あっそ。

※GN放送局の番組、『ベーコンレタス』内で放送されたボイスドラマの台本です。


   2階の部屋から校舎外でたき火をしている音が聞こえる。
ガンバ「コヤマ、(ワンブレスで一気に)部の予算割りで抗議がしたい校舎外(そと)のたき火の音をBGMに」
コヤマ「(すかさず)無理っすね。あと外でたき火なんかしてんなら、ガンバ会長が止めにいって——」
ガンバ「(コヤマの話を聞かずに)e-sports部の予算が存続も危ういレベルだ。対象のゲームをF2Pのものにしても」
コヤマ「普通にソシャゲでいいでしょ、そんなオシャレな言い方しなくても」
ガンバ「話を続ける。そういうF2Pのものにしても、この学校の回線だとプレイには耐えられないのとウイルスが心配だ……」
   指をとんとんと2回机の上の紙にたたくガンバ
ガンバ「これだとその費用すら出せない」
コヤマ「(面倒くさそうに)学校はゲームをするところではありません。もう高校生なんだから言わなくても分かるっしょ?」
ガンバ「ゲームでもスポーツだ。サッカーラグビーバスケット、強化部の卓球と同じだ変わらない」
コヤマ「就職面接でサッカーとか卓球とかなら健康的で不屈さをアピールできます。ゲームしてましたなんていってアピールできるものは何ですか」
ガンバ「集中力とストイックさ、勝負強さだ。プロの世界は1フレーム、ほんの些細な動きと気遣いが天国と地獄を分ける」
   このあたりでたき火の音が消える。
コヤマ「どれだけ自分がそう思っていても、聞いてる側はただ遊んでいるようにしか感じないわけです」
ガンバ「そいつはどうかな」
コヤマ「かけてもいいっすよ? ガンバさんがシェイクしたブルームーンのノンアルアレンジ、あとプッシーにノンアルのレッドアイ」
ガンバ「3つか、よろしい。こっちはそうだな……サマー・デ・ライト。ドリンクバーになったら何度でもやり直しだ」
コヤマ「受けて立つっす」
ガンバ「材料自腹で取り寄せも自力だ。せいぜい晩飯食えるぐらいは腹のスペースくれよ?」
コヤマ「こっちも下痢止め用意しときますか」
ガンバ「……何の話してたっけ」
コヤマ「……なんでしたっけ」
ガンバ「まあいっか。どうせ適当にまとめて教師に出せばざっと見て終わりだろ」
コヤマ「そっすね。生徒会なんて所詮形だけっすよね。帰りましょっか」
ガンバ「……お、いつの間にかたき火が消えてる」

コヤマ「先生がたおつかれさんっしたー。あ、やべ。体育倉庫あけっぱだった」
ガンバ「仕方ないヤツだ、俺が閉めに行く」
コヤマ「やめといた方がいっすよぉ~? この時間で体育倉庫っていったら閉じ込められて襲われるのが定番っすよ。ガンバ会長ひょろいしコロっとやられちゃうから俺が行ってきますよー」
ガンバ「おやおや? 購買のプリンパン買いに人波突っ込んだら吹っ飛ばされてしょぼくれながらゼリー食ってたコヤマくんはわざわざ襲いかかられにいくのか?」
コヤマ「俺一応運動部っすから」
ガンバ「集団でかかられたら関係ないだろう?」
コヤマ「それこそアンタじゃ太刀打ちできないっしょ」
ガンバ「どうかな? 俺はそもそも人目につかないルートを知り尽くしているからすぐにそんなのばれるぞ?」
コヤマ「あれぇ? 先々月授業サボったとき速攻隠れ場所ばれて先公に説教されてたのどこの誰でしたっけ?」
ガンバ「いってなかったがサボってたわけじゃなく、学校の備品運びに手こずって授業時間に食い込んだところ的外れに説教されたんだ」
コヤマ「またまたぁ~。中学の頃にも同じような話聞いた——」
   カラスが一鳴き。
コヤマ「……二人で行きましょっか」
ガンバ「……だな」

   コンロに火をつける。
ガンバ「おい今日の晩飯当番お前だろう」
コヤマ「そもそも当番は日割りじゃなくて週替わりでしょうに。月またいでもまだ金曜なんだからガンバさん当番でしょ」
ガンバ「半年ごとに交代する曜日を変えるって最初にいったはずだぞ」
コヤマ「当番表に書いてないので知りません」
ガンバ「だが決まり事だ」
コヤマ「紙には書いてません」
ガンバ「お前がやれ」
コヤマ「そっちがやってください」
ガンバ「お前だ」
コヤマ「そっちです」
ガンバ「……すでに二人で料理してんのに、何言ってんだろうな俺たち」
コヤマ「……そっすね」
ガンバ「……あ、おい焦がしてる!」
コヤマ「うわやっべ! あー……ギリセーフ」
ガンバ「なぁコヤマよ」
コヤマ「セーフですよー……え? はい?」
ガンバ「……なんでもない」
コヤマ「……あっそ」

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