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懐中電灯から学ぶ、高い互換性が価値を生むプロダクト

3/16 23:36に福島県沖でマグニチュード7.3の大きな地震がありました。該当地域に住む友人は棚からものが全て落ちてきたといいます。また多くの地域で停電も発生しました。暗闇の中で棚から落ちてきたものが散乱している状況です。本来は安心の場である自宅が危ない環境になってしまっているということです。

こういった状況下では、スマホのLEDライトを使ってものを照らす方が多いでしょう。しかしスマホでは情報確認をしたり連絡をしたりと様々なことにも使いますので、一時的には役立っても何時間も使いつづけるには使い勝手が悪いです。

そこで発揮するのが懐中電灯です。最近は光源にLEDを利用したもの主流になり、光量も強く、長時間使えます。光に関しては不満がなくなりました。

ただ懐中電灯はめったに使うものではなく、いざ使おうと思ったら、電池が弱っていたり、腐食して使い物にならなくなっていることもあります。地震直後の物が散乱していて停電している状況では大変です。



プロダクトの互換性という軸

プロダクトには互換性という軸があります。互換性とは他のモノと取り替えがきくことです。

多くの懐中電灯では単一電池や、単三電池の中から1種類の形の電池しか使えません。ほかの形の電池があっても使えないのです。これは互換性が低いということです。

多くの懐中電灯はどれか一つに対応している
左から単1~4系

電池の互換性を高めた商品がパナソニックの『電池がどれでもライト』です。単1から4系までどの電池でも使えます。

パナソニック LED懐中電灯 『電池がどれでもライト』 ホワイト BF-BM10-W

家の中では様々なところで電池を使っています。なので、いざとなったら取り出して電池として用いることができるわけです。単1形ならガスコンロ、単3形は各種リモコン、単4形は時計などです。

また電池の種類を揃える必要もありません。よく複数本の電池を使うときはアルカリやマンガンなどの種類を揃えなければならない制約があります。この懐中電灯では1本の電池をスイッチングして使う方法のため、電池の形も種類も気にする必要が無いのです。非常に互換性が高いと言えます。

この『電池がどれでもライト』は大きめの地震が起きると、必ず売り切れになる災害定番商品になっています。


家の中ではほとんどが単3形と単4形が占めるところから、その二種に限定した『電池がどっちかライト』も発売されました。コンパクトで缶コーヒーほどの大きさです。




互換性という差別化

多くの懐中電灯が特定の形と種類の電池しか使えませんでしたが、『電池がどれでもライト』では、どんな形でも、どんな発電方法でも使えるという互換性を高めることでアウトカムを生み出すことができました。

一方、電池を一本のみで駆動するため、光量が少ないという欠点もあります。光量が必要な場面では不適切です。しかし停電状況下では長時間の光源確保という点で光量の小ささはマイナスは少ないでしょう。

これをマッピングしてみましょう。軸は互換性と性能です。

左下 昔ながらの電球型の懐中電灯です。指定された形かつ同じ発電方式の電池が4本必要です。ありふれたコモディティで、いまさら買われにくいプロダクトです。

右下 高輝度の懐中電灯は光量の性能は高いですが、指定された形かつ同じ発電方式の電池が4本必要だったりします。競争も激しく、選ばれる確率はなかなか少ないです。性能をさらに伸ばすために18650電池というコンビニやスーパーでは手に入らない電池が用いられていることもあります。

左上 輝度は低いけれども電池がどれでも使えるというのは競合が少なく選ばれやすいポジションです。

懐中電灯では、どれだけ光量を高めることができるかという高輝度競争が起こっていました。ところが『電池がどれでもライト』は光量は低くても互換性という軸によって、地震が起これば売り切れるというポジションを築きました。

地震や停電などの災害状況では不安な状況が続きます。顧客の立場でこのような状況を想像すると「めちゃくちゃ明るい」よりも「どんな電池でも使えるし、組み合わせ自由」のほうが安心に繋がるでしょう。不安定な状況下では互換性は効きます。


プロダクトの互換性を高めて差別化を実現できないか

業界は特定の指標で競争することがあります。懐中電灯であればルーメンといった光量や輝度です。競争が激しいシグナルは製品ラインナップがたくさんあって顧客が選ぶときに迷っている場合です。

このような状況の時、これまで競争してきた性能ではなく、その性能を落としてでも顧客の悩みを解消できるような変数がないか検討してみましょう。その一つが今回紹介した互換性です。ぜひ仮説を描いてみてください。


今回紹介した記事は『プロダクトマネジメント大全 下巻』に収録予定です。

今回のような話が盛りだくさんの『プロダクトマネジメント大全 上巻』は、すでにBOOTHで発売済みですので興味があったら読んでみてください。


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