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忙中閑あり暑中涼あり〜はくちょう座χ星ほか

いろいろ仕事は立て込んでおりますが, 暑さと晴れた空と風速1〜2m/sの予報に釣られて, とりあえず三瓶高原へ… 夕闇が近づく頃にいつもの三瓶温泉(赤土色の鉄分と塩分豊富な温泉です)でひと風呂浴びてから, 撮影場所の北の原駐車場へ向かいます.

はくちょう座χ(カイ)星

「恒星」も常に変わらないわけではなく明るさが変わる変光星というのがありまして, 中でもドラマチックなのは「くじら座ミラ」に代表される「ミラ型変光星」. 一生の終わりに近づいた星が膨張と収縮を繰り返すことによってサイズと表面温度が変わり, 明るさが大きく変化するというものです.

はくちょう座χ星もそのひとつで, 周期408日で14等から最大3等まで, 実に20000倍以上も明るさが変化します(Wikipedia). 暗いときは肉眼では全く見えないばかりか, 写真にとっても写るか写らないかという暗さ, 明るくなると3等であれば十分肉眼で見えるはず. ただ, 近年はそこまで明るくはないらしく, 5〜4等というところでしょうか?

今年は7月20日ごろ極大とのことで, 今はいちばん明るい時期です. この辺りを105mmレンズで撮ってみました. 105mmでAPS-Cサイズのセンサだと, 白鳥の首の辺りが入ります. こんな感じ↓

2024年7月28日のはくちょう座χ星付近(白鳥の首の辺りです, 右上が頭のアルビレオ)
Ai Nikkor 105mmF2.5 @F4, Kenkoプロソフトンクリアフィルタ, Fujifilm X-E2 ISO1600 20x1min (dark 10, bias 10, flat 20). AstroPixelProcessorでスタック, RawTherapee/Gimpで調整.

右上の明るいのが白鳥の頭にある3等星のアルビレオ. 美しい2重星としてよく知られています. 左下が4等星のη(イータ)星. χ星はその間にあって, 5.0等の17番星と並んでいます. 今はこれと同じか少し明るいくらいなので, 今回の極大は5等に近い4等台という感じなのでしょう. 暗いときに撮った写真がないか探してみたら, ありました. こんな感じ↓

2020年8月のはくちょう座χ星付近. この時はとても小さく赤っぽく写っています.

ちなみに, はくちょう座の全景はこんな感じです(Stellariumの表示). 上の写真に合わせて左を北にしています.

はくちょう座 (Stellariumの表示)

はくちょう座の散光星雲たち

はくちょう座にはしっぽの1等星デネブから十字の交点にあるγ(ガンマ)星サドルの辺りに水素が放つ赤い光(Hα線)の散光星雲が豊富です. 次に生まれる星の材料になるガスの雲です. 105mmレンズを出したついでにこの辺りも撮ってみました. ↓

はくちょう座のデネブ〜γ星付近の星雲たち
Ai Nikkor 105mmF2.5 @F4, Sightron QBPフィルタ, Fujifilm X-E2 ISO1600 20x1min. AstroPixelProcessorでスタック/赤ハロ除去, RawTherapee/Gimpで調整.

デネブの近くにある北アメリカ星雲(NGC7000)からγ星付近の星雲までを入れるために画角の傾きをいろいろ試してみましたが, 結果的にこれはあまりベストじゃないかも. まぁいろいろ入ってくれたので良しとしましょう.

いちばん明るい星がデネブで, 右の方にある2番目に明るいのがγ星. 北アメリカ星雲は一目瞭然ですね. γ星の左下にバタフライ星雲(チョウチョの形), 右端には小さな円弧のクレセント(三日月)星雲が見えます. 他にもいくつか特徴的な形から名前がつけられているものがあります. 真ん中の辺りが暗いのは, 天の川の中の暗黒帯で, 光っていないガスやチリが多い所です.

この写真, 星の周りに赤い縁取り(赤ハロ)がついてるのが見えますが, これはフォーカスが甘かったのか? AstroPixelProcessorに"star reducer"ツールというのがあって, ハロを除去できるらしいのでそれを使って少しマシになっています.

土星

この日は風が弱い予報だったので, でかくて風の影響を受けやすい(けど明るくて星雲などがよく写る)R200SS改(20cm反射望遠鏡)を持ち出していました. が, 現地についてみると風がビュンビュン吹いていて, 撃沈.

長時間露出はあきらめ, 気を取り直して, 東の空に昇ってきた土星を見てみました. 風にもかかわらずシーイングは上々で, 向きが真横に近くなった細い輪っかもクッキリと見えました. 風がなければもう少しクッキリ撮れたかも.

土星(2024/7/29)
R200SS改, アイピース投影(Fujiyama OR9mm), IR/UVカットフィルタ, ASI533MC,  ASICapでキャプチャ (gain 420, ss 60ms), 4000コマの25%をAutoStakkert!4でスタック(drizzle 1.5), AstroSurfaceでwavelet, Gimpで調整.

アンタレスBは撮れずTT

実はもう一つ, 20cm望遠鏡の高倍率で見ようとしていたのが, さそり座の1等星アンタレスの伴星(アンタレスB)です. 高倍率用の3〜8mmズームアイピース(SV215)で3mm(約270x)で見ると, アンタレスの西側にチラチラと緑っぽく見える光点が見えました. ちゃんと見たのは初めてかも. こんな感じ↓

20cm 270xくらいで見た感じ. でかく描いてます.

アンタレスは1等, その伴星(アンタレスB)は5等級で主星からの離隔が3"弱 (Wikipedia). 難度の高い2重星としてはシリウスがありますが, アンタレスはシリウスと逆のアプローチで撮るべきということに気づきました.

シリウスは主星が-1.5等で伴星が8等, 距離はここ数年は一番離れていて10"くらいあります. 明るさの差が大きいので両方を撮るのが難しく, 主星がハレーションで大きくなって伴星を呑み込んでしまう直前まで露出を上げると伴星も写るという感じで, 離隔がわりと大きいのに助けられているわけです. アンタレスの場合は, 明るさの差はそこまで大きくないが距離が3"もないので, 主星像が肥大するとすぐに伴星は呑み込まれてしまいます. なのでシリウスの場合とは逆に主星像をコンパクトに撮るべし, ということになります.

結果的にこの日は風で鏡筒が揺れるし, 最初に試したバーローレンズによる拡大では拡大率が小さくて伴星が分離できないことが分かってアイピース投影法に変えるとか, 格闘している内にアンタレスの高度が下がってきて敗退となりましたTT. 次回にリベンジを…

とにかく, 眼視ではっきり見られたのは収穫.

【了】

追記: 後日, リベンジできました↓

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