエットの墓へ向かい、ロミオの死体を発見した。同じくして、ジュリエットが仮死状態から目覚めた。彼女はロミオの遺体を見るや、大粒の涙をほとばしらせた。
「ああ、私の、心から、愛した……」
ジュリエットはロミオが腰に下げていた短剣を自らの胸に刺し、彼に寄り添うように息絶えた。
ロレンスは、あまりの悲劇的な結末に立ちくらんだ。罪悪感に押しつぶされそうだったが、なんとか心を落ち着け、ジュリエットが身に着けていた貴金属をはぎ取ってから二人を埋葬した。

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