アメリカンマーダー(2020,Netflix original)ネタバレ

完全な胸糞作品です。幼い子どもの被害に関する話ですので、苦手な方は要注意です。

以下ネタバレ。



実際に起きた夫による妊娠中の妻と幼い娘2人に対する殺害事件を、SNSに被害者がアップしていた動画、友人や夫とのテキストメッセージ、メディアや警官のボディカメラ、署内での取調べや裁判などの実録映像をノーナレで構成した完全なるドキュメンタリー。

半端なフィクションに比べ、その事実の重さにショックが大きい。

自力で働いたお金で立派な家を建てるほどの努力家でストイックな妻は、最初の結婚で失敗した結果、今回の結婚では家族を守るためにストイックさを発揮してしまった。

でも、そんなのは特別なことじゃない。子供を守る親はそうなるのが当然とも言える。年子の子供たちを仕事もしながらあんなに情緒豊かに育てられるなんて、並大抵の覚悟と愛情ではできないだろう。

翻って夫は、終始、自分が愛されることだけを求めていた。従順な夫だったのは、そうすることで妻や娘たちから愛されるから。

だからこそ、愛されたい対象が変わればあっさりとゴミのように処理できる。というか、非常に動物的で短絡的なところから、知的水準の低い人物なのだろう。

結婚式の時のガムを噛んだままの不遜な表情から不気味だった。結婚後、痩せてデビューしちゃったせいで歪んだ自尊心がスパークしたのだろうなと感じた。

息子を尻に敷くからと嫁を気に入らないから結婚式に出席しないヒステリックな母親と姉、それに従う父親。妻の両親がバランスよく発言するのに対し、パブリックでは母親しか発言せず女性上位の構図が見て取れる義実家。まるで自分を見るようで嫁が嫌だったんだろうな、この母親と姉は。

判決前に被害者遺族を目の前に我が子まで手をかけた息子に、「あなたを赦す」と言える母親に育てられたからこそ、たかだか浮気のせいでこれほどのことをしでかしてしまう、この鬼のような男が出来上がったんだろう。

父親に子どもに手をかけたのは妻だと話したのは、警察官の「奥さんが子どもを殺したからカッとなったのか」という質問を聞いて、思いついたことだろう。それならば情状酌量を認められるかもしれないと踏んで、自供する気になったのではないか。

父親に嘘の自供をする卑怯さと狡猾さは、両親の偏った夫婦関係を見て育ち、歪な愛情を受けたからかもしれない。

アレルギー持ちの孫が来るにも関わらず、アレルゲンの入ったお菓子を置いていた件も、本当に知らなかったのか。未必の故意ではないかと疑ってしまう。それくらい母親のコメントは異常だった。

一方、妻の実家は常識的で愛情深い人たちばかりだった。娘が、5週間ぶりに会った父親ではなくフランキーおじさん(殺された妻の弟)を異様に恋しがる様子がいたたまれない。。あのままおじさんのもとで暮らせていたら。

最後のテロップ。アメリカでは毎日3人の女性がパートナーか元パートナーによって死に至らしめられている。パートナーや子どもを手にかけるのはほとんどが男性。しかも計画的に行われる。

ここから察すると、犯人の自白通りの時系列で犯行が行われたかどうかも怪しい。浮気相手も話していたように、自分だけが可愛いこの男の言う話はすべてがウソかもしれない。

ショックだったのはSNS依存気味だった妻はそのせいで、事件後第三者から謂れのない誹謗中傷に晒されてしまったこと。いつの時代も、見た目のよさげな加害者に妙な肩入れをする人々はいる。『Search』を観ても思ったことだが、SNSは本当に諸刃の剣だ。

いつでもSNSリテラシーをアップデートしておかなくては、と自戒を込める。







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