見出し画像

ヴァンゼー議定書/ヴァンゼー議事録/ヴァンゼー・プロトコル/ヴァンゼー会議の記録の日本語版

今回は、1942年1月20日に開催されたとされる、ヴァンゼー会議議事録の翻訳です。タイトルが複数表記になっているのは、いろんな呼び方があるみたいだからで、検索でできるだけ引っかかるようにするためですw

あまり真剣には探してはいなかったのですけれど、ともあれネット上にはヴァンゼー議定書のテキストは私自身は見つけられていませんでした。どうして真剣に探していなかったかというと、ヴァンゼー議定書がホロコーストの証拠文書として重要な意味を持つのは、一義的には以下の箇所くらいだからです。

適切な指導のもと、最終的な解決の過程で、ユダヤ人は東部での適切な労働に割り当てられることになっている。体力のあるユダヤ人は、性別ごとに分けられ、道路工事のために大規模な労働隊としてこれらの地域に連れて行かれるが、この活動の過程で、間違いなく大部分が自然に淘汰される。最終的に残った可能性のあるものは、間違いなく最も抵抗力のある部分で構成されるので、自然淘汰の産物であり、解放されれば新たなユダヤ人の復活の種として作用するので、それに応じて扱われなければならない。

ほとんどの場合、この部分だけが引用されます。ユダヤ人は強制労働を通じてその大部分を絶滅させ、それでも生き残ったユダヤ人は適切に処理する、と書いてあるので、とにかく「ユダヤ人を絶滅させる」とは書いてあることがわかります。否定派でない歴史家達は、ここに書かれていない労働不適格者(病人、子供、老人、子持ちの女性)については、歴史的事実から、暗黙の了解として銃やガスで殺すことを前提にしているのだ、と読みますが、否定派はそんなことはどこにも書いてないのだから、正史派がそう読み取るのは誤りだと主張するようです。ここでは、どちらの言い分が正しいかについては語りませんが、絶滅について直接的な記述をしていないことは確かです。

しかし、しばしば証拠になる、だの、ならない、だのと言われるヴァンゼー議定書に関し、果たして全部ちゃんと読んでる人ってどれくらいいるんでしょうね? 少なくとも私は読んだことはありませんでした。過去に、ヴァンゼー議定書に関しては、その捏造疑惑に関する記事を以下の通り翻訳して来ただけです。

というわけで、否定するにしろ(否定する人は私の記事なんか読まないでしょうが)、しないにしろ、一度全部目を通しておくのは悪くないのではないかと思い、訳せるテキストがあるサイトを見つけてしまったので、今回翻訳紹介することにしました。

否定する人だって、これを読めば、少なくとも、仮にナチスドイツはガスや銃でユダヤ人をたくさん殺していないとしても、ユダヤ人を排除しようとしていたことだけは間違いのない事実だ、とは否定しようがないのではないでしょうか? 議定書が捏造かどうかはさておくとして。

ホロコーストなんかなかった! とだけ考えるのではなく、歴史的に何が事実としてあったのかについて考えることは、それなりに意義深いことだと思います。その意味で、ヴァンゼー議定書は貴重な歴史文書なのです。ハイドリヒを含め、ナチスの高官達は「ユダヤ人問題の最終解決」をしようとしていたことだけは間違いないのです。では、彼らは一体何を考えていたのか? それを知るための資料として一読していただけたら幸いです。多分、ネット上ではヴァンゼー議定書の日本語訳初公開です(って一応自慢しておくことにした(笑))

▼翻訳開始▼

序文

ヴァンゼー議定書の原本は、アメリカ兵がドイツ外務省の書類の中から見つけた1冊だけしか残っていない。この議定書は30部作られたが、見つかったのは1部だけである。

当初、欧米のアナリストたちは、この議定書の中心的な重要性を理解していなかった。最初のニュルンベルク裁判では、議定書は証拠としても使われなかった。しかし、1947年3月、祖国を追われ、1945年に米軍とともに帰国したドイツ系ユダヤ人の弁護士ロバート・ケンプナーが、1946年から1949年にかけて行われたいわゆる「ニュルンベルク継続裁判」の主任検事となった。ケンプナーはこの議定書を、1947年のいわゆるヴィルヘルムシュトラッセ裁判の証拠として提出し、外務省の高官たちの戦争犯罪を告発した。

