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オフグリッドの実験的生活 | #3 水の循環


水が生み出す生態系


奪わずに暮らすことができる


わたしたち生物の命に直接関わる水の利活用について。水をどのようにつかい、どのように循環させるかが今回のテーマです。

僕たちは暮らしている限り、できる限り環境を汚さな(でも少し汚す)ということしかできないと無意識のうちに思い込んでいました。暮らすことで少なからず、私達が生きることで他の生き物たちの住処を奪ったり、環境を負の方向へ変えてしまう。そんなふうに思っていました。

ですが、水の事を考え学んでいるうちに私達の生活は工夫することで環境を再生させて行くこともできるのだということを知りました。

生き物の視点から見ると

岩座神棚田の家では、生活の雑排水(風呂や洗面・台所など。トイレはコンポストなので土の回で記載します)を庭のバイオジオフィルターで浄化して、畑のビオトープへつなげていく仕組みを作っています。バイオジオフィルターは微生物や植物の力で水の中にある有機物や養分を浄化する手作りの装置です。

バイオジオフィルターの面白い点は、人間にとっては「汚れ」であるはずのものが、微生物や植物たちの視点から見ると「栄養分」である。という点です。さらにバイオジオフィルターの先にビオトープを作ればそこが生物の命の拠り所になります。カエル、ヤゴ、ゲンゴロウ、それらを捕食するヘビ、そして鳥。庭に小さな生態系をつくることができるのです。

僕はつくりながらこの生き物視点の考え方と、生態系を作れるということを実感して、本当に感動しました。特に家をつくるプロセスの中で、環境負荷の大きさをまざまざと体感している最中だったため、暮らすことで小さくとも環境をポジティブなサイクルに変えることが出来る可能性は僕にとってはここで暮らしても良いんだと思えるほど救いになりました。

今回、水のシステムの中で紹介する水の浄化装置のバイオジオフィルターや傾斜土槽法については、パーマカルチャーデザイナーの四井真治さんの著書
「地球のくらしの絵本
」をもとにして制作しています。暮らす人数と大きさの考え方や、仕組みの断面図などは四井さんが実際の生活の中で考え、改良した方法であるため、ここでは紹介しません。興味のある方はぜひ本を購入してください。

ちなみに、この本は僕はこのような生活を選び、家をつくるにあたって一番参考にした本だったと思います。今回の水の話だけでなく、コンポストや火の利用なども見ていて楽しく約に立ちます。子どもといっしょに一つづつ作って行くのも楽しいと思います。いろいろな人にオススメしている本当に素晴らしい本なのでぜひ手にとって見てください。もしかしたら地域の図書館なんかにもあるかもしれません。

さて、水のテーマに戻ります。この記事では、僕の家の水のシステム構成の概要について、そして後半の有料にさせていただく部分では、実際にバイオジオフィルターを設置した際に気がついた、気をつけるべき点。特に家の立地や設計との絡みで、家を設計する前に知っておいた方が良い点。について記載したいと思います。

やはり実際にバイオジオフィルターをつくる、といってもそれを建築家も、工務店ももちろん皆初めてなので、わからないことばかりです。手探りで進めるなかで、僕は「たまたま上手くいった」部分と、「設計の段階でこうしておけばよかった…」と後悔した点もありました。


バイオジオフィルター(制作初期)


それともう一つ、雑排水の自家処理って合法なのか?という点についても僕の調べた範囲での解釈を記載しておきます。これについては責任はおえませんが、現実的に実行するにあたっては気になる部分だと思います。事前に調べ上げていたので県民局にもきちっと説明し確認を取れましたし、地域・近隣の住民の方にも説明し納得してもらえています。

上水について

はじめに上水つまり飲み水にできる水の確保についてですが、実は上水の確保(自給)は早々に諦めてしまいました。立地の条件などを加味すると、井戸を掘るか、雨水を利用するというどちらかの選択肢がありました。

しかしどちらも年間を通して安心して飲める水を確保することが難しそうだった為諦めることになりました。諦める理由で一番引っかかったのが、農薬の影響です。この地域は小さな棚田の集落なので、どこの家庭も田んぼでお米を作っていますが、農薬は当然使っています。

僕は自分の田んぼや畑は100%有機で行いますがこれはやはり手間がかかります。少ない人口で、今、棚田全体をできる限り保持していく事を考えると、実際には手間の少ない慣行農法(農薬を利用する)での栽培は避けられない状況だと思っています。最近ではドローンでの農薬散布もあります。

そのような状況だと、やはり井戸水であっても屋根の樋から採集する雨水であっても、季節によっては気になってしまいます。命に関わる上水の確保なので、ここは建築にあたって、一番はじめに諦めた点でした。

ちなみに井戸は見積もりをしたところ50万弱くらいで15mくらいの井戸は掘れるようでした。が、かなり傾斜が強い地形であることでこれも水が出るかどうかはわからない(多分でると思うけど)といった感じでした。


水の流れ・システムの概要

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