私のこれまで 13

3人と話しているうちに、伊能先輩は双子だと聞かされた。こんなイケメンんがもう一人存在するのかと、ちょっとワクワクしてしまった。3人の自己紹介が終わったところで、私の番だ。先輩たちの3つ下で最近転校してきたばかりなので、この辺りはまだ不慣れだと話した。先輩達と話していると楽しかった。馬鹿話などで笑わせてくれる。都築先輩には妹がいて隣のクラスの同級生だった。こんなお兄ちゃんだったら良かったのにと思うほど、都築先輩はイケメンで優しい人だった。「なんであそこにいたの?」と伊能先輩から聞かれ、学校での話をしたら「告白だったりして!」と茶化された。私はそんなことは思いもしなかったと言うと「いやいや、ありえるかもよ。」と笑いのネタにされてしまった。色々な話をした。しかし話しているうちに時間はどんどん過ぎていく。私は(帰らなきゃ・・・)と思っていた。あまり遅くなると、兄から何をされるかわからないという恐怖があったからだ。「私、そろそろ帰らないとお兄ちゃんに怒られるから。」と言って帰ろうとしたが、「お兄ちゃんそんなに怖いの?俺らが一緒に送って行くから心配しなくて良いよ。」と言ってくれ、少し安心した。何の話の流れか、居酒屋さんに行くことになった。誰かがお腹すいたと言ったのがきっかけっだたような気がする。伊能先輩の「大丈夫だから。」の笑顔につられてついて行ってしまった。4人で歩いていると、向こうから1台のバイクが近づいて来た。私達の所で止まりヘルメットを外した。これまたかなりのイケメン!先輩たちが「今からお前のとこに行こうって話してたのに、もうバイト終わったの?」と話している。バイクの主は「バイト終わって帰ろうと思ったのに、お前ら何やってんの?その子誰?」と先輩達と私を見て言った。私はなんて話して良いかわからずにいると、伊能先輩が「その辺歩いてたからナンパしちゃった。俺らの後輩だって。」と話してくれた。そして「こいつが俺の双子の片割れの雅也。」と紹介してくれた。雅也と紹介されたその人は、優しい面持ちの伊能先輩とは対照的な好戦的な感じの見るからにヤンキーな感じの人だった。双子と言われなければそうとは見えないくらい似ていなかった。双子が揃ってしまったことで、伊能先輩と呼ぶのは紛らわしいので伊能兄弟は下の名前で呼ぶ事にした。雅也先輩が兄で浩司先輩が弟なのだと言う。みんな地元の工業高校に通う高校生だった。その後、雅也先輩はバイクを都築先輩の家に置いてくると合流して5人で居酒屋に行った。雅也先輩はそこでバイトしていた。私はお酒を飲むのは初めてではなかったけれど、お店で飲むのは初めてだ。みんなかなり飲んで、雅也先輩はへべれけだった。かなりの時間お店で飲んでいたと思う。帰りはみんな千鳥足。肩組んだりしながら大笑いしながら歩いている。私は雅也先輩に肩を組まれ、どうして良いかわからず、かといって不快ではないこの状況に戸惑っていた。

また5人で公園に戻り、雅也先輩はベンチで寝転んでしまい私に膝枕をねだって来た。そんな男性を見るのは初めてだ。言われるまま膝枕をして座っていた。浩司先輩が「こんな状態で真由美ちゃん帰すわけにはいかないよね。」と言い始め、「よし、俺らの友達の所に行こう!」と言い出した。私は「このまま帰ります。親も帰って来ちゃうし。先輩たちの迷惑になるのも嫌なので。」と言ったけど、雅也先輩は「俺といるの、嫌?」と聞いて来た。「全然嫌じゃないし、このまま先輩達といたいけど、迷惑になるし・・・」と言うと、雅也先輩は「明日から夏休みでしょ?明日起きたら送って行って、お母さんに一緒に謝るから。そうしよ!」と言ってきかない。私は帰ってからの兄の事を考えると帰るのが怖くなってしまい、結局先輩たちのお友達のお家に行った。都築先輩と滝野先輩は自分の家に帰ると言って帰って行った。酔っ払いが3人肩組んだりしながら歩いて行った。酔っているせいかかなり歩いたような気がする。行った先は先輩たちの同級生の家。いきなり3人も酔っ払いが来たのでかなり驚いていたが、中に入れてくれた。私は初対面なので、挨拶をと思ったが、酔っ払ってそれどころではない。私の事は浩司先輩が説明してくれた。そして雅也先輩がベッドに入り「真由美ちゃんこっちへおいで。一緒に寝よう。」と言われ、どうしようと浩司先輩たちの顔を見ていると、「疲れたやろ?雅也と寝て良いよ。邪魔なら雅也追い出して良いから。」と笑いながら言ってくれたので、私は大人しくベッドで寝かせて貰った。翌朝、起きた時にはまだみんな寝ていたので、私はこっそり帰ろうと思い起き上がった。すると隣で寝ていた雅也先輩に抱きしめれられ、「まだ良いやん。もう少し寝よう。」と、ベッドに倒されてしまった。そのままお昼過ぎまで寝てしまい、雅也先輩がバイクを引き取りがてら、私を家まで送ってくれた。親に連れまわした謝罪をしたいと言ってもらったが、迷惑になってしまうからと、家の入口で帰ってもらった。玄関を開け「ただいま。」と言いながら靴を脱いでいるとものすごい勢いで兄が階段を駆け下りて来た。恐怖の始まりだ。

兄が階段から降りてくる音で母も目が覚めたらしく部屋から出てきて「ただいまじゃないでしょ!どこに泊まってたの!」と叱られた。母に公園に行ってからの事を説明してると兄が「あんたは黙ってな。俺が今から説教するから。真由美二階に来い。」と言われ、母から「お兄ちゃんが何してもあんたが悪いんだからね。」と言われた。覚悟を決めて二階の自室に入る。部屋の中央に正座させられ木のハンガーで殴られた。まずは頭の横。殴られて体制が崩れた私を「どこで何やってたのか説明してみろ。」と私が何か言う前に蹴りが頭に飛んできた。痛みでしゃべるのも辛い。しかし、兄は容赦ない。私が話そうとする度に木のハンガーであちこち殴られ、私は逃げるしかない。話なんて最初から聞く気がないのだ。私は痛みと恐怖で泣き叫んだ。その声を聴いて母が上がってきたが「ご近所迷惑でしょ!あんたが外泊なんてするからこんな事になるんでしょ。大袈裟に叫び声あげて、みっともない。」と言われた。確かに無断外泊した私が悪い。しかし、木のハンガーで滅多打ちにされている私を見てみっともないというのか・・・と、私は絶望した。母は兄に「やり過ぎなさんなよ。ご近所の目もあるから。」とだけ言って部屋に戻ってしまった。兄の制裁はその後しばらくして終わった。私はしばらくして母の所に行き抗議した。「お兄ちゃんは何日帰らなくても何も言われないのに、なんで私が1日外泊しただけでこんなに殴られなきゃいけないの?」その問いに母は「お兄ちゃんは男だけど、あんたは女でしょ。何かあったらどうするの。」だった。「外泊したらこんなに殴られなきゃいけないの?」と聞くと、「あんたはその位されないとわからないでしょ。」と言われた。言い聞かせるとか、叱るとかではなく、私の家では、兄は何をしても構わないが女の私は大人しく家に居て家事をしろということなのか。

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