私のこれまで19

福岡学園に移送される間、刑務官も私も無言だった。おそらく親密にならないよう、感情移入しないようにだと思う。鑑別所から福岡学園まではそう遠くなかったような気がする。1時間足らずで学園の門をくぐり、一番手前の建物の前で車は止まった。降りるよう促され、車から降り建物の玄関に入っていくと、私服の職員がいて「こちらへ。」と言われた。靴を脱ぎ、その人の後に続く。『園長室』と書かれたドアを職員が開けて通された。「今、園長をお呼びしてきますので少しお待ちください。」と言うと、職員は出ていった。一緒に来た刑務官から「ここで問題は起こさないように。」と言われた。少しして園長が入ってきた。刑務官は私の身上書だろうと思われる書類を園長に渡し、帰って行った。園長は「あなたはこれからここで生活することになります。ここでは普通の学校とは規則が違います。ここでは寮に入って、寮のみんなと問題を起こさないように生活してください。そして、ここには門はありますが、その上には有刺鉄線はありません。脱走しようと思えばできますが、脱走し捕まった後には特別作業と言う罰則があります。決して脱走しようだなんて考えないように。」と説明を受けた。「寮の先生が迎えに来るまで職員室で待っていてください。」と言われ、職員室へ連れて行かれた。職員室へ行くと、今日は新入りが来るという話が園の全員に回っていたようで、いろんな子が物珍しそうに見に来た。その中に見知った顔があった。中学校に入学した時、後ろの席だった香苗だ。「あんた、真面目だったのになんでこんな所に来たの?」と聞いてきた。そういえば香苗は私が転校する前から学校であまり見かけていなかった。「まあ、いろいろあったのよ。」と話していると寮の先生が迎えに来て、私は寮に連れて行かれた。寮では、寮で生活していくための規則を説明された。起床時間、就寝時間、学習時間、掃除時間、登校時間など。福岡学園の敷地内には女子寮が2棟、男子寮が3棟。独房が1棟。給食室1棟。その他梅園や畑などがあり、かなり広い。学校や体育館も敷地内にあり、学校は地元の学校の分校だ。当然男女共学だった。もちろん原則男女交際は禁止だ。一通りの説明を受けて、他の寮生たちに紹介された。私は3人部屋に入るよう言われた。今日から私の生活の場所だ。寮には私と同じ年の子が2人裕子と和子、1つ下の子が2人雅子と美奈子だった。この寮には部屋が3つあり、横並びになっていた。リビングとキッチンもあり、浴室は職員室の隣にあった。私が学園に入って1週間も経たないうちに1つ下の子が入ってきた。もう一つの女子寮にも1つ下の子が入ってきていた。ここでは1つでも年上の人には「姉ちゃん」と呼ばなければならない。私には妹はいないので新鮮だった。私はやはり初めのうちはなじめなくて、1人浮いた感じがしていたが日を追うごとに馴染んでいった。学園に入る前はみんなヤンキーと呼ばれた子達だろうが、とても優しく、新入りの私に色々と教えてくれた。

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