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浅瀬でぱちゃぱちゃ読書と、深い読書の違いは何か? 何をしたら読書は深まるのか?

「本を読んでも自分が成長している実感が得られない」とずっと感じていました。

さまざまな本を手に取り、読んでみて、刺激されて、やる気にあふれますが、どうも結果に伴わないという感覚にずっと悩まされていました。浅瀬でぱちゃぱちゃ遊んでいるような感覚です。期待していたのは深い読書ですがたどり着けなかったのです。

あるとき、ふとしたことに気がついて試したところ、予想外によい結果がでました。

この記事では、以前の読書方法を「浅瀬でぱちゃぱちゃ読書」と呼び、その後の読書方法を「深い読書」と呼び、何が違いを生じたのかを解説し、すぐにできる方法を紹介します。

結論としては、知識の問題を理解し、読書に対する読書に対するインプット/プロセシング/アウトプットのモデルを変えたら結果が出るようになりました。


浅瀬でぱちゃぱちゃ読書

本を読むことをインプットするとよくいわれます。本を読んだ後にすることはアウトプットといわれます。さて、本を読んだ後に何をしているでしょう。私はこんなことをしていました。

・要約してまとめる
・キーワードをメモする
・面白かったところを引用して一言コメントを書いてSNSにあげる

一言で、学校の授業で綺麗なノートを作るようなことです。インプットをして、要約といったちょっとだけ処理して、そのままアウトプットするお手軽なプロセスです。本を読む人は少ないので、こんなことでもSNSにあげれば誰かが読書家と持ち上げてくれます。

> 本に書いてあるすごい文章の一文。
これはほんと大事。

※お手軽アウトプットの見本

問題意識や不満を解消したくて本を読んだとしましょう。要約してSNSにアップして学んだ気になりますが、現実の自分の行動はそれ以前とたいして変わりません。ですから、現状の不満が解決されずに続きます。学習しているのに現状の不満が続きますから、自己イメージに危機が訪れます。その危機をインスタントに解消できそうな本をまた手に取り、このサイクルが繰り返されます。

ここ何年かの書籍の特徴もサイクルに拍車をかけています。各章末ごとにまとめが記載されており、読者はそれになぞってSNSに要約を投げればいいのです。周りは学んでいると評価してくれます。インスタントラーメンのように、手軽に学習しているという自己イメージを作れてしまいます。いい感じにSNSで紹介してもらえば本が売れますので、出版社はその行動を狙って、投稿されやすいまとめを用意したりもしています。

「インプット/プロセシング/アウトプット」モデルで考えると、他人が用意したインプットをそのままアウトプットしていました。今から考えると知識の下痢です。

このサイクルを脱出したことが転機になります。


深い読書

キーワードをメモしたり、要約をSNSするだけで終わることが「浅瀬でぱちゃぱちゃ読書」というなら、「深い読書」とはどのようなものでしょう。

ここでの読書の深さとは、自分の状況に深く関連づけられた読書、という意味です。自分の行動を変えるように本を読むということです。

「インプット/プロセシング/アウトプット」モデルで考えると、インプットしたなら、行動に繋がるようにプロセシングをして、アウトプットとしてより効果的な行動を起こしていく、ということになります。浅瀬でぱちゃぱちゃ読書と深い読書の違いはプロセシング(知識の加工)の度合いです。

しかし、行動を変えるように本を読むというのは、実は難しい問題でした。プロセシングでは2つの問題を解く必要があったのです。

1.知識と、その知識が役立つ状況とのマッチング問題
2.機会と、ハンマークギのうずうず問題


知識と、その知識が役立つ状況とのマッチング問題

知識と役立ちのマッチングを、学校と現実の違いを考えてみましょう。

学校の知識は、いつ使うのかが学校によってデザインされている
学校では授業の後にテストが用意されています。進学のタイミングで受験があります。知識をいつ学び、いつ使うか(テストや受験)は学校によって提供されています。

生徒は知識をいつ使うのかをデザインする必要がありません。テストも受験も、学習期間に学んだことを使うことを想定しています。

現実では、知識はいつどのように使えばいいのかは自明ではない
現実では本から学んだことをすぐに使えることはなかなかありません。

その知識が状況に適したときに思いだして、その状況に合うように修正して用いなければなりません。本に書いてあることをそのまま使えることは限られているのです。「知識の使用に関する知識」が必要です。

知識の使用に関する知識(深い読書のプロセシング)
1.その知識が利用できる状況で、知識をタイミングよく思いだせるように、知識をどの状況で用いるのかを洗い出す
2.現実の状況と知識のギャップを認識する
3.現実で利用できるように知識と自分の行動を修正する
4.行動が効果的だったのかを評価し、必要ならば1に戻る

本を読むだけでなく、使えるようにするためのプロセシング(知識の加工)をすることで、利用機会や効果は飛躍的に増えることになります。

しかし、これだけでは不十分でした。次の問題も解く必要がありました。


機会と、ハンマークギのうずうず問題

機会はいつ巡ってくるのか
ところが「知識の使用に関する知識」では行動をデザインまではできても、実際に行動を起こすには知識が活用できるちょうどよい機会が必要です。ところがその機会はいつ巡ってくるのでしょう。

