大人の責任
何回も学校訪問に行ってたりすると、
『mitsuguさんは子ども好きですよね』
なんて言われたりするんですが…
自分では、あまり自覚がないのです。
ただ…子どもさんと話をすることそのものはそれほど苦ではないので、どちらかと言えば…
『やや、子ども好き』
という範疇には入るのかも知れません。
実際に子育てをしたこともない。
教育に関わる仕事もしてない自分が…
『私、子ども好きなんですよ!!』
とは、おいそれと口にはできない。というふうに考えています。
それなりに長い期間、たくさんの子どもさんのお相手を務めて思うのは…
『子どもというのは…ただかわいいというだけの存在ではない』
ということなのです。
大勢の子どもさんがみんな一斉に騒げば、やはり、うるさいと感じるし、ちょっとした受け答えにも気を使わなければならないところは、神経を研ぎ澄ましますので、正直に言うと、しんどいとも思ってしまいます。
それでも…子どもさんというのは、大人にとって、ただうるさいというだけの存在でもなければ、しんどいというだけの存在だというわけでもありません。
たしかに、子どもさんと触れ合うのはそれなりに覚悟が要る作業なのですが…
訪問先で出会う子どもさんは…
大人の私にも、他では得がたい貴重な発見や学習をさせてくれる大切な存在なのです。
子どもさんお一人おひとりで、理解や判断に大きな個人差がありますので、どの子にも通じる正解、というのはないのですが…
…先生や親御さんが
《この子は、私たちの言うことを理解しない!》
と、イライラするより…
大人の側から、その子に合わせたその子なりのアプローチのやり方、コミュニケーションの取り方を考えてあげられていれば…
こっちの言うこと全部…とは言わずとも、ある程度…それなりには、なんとか互いの言葉は通じるものなのです。
どうしても通じないお子さんには、何をやっても言葉が通じないけど…
もし言葉が通じ、相手のことが想像ができたとしても…
それでも、どうしても分かり合えない相手が居る…
というのは、大人の社会も同じであろうかと思います。
子どもさんよりずっと賢く、互いの理屈が通じるはずの大人同士でさえ、日常の意思疎通が上手くいかない場面が多いと言うのに、
より幼く…経験の浅い子どもさんに…《とにかく自分の言うことを聞け》
と、とても難しいことを要求してしまうのは、大人のエゴだと思います。
八王子市内には、私などよりよっぽど経験豊かで立派な障害者がたくさん居るので、
『学校訪問を引き受けてくれないか』
と声をかけてもみるのですけど…
『子どもの反応が怖い…どう対応して良いか判らない』
という理由で断られしまう場合が大半です。
そもそも…
《大人のいうことを理解しない。なにを考えてるのか判らない》
というのが、まさに子どもさんの本質というものでしょう。
仮に…あまりに小さいうちから…聞き分けよく、お行儀良く、大人しい子がいたとして…
私なら、その子の家庭環境に問題ありとみるか、子どもさんの心の病を疑います。
《大人の予測もつかないことをするのが子どもの本分》
であろうとも思います。
もちろん、どんな子どもさんも、いつか必ず大人になりますから…
成長に合わせて社会の約束、世の中のルールを守らせることは大切だけれど…
まず大人の側が、子どもさんに対して丁寧に、誠意を持って接することを怠ったままでいながら、都合のいい時だけ…
《こっちの言うことを聞け》
と、頭ごなしに押し付けるのは、権力の乱用であり、権威の強制です。
私自身が小さな子どもだった時の事を考えれば…
周りの大人のいうことなんか、全然聞かなかったですし…きちんと聞いていたつもりでも、理屈が腑に落ちるというところまでは、なかなか理解が追いつかなかったりしたものです。
それでも、私たちすべての大人には、子どもさんと向き合う責任があります。
子どもさんが、自分の思う通り、言う通りにならないからと…
今が現役の子ども世代と、直に関わることを避けるのは…なにかが違うと思うのです。
言うなれば…
《子どもを教える大人の方が、もっと子どもっぽい》
《一見偉そうにしている大人ほど、実は気持ちに余裕がない》
…というところでしょうか。
子どもさんと対話するには、子どもさんの文化…言葉を知る必要があり、可能な限り子どもさんの思考や心理に寄り添う必要があります。
私が子どもさんに何かを教えるのではなく、私が子どもさんから学ぶ…この気構えを大切にしています。
ただ…私が、
講演、講話の場でできることは、身障者として、大人として、これまで生きた自分の経験を話すことだけなのです。
まさか自分が偉いなどと…ましてや自分が子ども好きだなどと思ったことは、今まで一度もありません。
好きか嫌いか…単に気持ちの有り様がどうであるか、ということよりも…
まず、自分に与えられたお役目、やるべき事を精一杯やるだけなのです。
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