文書

ヴァンゼー議定書
1942年1月20日、翻訳

このドイツ語版「ヴァンゼー議定書」の英文は、ジョン・メンデルソーン編集の『ホロコースト:厳選された18の文書、第11巻:ヴァンゼー議定書と戦略サービス局によるアウシュビッツに関する1944年の報告書』(New York: Garland, 1982)、18-32.』に掲載されている、ニュルンベルク裁判での証拠資料として作成されたパブリックドメインおよび米国政府の公式翻訳を基にしている。

スクリーンショット 2022-01-21 18.10.48

スタンプ:最高機密

コピー30部

第16番目のコピー

議論の議事録

I.

以下の人物は、1942年1月20日にベルリンのグロス・ヴァンゼーNo.56/58で行われた、ユダヤ人問題の最終的解決に関する議論に参加した。

ガウライター、マイヤー博士、占領下の帝国省及び東部占領地省次官
ライプブラント博士
国務長官、シュトゥッカート博士、帝国内務省
国務長官、ノイマン、4ヵ年計画の全権大使
国務長官、フライスラー博士、帝国司法省
国務長官、ビューラー博士、ポーランド総督府
外務省の国務次官、ルター博士
親衛隊上級大佐、クロップファー、副総統官房
クリッツィンガー帝国首相官房長官

スクリーンショット 2022-01-21 18.45.41

親衛隊中将ホフマン、親衛隊人種及び移住本部本部長
親衛隊中将ミュラー、国家保安本部
親衛隊中佐、アイヒマン
親衛隊上級大佐シェンガース
治安警察と政府のSDの司令官
親衛隊少佐ランゲ博士、治安警察・SDのラトビア総管区司令官、治安警察・SDの帝国コミッサリア「イーストランド」総管区司令官の代理として。

II.

討議の冒頭、保安警察とSDの責任者である親衛隊大将ハイドリヒは、帝国元帥がヨーロッパにおけるユダヤ人問題の最終的解決の準備のために自分を代表者に任命したことを報告し、この討議は基本的な問題を明らかにするために招集されたことを指摘した。ヨーロッパにおけるユダヤ人問題の最終的な解決に関連して、組織的、事実的、物質的な関心事に関する草案を送ってもらいたいという帝国元帥の希望により、これらの問題にすぐに関係するすべての中央事務局が、その一般的な活動を一致させるために、最初に共通の行動をとることが必要になった。

スクリーンショット 2022-01-21 18.48.42

親衛隊全国指導者とドイツ警察長官(保安警察長官とSD)は、地理的な境界線に関係なく、ユダヤ人問題の最終的な解決のための公式な中央処理を任されていた。続いて、治安警察とSDの責任者が、これまでに行われてきた敵との戦いについて短い報告を行った。要点は下記の通りである。

a) ドイツ国民の生活のあらゆる領域からユダヤ人を追放すること。

b) ドイツ国民の生活空間からユダヤ人を追放すること。

このような努力を行う中で、現在可能な唯一の解決策として、帝国領内からのユダヤ人の移住を拡大し、計画的に加速することが開始された。

帝国元帥の命令により、1939年1月にユダヤ人移住のための帝国中央事務局が設置され、治安警察とSDの長官がその管理を任された。その最も重要な任務は

a) ユダヤ人の移民を増やすための準備に必要なすべての手配をすること。

b) 移民の流れを誘導すること。

c) 個々のケースにおいて、移民の手続きを迅速に行うこと。

その目的は、合法的にドイツの生活空間からユダヤ人を一掃することであった。

スクリーンショット 2022-01-21 18.49.57

移民を強制的に加速させることの弊害を、各局とも実感していた。しかし、当面の間、問題の他の可能な解決策がないため、彼らはそれを容認していた。

移民に関わる仕事は、後にドイツだけの問題ではなく、移民の流れを受けている国の当局が対処しなければならない問題でもあった。外国政府から上陸時に多額の資金を要求されたり、船のスペースが確保できなかったり、入国許可の制限が増えたり、許可が取り消されたりと、経済的な困難は移民の困難を殊更に増大させていた。 このような困難にもかかわらず、政権奪取から1941年10月31日の期限までに53万7千人のユダヤ人が国外に送り出された。このうち