本を読んだり研修に参加したりして知識を得たとしましょう。職場に戻って試してみようと上司に提案しても「いまは忙しいので、もうすこしまって」といなされてしまうことが多々あります。

これは研修制度の根深い問題でもあります。研修で学んできたことを現場で使用できるように上司が関われるかで、研修内容の習得と満足度が大きく変化してしまうという問題です。研修で質の高い内容を学んだり、モチベーションが高まっていたとしても、職場でやる機会が無ければ、やる気の飼い殺しです。

このやる気の飼い殺しは企業の様々なところに存在します。やる気がめちゃくちゃ高まっているときに「やりたい」と提案してもすぐにやれることはそうそうありません。「機会があったらぜひやろう」と気分を持ち上げられたりはしますが、その後1年間おとさたなし。機会は巡りはしないのです。

ハンマークギのうずうず曲線
機会に加えて、もう一つ、重要な変数があります。本を読んだときには「あれをやってみたい!これをやってみたい!」と熱量が高まっていると思います。しかし、このやる気の賞味期限はいつまででしょう。運良く機会が巡ってくるまでに、このやる気が持つ確率はどれくらいでしょう?

何かを学習したときに、それをいつまで、どれくらい鮮明に覚えているかの時間変化を忘却曲線といいます。何かを学んでも、少しずつ忘れていくわけです。特徴は自分自身で自覚しやすい形式的な知識です。

自覚しにくい別の要素があります。それが機会と共に重要な要素です。本を読んだ直後は「あれをやってみたい!これをやってみたい!」とめまぐるしく思考します。ハンマーを持ったら全てがクギにみえるような状態です。学んだことを使ってみたくてうずうずしている期間です。

この期間は、本人は自覚にくい非認知的なものですが、この「うずうず」は気力と好奇心にあふれている状態で、知識を使ううえで重要なリソースとなります。

ところが、このうずうずした状態は急速に醒めていきます。人によっては一日か二日、よくて一週間ほどです。この機会を逃すと、徐々に白けていきます。我に返ってしまうのです。

つまり、人には「徐々に忘れていく形式的な知識の忘却曲線」と「急速に醒めていくうずうず曲線」があるというわけです。


※本来の忘却曲線は図のカーブではないが、分かりやすいように脚色している。


急速に醒めていくうずうず曲線と機会の関係
「急速に醒めていくうずうず曲線」と「機会」の関係を考えてみましょう。うずうずが醒める前に機会が巡ってくれば、気力があふれた状態で試行錯誤できるということです。難しいことでも忍耐強く学びつづけられ、習得が可能になる時期です。

しかし、問題は本を読んだ直後に機会が向こうから巡ってくることは、めったに無いという現実があります。私たちは機会が巡ってきたときには、白けたところからスタートしているという、うずうずの無駄使いをしていることになります。このうずうず期を踏まえて行動をデザインする必要があります。

うずうず曲線を考慮に入れた知識の使用に関する知識
「知識と、その知識が役立つ状況とのマッチング問題」では、知識を用いて行動するまでのプロセシングの過程を過ぎました。そこにうずうず期も加えましょう。

うずうず期には個人差があります。プロジェクトXの主人公のように、うずうずしたまま何年も機会を待てる人もいれば、1日2日で醒めてしまう人もいるでしょう。後者の人はどうすればいいでしょう。私の答えは明日にねじ込むです。

以下が、知識の使用に関する知識(深い読書のプロセシング)のうずうず期修正バージョンです。
1.その知識が利用できる状況で、知識をタイミングよく思いだせるように、知識をどの状況で用いるのかを洗い出す
2.現実の状況と知識のギャップを認識する
3.現実で利用できるように知識と自分の行動を修正する
[[3.5.明日、やる。なんとしてでも業務にねじ込む]]
4.行動が効果的だったのかを評価し、必要ならば1に戻る

多くの方に見ていただいたスライドに太い経験というものがあるのですが、太い経験をする人は、すぐに行動に移すという特徴があります。どんどん新しいことができるようになる人は、気合いを入れて半日で仕事をなんとか終わらせて、残りの時間でやってみるといったことをするわけです。


まとめ、うずうず期を逃すな!!

浅瀬でぱちゃぱちゃ読書と、深い読書の違いについて解説してきました。左から右に流すような「浅瀬でぱちゃぱちゃ読書」と、自分の状況に深く関連づける「深い読書」です。

前者から後者に移行するために、以下の2つのメカニズムの解明と問題を解き、知識の使用に関する知識(深い読書のプロセシング)を構築しました。
1.知識と、その知識が役立つ状況とのマッチング問題
2.機会と、ハンマークギのうずうず問題

さて、この記事を読んでうずうずした方もいらっしゃるかもしれません。では、このうずうずは何分くらい持続するでしょう。ブログから影響されたうずうずは5分、10分程度かもしれません。ぜひこの5分、10分のうすうずを大切にしてみてください。そして日々の様々なうずうずを大切にされてください。何もしなければ簡単に揮発していってしまいます。

ぜひ、ご自身のうずうずを大切にできるようにして、他の本から得たうずうずも大切にしてもらえるようになったらとおもいます。

※この記事は加筆修正した上で『プロダクトマネジメント大全中巻』への掲載を検討してます。

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