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株式会社リストラ

都内にある教会で、若い神父が殺された。
『嘘だ。株式会社リストラの、関係者は、甘い』
神父が残したダイイングメッセージに捜査陣は頭を抱えた。神に仕えるものの考えることはわからん、と多くの刑事がさじを投げたが
「関係者の反対って、何ですかね」
と若手の刑事だけがこの問題と向き合っていた。「部外者だろ」という返事に「あ」と何かに気付いた様子で『カブシキガイシャリストラ』とホワイトボードに書く。
「単純なアナグラムでした。ここから『関係者』と『甘い』を抜き出せばいいんです。ただ、嘘だといってるので、反対言葉にして、ブガイシャと……、カ、ラシ、かな。で、残った文字を、入れ替えると」
会議室がざわつく。
「犯人は、神です。というのは冗談で、あの教会でいちばん役職の高い人が犯人でしょう」
その推理は的を得ており、後日、教会のトップである老年の司祭が逮捕された。株式会社リストラからブガイシャ、カラシを除いた言葉は、『キリスト』であった。

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