私のこれまで 7

兄に友人ができて、学校生活が楽しくなったのか本当に一般でいう普通の生活だった。兄や私の精神が安定してきたのを待っていたかのように母がまた夜の仕事をするようになった。理由は簡単。昼間の仕事のお給料だけでは、親子3人暮らしていけないからだ。母が夜いなくなる!私には恐怖しかなかった。それを見越してか、母は、「知り合いのお兄さんに来てもらうようにしたから。」と言った。明るいお兄さんだった。優しくて、勉強も見てくれた。私は住んでいる家が時代劇にでも出てきそうなくらい古い長屋だった為、貧乏人と言われ一部の人から虐められていた。一部だったから、他の子が「気にしない方がいいよ」と言ってくれたり、放課後一緒に遊ぶ子もできた。おそらくあの頃が私達兄妹が一番安定していたのではないだろうか。

3月、私は小学校を卒業し、中学生になった。兄と同じ学校へ通う。私が1年生で兄は3年生だ。入学式、教室に入り自分の席を探す。50音順に並んでいた。私が入学した中学校は幾つかの近隣の小学校の子供達が集まる。なので知らない人たちが多かった。周りの席の子はみんな違う小学校から入学してきていたので、入学式の前に自己紹介が行われた。そして入学式。母が来てくれていた。普通の事なのだろうけど、嬉しかった。入学式も終わり、帰宅すると、母が「今日はお祝いだから」といつもより豪華な食事まで用意してくれた。静岡にいたときはお金には困った生活を送ったことがなかった。母が家に居ない代わりに、何事もお金で済まされたからである。

中学校に入学し、いたって普通の中学校生活を送っていた。憧れの先輩もできたり、友達と登校しながら昨日見たアニメやテレビ番組で盛上がったり。そうして時は過ぎ夏休みの直前、いきなり2年生の先輩から呼び出された。何も悪い事はしていないし、目立つ存在でもなかったはずと思っていたのは私本人だけだったようで「あんた3年に兄貴がいるからってつけあがってんじゃねーよ。制服だって1年生なんだからまともな制服着て来い」と言われた。私の髪は生まれつき茶色い。なので地毛証明を先輩に見せて説明した。「制服は?」と聞かれたので「母が知り合いに頂いたものを仕立て直してくれたのですが、精いっぱい長くしてもこの短さなんです。」と裏返して見せた。そう、私の制服を新調するだけの余裕が我が家には無かったのだ。なので、行動は真面目なのに制服はちょいヤンキーみたいになっていた。

夏休みに入り、兄の友人が妹を連れて来た。私と同い年と言われたが、クラスが6つもあり、他のクラスに友達がいなかった私は彼女のことを知らなかった。その日以降、彼女と仲良くなり、お互いの兄妹4人でプールに行ったりもした。そして、夏休みの中頃ある事件が起きる。彼女の名前は今後愛と呼びます

夏休みということもあり、愛ともう一人幸子という友人が泊まりに来ていた。幸子は私のクラスメイトだ。夜、3人で私の家に居たが、暇を持て余し3人で外へ散歩に出かけた。初めての友人との夜の散歩。3人で、自動販売機のアイスを買い、食べながら歩いていると少し前で車が止まった。横を通り過ぎようとすると、中に乗っていた男の人が「お姉ちゃん達なしよん?暇なら俺らと遊びいかん?」と声をかけられた。そんなことは3人とも初めての経験だった。「どうする?真由美のおばさんが帰ってくる前に帰れば良いよね。」と3人とも軽く考えて車に乗った。初めてのナンパ。正直怖くなかったわけではない。どこに連れて行かれるのかもわからないし。でも、男性陣は私達を安心させようと笑い話などしてくれる。楽しかった。男性陣に歳を聞かれたが、さすがに13歳とは言えず、18歳ということにした。信じたのかはわからないが、それ以上は聞いてこなかった。肝試しをしようと大将陣という場所に行った。何のことはない夜の公園を、男女ペアで回ろうというのだ。おそらくその時に男性が気に入れば何かがあったのだろう。私は残念ながら男性陣から意味なく怖がられていたので、何事もなくお散歩は終わった。そして、私たち3人は元の場所まで送ってもらい私の家に帰った。

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