1933年1月30日時点でドイツにいたのは約36万人

1939年3月15日にオーストリア(オストマルク)にいたのは約14万7000人

1939年3月15日にボヘミア・モラヴィア保護領にいたのは約3万人であった。

ユダヤ人自身、あるいはユダヤ人の政治団体が移民のための資金を提供した。 貧しいユダヤ人が後に残らないように、裕福なユダヤ人が貧しいユダヤ人の移住に資金を提供しなければならないという原則が貫かれ、貧しいユダヤ人の移住に関わる資金調達のために、所得に応じて適切な税、すなわち移住税が課せられたのである。

スクリーンショット 2022-01-21 18.55.59

必要なライヒスマルクの両替以外に、上陸時に外貨を提示する必要があった。ドイツが保有する外貨を節約するために、外国のユダヤ系金融機関は、ドイツ国内のユダヤ系組織の協力を得て、十分な量の外貨を手配する責任を負っていた。 1941年10月30日までに、これらの外国人ユダヤ人は合計で約950万ドルを寄付した。

その間、親衛隊全国指導者とドイツ警察長官は、戦時中の移民の危険性と東方の可能性を考慮して、ユダヤ人の移民を禁止していた。

III.

総統が事前に適切な承認を与えることを条件に、ユダヤ人を東に疎開させるという、移民に代わる別の解決策が登場した。しかし、これらの行動はあくまでも暫定的なものであり、将来のユダヤ人問題の最終的な解決に関連して最も重要となる実践的な経験がすでに収集されている。

ヨーロッパのユダヤ人問題を最終的に解決するためには、約1,100万人のユダヤ人が関係することになるが、その内訳は以下の通りである。

スクリーンショット 2022-01-21 19.55.21

国:人数

A.
ドイツ本国:131,800人
オーストリア:43,700人
東部地域:420,000人
ポーランド総督府:2,284,000人
ビャウィストク:400,000人
ボヘミア・モラヴィア保護国:74,200人
エストニア:ユダヤ人はいない
ラトビア:3,500人
リトアニア:34,000人
ベルギー43,000人
デンマーク:5,600人
フランス/占領地:165,000人
非占領地域:700,000人
ギリシャ:69,600人
オランダ:160,800人
ノルウェー:1,300人

B.
ブルガリア:48,000人
イギリス:330,000人
フィンランド:2,300人
アイルランド:4,000人
サルディニアを含むイタリア:58,000人
アルバニア:200人
クロアチア:40,000人
ポルトガル:3,000人
ベッサラビアを含むルーマニア:342,000人
スウェーデン:8,000人
スイス:18,000人
セルビア:10,000人
スロバキア:88,000人
スペイン:6,000人
トルコ(欧州分):55,500人
ハンガリー:742,800人
ソ連:5,000,000人
ウクライナ:2,994,684人
ビャウィストクを除く白ルテニア(ベラルーシ):446,484人

総計:11,000,000人以上

スクリーンショット 2022-01-21 20.10.12

ただし、外国のユダヤ人数には、現在もユダヤ教を信仰しているユダヤ人のみが含まれている。なぜなら、人種的に「ユダヤ人」という言葉を定義していない国もあるからである。

それぞれの国での対応は、特にハンガリーやルーマニアの人々の態度や考え方によって困難を極めることになるだろう。例えば、現在でもユダヤ人は、外国籍を正式に証明する書類をルーマニアで購入することができる。

ソ連の生活のあらゆる場面でユダヤ人が影響力を持っていることはよく知られている。ソ連のヨーロッパ地域には約500万人のユダヤ人が住んでいるが、アジア地域にはわずかに1/4万人しかいない。

