ChatGPTは独創的なアイデアを提案できるのか?
私はPR担当として、独創的なアイデアを求められることが多く、これまでもコンセプトメイク、キャッチコピーの考案、文章改善など、ChatGPTを日々の業務で活用すべく試してきました。
文章改善では一定の成果が得られましたが、独創的なアイデアを求めた場合は、あまり良い結果は得られていません。ChatGPTの可能性の高い単語をつなげていく仕組み上、ありふれた結果になりやすい。むずいのよ。
最近試しているのは、シンプルな問いを組み合わせて段階的に思考させていくことで、独創的なアイデアを引き出しやすくなることがわかってきました。ワークショップのような形式ですね。
そこで、以前から興味を持っていた「SFプロトタイピング」のワークショップをGPT-4と試し、独創的なアイデアを引き出す実験を行ってみることにしました。
SFプロトタイピングとは?
GPT-4とワークショップを実際にやってみた
今回試すワークショップは『SFプロトタイピング:SFからイノベーションを生み出す新戦略』の中で紹介されていた形式を参考にしています。こちらの書籍はSFプロトタイピングに興味をもった方はおすすめです。
ワークショップのプロセス
このプロセスをGPT-4と対話しながら進めていこうという試みです。
受講したことはないため、実際のワークショップとは異なる所もあると思いますが、今回は実験のためご了承ください。
以降は私とGPT-4の対話形式で進行していきます。GPT-4とのやり取りは引用形式で示していきます。入力:が私の指示、出力:がGPT-4の回答になります。それでははじめていきます。
1.自己紹介とテーマ出し
まずは自己紹介とテーマ出しをします。今回選んだテーマはもともと興味を持っている農業とロボットにしました。
2.ガジェット生成
気になった単語を元にした造語とその説明の作成(10個)
次はガジェット生成です。いきなりガジェット生成というのが面白いプロセスです。ChatGPTは文脈を引き継ぐため、農業とロボット関連のガジェットを生成してくれることを期待します。
期待通りですが、どれもありがちで独創性が足りませんね。あえて農業と関係ないものを組み合わせてみたら面白そうなので、追加で指示を出してみます。また、ガジェット以外のアイデアはいらないのでその点も指摘します。
おお!なかなか奇抜なアイデアがでてきました。
これからの展開に期待が持てます。個人的にエアロゲルプランターブーツとかバカっぽくて好きです。足元で植物植えるってどういう発想なのw
こうやって覚えさせたらいつでも参照してくれると思っていたのですが、わりと忘れてしまうので、適宜、入力時に過去の情報を含める必要があることをここでお伝えしておきます。記憶力なんとかしてほしい
3. キャラクター内面作成
自分や誰かの悩み/こだわりの話を行い、そこから少し変わった悩み/こだわりを持つ人物を5人作り出す
次はキャラクターを作成してもらいます。一旦ストレートに依頼してみます。どんなキャラクターが出てくるか
いいですね。文句ないです。
ユニークなガジェットの文脈を引き継いでるだけあってどのキャラクターも個性豊かで、抱えている課題もユニークです。この5名がどんなストーリーを紡いでいくのか今からワクワクします。
4. 未来社会像構築
2のガジェットから、3の悩みを解決しうるものとして、意外性が高いものを2つ選ぶ。作成したテーマの造語が30年後に現れて広まるのに必要な技術的条件、社会的条件をそれぞれ2つずつ考え、どちらのガジェットのある世界がよりユニークか選択する
このプロセスは、ガジェットを絞り込んで想像する未来の方向性を決める大事なプロセスになります。ちょっと複雑なのでプロセスを分解して進めていきます。まずはキャラクターの悩みを解決しうるものとして意外性が高いものを2つ選びます。
「意外性が高いものを2つ選んでください。」という依頼をちゃんとこなしてくれるのでしょうか? 意外性が高い=可能性が薄いものと定義してみました。
無数の実験を繰り返し、家族や友人とのつながりを犠牲にしてしまっているマイケルの悩みを、足元で栽培するブーツで解決するとはなかなかユニークな提案です。困惑する家族の顔が目に浮かびます 笑
一方、エマは昆虫の栄養価が向上したとしても昆虫食が人々に受け入れられるとは理由にはならないと思ったため、再検討してもらいます。
なるほどそうきましたか。面白いので採用することにしました。
次はガジェットが30年後に現れて広まるのに必要な技術的条件、社会的条件をそれぞれ2つずつ考えてもらいます。専門家に憑依してもらいました。
なかなか良さそうです。まだまだ長いので先に進みましょう。次は、どちらのガジェットのある世界がよりユニークか選択します。どちらを選ぶのでしょうか。
個人的にはエアロゲルプランターブーツのある世界も見てみたかったのですが、今回はGPT-4におまかせします。反重力技術なんてものが実現しているなんてインターステラーの世界線に来てしまいました。ユリイカ!
