私のこれまで 9

愛と幸子の一件以来、うちの母も愛の父も何か変わるかと思ったが、二人とも夜の仕事していたので、特に何も変わらなかった。兄は友人宅に泊まることが増え、家に居ない。私は一人で家に居るのも暇だしつまらなかったので、愛や幸子と遊ぶことが増えていった。愛の家に遊びに行くことが多かった気がする。愛の家は繁華街にほど近いところにあり、当時はそこの繁華街がナンパのメッカのような所だった。

私達3人は、もうあの事件を忘れてしまったように、ナンパされるために出掛けるようになった。何事もなければ、知らない男性と楽しくお話ししながらドライブできる。しかもイケメンだった日にはラッキー!くらいに軽く考えていた。早い話、3人で家の中で何かするよりも、ナンパされてタダでドライブに連れて行ってもらったり、遊んでもらえる事に楽しみを見出してしまったのだ。私達3人共片親で夜は一人だったのもあったと思う。孤独を感じたくない。夜遊びで遠くに連れて行ってもらったり、飲み物や食事を奢って貰ったりが当たり前のような毎日になっていった。そうなってくると当然格好も派手になる。化粧も覚えたし、中学生とバレないために色々研究?した。そして夜遊び以外も悪い事をするようになる。万引きだ。中学生が買える服だったり、アクセサリー等タカが知れている。マニキュアや洋服、アクセサリー等、親にはとても買ってと言えない物は万引きで手に入れた。初めこそ罪悪感があったが、慣れとは怖いもので、繰り返すうちに万引きに対する罪悪感は無くなっていった。

いつものように愛の家に遊びに行くと珍しくいなかった。幸子は「今日は出られない。」と断られてしまった私は、仕方なく帰るかと家路についた。その時背後から「お姉ちゃん何しよん?遊び行かん?」と年配の男性に声を掛けられた。(どうせ帰っても一人だし、暇だし良いか。)と男性の誘いに乗った。それが間違いだった。連れて行かれたのは山の中。もうどこにいるのかさえ分からなかった。そして男性にいきなりキスされた。それからは狭い車の中でめっちゃくちゃ抵抗した。しかし、中学生が大人のしかも男性にかなうはずもない。あっと言う間にリクライニングシートを倒され上に乗られる。身動きができなくなった。私は相手の股間を蹴り上げようとしたが、ダッシュボードにしたたかに足を打ち付けて、私が痛い思いをしただけだった。諦めた。しかし、そんな状況で私はふと(兄にされるよりは気持ち悪くないものだ。)と考えていた。私がされたのは間違いなくレイプなのだが、兄に触られたり、舐められるより、他人のその男性にされた方がまだ嫌悪感が薄かったことに、自分で驚いた。

事が済むと男性は「さっきの所まで送って行けば良いかな?」と聞いてきた。その場に捨てられると持っていた私は「はい。」と答え、送ってもらった。家に帰りお風呂に入る。気持ち悪さがその時に一気に押し寄せた。身体を1度洗ったくらいでは気が済まず3回洗った。それでもあの男性の匂いが残っていそうで、気持ちが悪かった。その時、愛と幸子もこんな思いをしたのかと思うとやりきれなかった。

私達3人は相手は違うが、レイプと言う形で女性にとって大切なものを失くしたのだ。

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