ソ連のヨーロッパ地域に居住するユダヤ人のトレード別内訳は、おおよそ以下の通りである。

農業従事者 9.1%
都市労働者 14.8%
貿易業 20.0%
国に雇われている人 23.4%
医療関係者、報道関係者、演劇関係者など、民間の職業 32. 7%

適切な指導のもと、最終的な解決の過程で、ユダヤ人は東部での適切な労働に割り当てられることになっている。体力のあるユダヤ人は、性別によって分けられ、道路工事のために大規模な労働力としてこれらの地域に連れて行かれるが、この活動の過程で、間違いなく大部分のユダヤ人は自然消滅する。

スクリーンショット 2022-01-21 21.03.41

最終的に残る可能性のあるものは、間違いなく最も抵抗力のある部分で構成されるので、それなりの扱いを受けなければならない。なぜならば、それは自然淘汰の産物であり、解放されれば、新たなユダヤ人の復活の種として機能するからである(歴史の経験を参照)。

最終的な解決策を実行に移す過程で、ヨーロッパは西から東へとくまなく調べられる。ボヘミア・モラヴィア保護領を含むドイツ国内は、住宅問題やその他の社会的・政治的必要性から、最初に処理しなければならない。

疎開してきたユダヤ人は、まずグループごとに、いわゆるトランジットゲットーに送られ、そこから東へと運ばれていく。

親衛隊大将ハイドリヒは、疎開のための重要な前提条件は、関係者を正確に定義することだと言った。

65歳以上のユダヤ人を疎開させるのではなく、老齢者用のゲットーに送るというもので、テレージエンシュタットがこの目的で検討されている。

これらの年齢層(1941年10月31日時点でドイツ国内およびオーストリアにいた約28万人のユダヤ人のうち、約30%が65歳以上)に加えて、重傷を負った退役軍人や戦争での勲章(鉄十字Ⅰ)を持つユダヤ人も老齢者用のゲットーに受け入れられる。この便利なソリューションにより、多くの介入を一挙に防ぐことができる。

スクリーンショット 2022-01-21 21.25.23

個々の大規模な疎開行動の開始は、軍事的な進展に大きく左右される。我々に占領され、影響を受けているヨーロッパの国々での最終的な解決策の取り扱いについては、外務省の適切な専門家が治安警察とSDの責任者と協議することが提案された。

スロバキアとクロアチアでは、この点に関する最も重要な問題がすでに解決に近づいているため、問題はそれほど難しくない。ルーマニアでは、政府がユダヤ人問題担当の委員を任命した。ハンガリーの問題を解決するためには、近いうちにハンガリー政府にユダヤ人問題のアドバイザーを押し付ける必要がある。

イタリアでの問題に対処するための準備を進めることに関して、親衛隊大将ハイドリヒは、これらの問題を視野に入れて警察署長に接触することが好機であると考えている。

占領下のフランスでも、非占領下のフランスでも、疎開のためのユダヤ人の登録は、おそらく大きな問題なく行われるだろう。

ルター国務次官はこの問題で、北欧諸国など一部の国では、この問題を徹底的に処理すると困難が生じるため、これらの国では行動を延期することが望ましいと注意を喚起している。また、影響を受けるユダヤ人の数が少ないことから、この延期は実質的な制限とはならない。

スクリーンショット 2022-01-21 21.38.48

外務省は、南東ヨーロッパと西ヨーロッパには大きな困難はないと考えている。

ホフマン親衛隊中将は、治安警察とSDの長官がハンガリーでこの問題を取り上げるときに、一般的なオリエンテーションのために、人種・移住事務局からハンガリーに専門家を派遣することを計画している。この専門家は、積極的には活動しないが、人種・移住事務局から警察官のアシスタントとして配置することにした。

IV.