5. 未来の業界像の構築
そのガジェットの存在が前提になっている30年後の社会において、ガジェットが悪い影響を及ぼしている業界を3つ、良い影響を及ぼしている業界を2つ考える
これからはグラビトロンプランターのある世界を膨らましていきます。さっそく聞いてみましょう。
ストレートに考えたらそんな所でしょうか。バタフライエフェクト的な回答もらえたら面白かったのですが、それは求めすぎまかもしれません。
6.キャラクター職業作成
項目5の業界に項目3のキャラクターをあてはめ、未来社会の負け組を3人、勝ち組を2人選ぶ。それぞれの職業を考え、全員と関わりそうな人物を主人公に選ぶ
まずは未来社会の勝ち組と負け組を選んでもらいます。
ジョージの悩みを解決するガジェットだったはずなのに負け組にされてしまうジョージが不憫でなりません。それでは次に物語の主人公を決めましょう。
植物の成長を促進する音楽を作曲するリナが主人公になりました。持続可能な農業の未来を描くSFプロトタイピングの主人公が音楽家というのは面白い設定です。
7. プロット前半作成
プロットの前半部を考える。主人公の行動や感情の動きを中心に、他のキャラクターとの関係がどのように変化するかを考察する
いよいよ、プロットの作成に入っていきます。SF作家になったつもりで考えてもらいしょう。まずは面白いSF小説を書くためのポイントを上げてもらいます。
なるほど、勉強になりますね。こうやって聞くことで、ポイントも踏まえてプロットを書いてくれるはずです。
このあと、何回か書いてもらいましたが、なかなか面白いプロットが出てこなかったので、ちょっと制約条件も加えてみました。
リナとサムの深まった関係性は今後どのように物語に影響していくのか?
謎のサブリミナル・メッセージは誰がなんのために行ったのか?
まだ登場していない昆虫食のエマはどう登場してくるのか?
なかなか気になる展開です。
物語の独創性は一定評価できますが、勝ち組や負け組といった設定はあまり反映できていません。どうやって反映してもらえばいいのだろう。
今回はこのまま進みます。
8. 研究開発テーマの作成
ここで研究開発テーマを作成し、その後前半部分を書き直すプロセスになるのですが、これを挟むとChatGPTがうまく前半部分を書き直してくれないことが多かったため、今回は省くことにしました。
このまま後半のプロットに進みます。
9. プロット後半作成
いよいよプロットの後半部分を書いてもらいます。どのような物語の結末が待っているのか? そのまま指示すると前半の内容を考慮しなかったりするので、制約条件として与えてみました。
いかがでしたでしょうか。
無事一件落着なストーリーになったかと思います。
最終的に「グラビトロンプランターを使った緑化プロジェクトと昆虫食の取り組みを組み合わせた謎のプロジェクトまで生み出せたのは成功だったのではないかと思います。
まとめ:ChatGPTは独創的なアイデアを生み出せたのか?
最後に、グラビトロンプランターを使った緑化プロジェクトと昆虫食の取り組みを組み合わせたプロジェクトについて聞いてみます。
その前にグラビトロンプランターについておさらいです。
浮島で植物を育てているようなイメージですね。ここに昆虫食を取り入れるというプロジェクトです。
今回、SFプロトタイピングワークショップでたどり着いた未来の持続可能な農業とは、反重力によって浮いている浮島で、植物と食用昆虫がたくさん共生している世界観でした。
なかなかエッジの効いた未来予測ができあがったものです。始める前はここまでユニークな未来を描けるとは思っていませんでした。
今回は、SFプロトタイピングで未来を創造するという複雑なタスクを、シンプルなタスクに分解して段階的に答えていくことで、独創的なアイデアにたどり着けるのではないか仮説を実験してみました。
段階的に答えていくことで、独創的なアイデアを生み出すことができるのでは?という仮説はある程度の正しさを感じました。今後も様々なトライをして、PR業務にAIを活用していこうと思います。
みなさんもぜひ試してみてください。