見出し画像

【新作映画レビュー】『ドリームプラン』 2人の娘をスターテニスプレイヤーに育て上げた父親の奇想天外な計画!

©2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

テニスの世界チャンピオンに輝いたビーナスとセリーナのウィリアムズ姉妹を「世界最強のテニスプレイヤー」と言われるまでに育て上げた父親の実話を映画化した『ドリームプラン』(2月23日公開)。テニス未経験ながら独自の膨大で綿密な計画を立てて夢を実現させた父親をウィル・スミスが熱演。この感動作のあらすじと見どころをご紹介しよう!

『ドリームプラン』あらすじ(ネタバレなし)

ギャングがはびこり、アメリカで最も犯罪率が高い都市の一つと言われるカリフォルニア州コンプトン。リチャード・ウィリアムズ(スミス)は、優勝したテニスプレイヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿をテレビで見て、自分の子どもをテニスプレイヤーに育てることを決意する。

リチャードはテニスの経験がなかったが、独学でテニスの教育法を研究して、何と78ページにも及ぶ計画書を作成した。生まれてきた5人の娘たちのうちの下の2人、四女のビーナス(サナイヤ・シドニー)と五女セリーナ(デミ・シングルトン)を一流のテニス選手に育て上げるため、彼は常識破りの計画を実行に移す。それは、彼が巻き込んだ様々なテニス関係者たちを大いに戸惑わせるものだった。妻のオーラセン(アーンジャニュー・エリス)も、夫のそんなやり方に戸惑いを隠せない。

リチャードの無謀とも言える計画と強引なやり方は、当然ながら周囲からの批判や数多くのトラブルを生み出すが、彼は意に介さずそれらに立ち向かっていく。そんな父の熱意を受けて、姉妹もテニスの才能を徐々に開花させていくが…。

スミスの「感動の実話路線」の新たな傑作

ヒップホップ・ミュージシャンとしてキャリアをスタートさせ、たびたびグラミー賞も獲得しているスミス。俳優としても活動を始め、特に『インデペンデンス・デイ』(1996)以降は出演作が軒並み大ヒットする「ドル箱スター」となった。しかも、『ALI アリ』(2001)のモハメド・アリ役でアカデミーとゴールデングローブの主演男優賞にノミネートされて以降は、演技派俳優としての実力を発揮するようになった。以後は『7つの贈り物』(2008)などのヒューマンドラマの主演が増えていkkたが、特に『幸せのちから』(2006)や『コンカッション』(2015)といった実話に基づく作品が占める割合が大きくなっていく。

本作もその一本と言えそうだ。もはやテニス界の「現役のレジェンド」と言ってもいいほどのウィリアムズ姉妹を今日の地位に押し上げた父・リチャード。自身がテニスをやっていたわけでもないのに、いかにして娘たちを育て上げたのか。その驚くべき方法の描写の面白さ。そして、どんな困難にもめげずに自分の意志を貫徹して夢を実現させる展開は、まさにアメリカン・ドリームそのもの。彼を演じたスミスの、執念すら感じさせる熱演は圧倒的な迫力に満ちていて、アカデミー主演男優賞にノミネートされているのも頷ける。

もちろん、それは姉妹本人たちの壮絶な努力があったからこそ。その意味では、姉妹たち自身のアメリカン・ドリームの物語であり、リチャードと姉妹の父娘の物語でもあり、彼ら一家の家族のドラマでもある。そんな、本作の世界観を見事に表現したエンディング・テーマ「Be Alive」は、姉妹とも交流があると言うビヨンセが歌っている。

このように、様々な要素が融合した作りなので、親・子、男性・女性など、それぞれの立場で感動できる部分が兼ね備わっているのだ。つまり、幅広い層にアピールできる作品に仕上がっている、ということでもあるのだ。そのためには、主演のスミスだけでなく、共演者たちの好演と、それらの演技のバランスの良いアンサンブルが必要になってくるわけだが、その点でも申し分ない。

このように、巧みな作りと俳優たちの素晴らしい演技が功を奏したこの作品、アカデミー賞ではスミスの主演男優賞の他にも、作品、脚本、助演女優(エリス)、歌曲、編集の計6部門にノミネートされている。

驚きと感動、そしてよりよい子育てのヒントに満ちた実話を実直なタッチで映画化し、スミスをはじめ俳優陣の堅実な好演も堪能できる、人間ドラマの傑作!

<『ドリームプラン』公式サイト>

<『ドリームプラン』予告編>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?