最終的な解決計画の過程で、ニュルンベルク法は、問題の絶対的な解決のための前提条件として、混血結婚や混血者の問題の解決も含めて、一定の基盤を提供するべきである。

保安警察とSDの長官は、帝国の首相官房長官からの手紙に関して、最初は理論的に以下の点を議論している。

1)第一次混血者の取り扱いについて

一親等の混血者は、ユダヤ人問題の最終的な解決に関しては、ユダヤ人として扱われる。

スクリーンショット 2022-01-21 21.43.52

この処置方法から、次のような例外が生まれる。

a) ドイツ人の血を引く者と結婚した一親等の混血者で、その結婚により子供が生まれた者(二親等の混血者)。このような二親等の混血者は、基本的にドイツ人として扱われる。

b) 一親等の混血者で、党と国家の最高機関が生活のあらゆる分野ですでに免除許可を出している者。個々のケースを検討しなければならず、混血の方に不利な判断がなされる可能性も否定できない。

免除の前提条件は、常に混血の人の個人的な功績でなければならない。(ドイツ人の血を引く親や配偶者の功績ではない)。

疎開を免除された一親等の混血者は、子孫を残さないために不妊手術を行い、混血者の問題を一掃することになる。この不妊手術は任意である。しかし、帝国に残るためには必要なことである。不妊手術を受けた「混血の人」は、その後、それまで受けていたすべての制限から解放される。

2)第二次混血者の取り扱いについて

二親等の混血者は、基本的にドイツ人の血を引く者として扱われるが、以下の場合は例外で、二親等の混血者はユダヤ人として扱われる。

スクリーンショット 2022-01-21 21.50.44

a) 二親等以内の混血の者が、両親ともに混血の者である婚姻から出生した場合。

b) 二親等の混血者は、人種的に特に望ましくない外見をしており、外見上はユダヤ人であることを示す。

c)二親等の混血者は、警察や政治の記録が特に悪く、ユダヤ人のように感じて行動していることがわかる。

また、このような場合、2親等の混血者がドイツ人の血を引く者と結婚した場合には、免除されないことになっている。

3)完全なユダヤ人とドイツ人の血を引く者との間の婚姻。

ここでは、ユダヤ人のパートナーを疎開させるか、あるいは、そのような措置がドイツ人の親族に与える影響を考慮して、(この混合結婚を)老齢者用ゲットーに送るか、ケースごとに決めなければならない。

4)一親等の混血者とドイツ人の血を引く者との間の婚姻。

a) 子供がいない場合

結婚しても子供が生まれなかった場合、一親等の混血者は避難させられるか、老齢者用のゲットーに送られる(正真正銘のユダヤ人とドイツ人の血を引く者との間の結婚の場合と同じ扱い、ポイント3)。

スクリーンショット 2022-01-21 21.55.36

b) 子供がいる場合。

結婚して子供が生まれた場合(二親等の混血者)、ユダヤ人として扱われる場合は、一親等の混血者の親と一緒に疎開させられたり、ゲットーに送られたりする。これらの子供がドイツ人として扱われる場合(通常の場合)は、一親等の混血の親と同様に疎開が免除される。

5)一親等以内の混血者と一親等以内の混血者またはユダヤ人との婚姻

このような結婚をすると(子供も含めて)家族全員がユダヤ人として扱われるため、疎開させられたり、老齢者用のゲットーに送られたりする。

6)第一親等の混血者と第二親等の混血者との婚姻。

このような結婚では、結婚によって子供が生まれたかどうかは考慮されずに、パートナーの二人とも疎開させられるか、老齢者用のゲットーに送られる。なぜなら、可能性のある子供は、原則として、二親等以内の混血のユダヤ人よりも強いユダヤ人の血を持っているからである。

ホフマン親衛隊中将は、不妊手術を普及させなければならないという意見を唱えているが、疎開するか不妊手術を受けるかの選択を迫られた混血の人は、不妊手術を受けたいと思うからである。

スクリーンショット 2022-01-21 22.27.11

国務長官のシュトゥッカート博士は、混血結婚や混血者の問題を解決するために上述した可能性を実際に実行すると、果てしない事務作業が発生すると主張している。第二に、生物学的事実を無視することはできないとして、シュトゥッカート国務長官は、強制不妊手術への移行を提案した。

さらに、混合結婚の問題を単純化するためには、立法者が次のように言うことを目標に、可能性を検討しなければならない。「これらの婚姻は解消されました。」

ユダヤ人の疎開が経済に与える影響について、ノイマン国務長官は「戦争に不可欠な産業に従事しているユダヤ人は、代替要員がいない場合は疎開させられない」と述べている。

ハイドリッヒ親衛隊大将は、これらのユダヤ人は、当時行われていた疎開を実行するために彼が承認した規則に従って疎開させられないと指摘した。

ビューラー国務長官は、この問題の最終的な解決を総督府で始めることができれば、総督府としては歓迎すると述べた。なぜならば、ここでは輸送はそれほど大きな役割を果たしていないし、労働力供給の問題がこの行動を妨げることもないからである。特にここでは、伝染病の媒介者としてのユダヤ人は極めて危険な存在であり、他方では継続的な闇取引によって国の経済構造に恒常的な混乱をもたらしているため、ユダヤ人は可能な限り速やかに総督府の領土から排除されなければならない。しかも、約250万人のユダヤ人のうち、大半の人が仕事に就けない状態である。

スクリーンショット 2022-01-21 22.34.03

ビューラー国務長官は、総督府におけるユダヤ人問題の解決は、治安警察長官とSDの責任であり、彼の努力は総督府の役人によって支援されるだろうと述べた。彼の要求はただ一つ、この地域のユダヤ人問題を一刻も早く解決することだった。

結論として、さまざまな種類の可能な解決策が議論されたが、その中でマイヤー・ガウライタービューラー国務長官は、最終的な解決のためのある種の準備活動を、問題となっている地域で直ちに行うべきであり、その際に住民を不安にさせることは避けなければならないという立場をとった。

最後に、治安警察隊長とSDが参加者に対して、解決策に関わるタスクを実行する際に適切なサポートを提供するよう要請し、会議は終了した。

(註:サイトではこの後も記事が続くが、今回の翻訳はヴァンゼー議定書の紹介が目的なので省略)

▲翻訳終了▲

ヴァンゼー会議は午前中の一時間半で終わったとされており、その後は出席者でワインなどを飲みつつ懇親会のようだったと聞いています。会議の大半は議定書にもある混血の取り扱いをどうするかについて話し合われたそうで、別にこの会議でユダヤ人問題の最終解決、つまりヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅を決定したなどといった俗説のような会議ではありませんでした。

個人的にも、ヴァンゼー会議・議定書は、ホロコーストの一つの証拠ではあるものの、特に決定的な内容があるわけでは無いと思っています。ユダヤ人を具体的に、ほんとにどこかに疎開させるのか、それとも疎開というコードワードが意味する肉体的な絶滅とするのかなどについては、ヴァンゼー会議上では一切話し合われなかったと思っています。生かすも殺すもナチスドイツ次第なのであって、極端な話がドイツ支配圏でのユダヤ人の影響のないようにすること、それが最終解決の意味することだったのでしょう。そのために、ユダヤ人をとにかく物理的に排除する、それをヴァンゼー会議で確認したのでしょう。そんなこと、関係者はみんな知ってたのです。

しかし、具体的に「絶滅」とは一切書いてない、ある意味非常に内容の薄いヴァンゼー議定書まで「捏造」と否定派が主張する(マットーニョら一部否定派は捏造とは認めていません)のは、大きな理由の一つは単にホロコーストそのものを否定するにとどまらず、ホロコーストは連合国やユダヤ人による捏造であることを強調したいからなのでしょう。その手の否定派にとっては、「陰謀」はあって然るべきものなのであって、この世界に欠くべからざるものとして存在しなければならないのでしょうね。こんな内容の薄い文書を偽造してどうするの? と私などは思うわけですが、陰謀論者は陰謀が不可欠なのです。

ただし、内容が「薄い」と言っても、ヴァンゼー議定書が証拠として全く意味がないかというとそんなことは決してありません。確かにユダヤ人問題の最終解決について話し合われた証拠ではあるからです。否定派ではない人が考えるホロコーストの具体的内容と矛盾する部分は何もありません。ナチスドイツは組織的にホロコーストを実行したことをしっかり意味づけているのがこの議定書の意義だと考えます。従って、議定書を捏造と主張しようと、解釈でホロコーストの証明になってないと主張しようと、いずれの場合でも否定派は実際には筋の通らない主張をしている、と私は考えます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?