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ブリュノ・クレメール主演 メグレ警視5「メグレと首なし死体 Maigret et le corps sans tête」(1992)紹介と感想

原作:ジョルジュ・シムノン『メグレと首なし死体』(1955)
脚本:セルジュ・ルロワ
監督:セルジュ・ルロワ
時間:90分

あらすじ

サン・マルタン運河からあがったバラバラ死体。
メグレはラポワントと共に捜査を開始するが、死体の身元は分からず。
電話をするために立ち寄った現場近くのカフェへ再び立ち寄ったメグレは、女主人のアリーヌ・カラへ目を付ける。
旅行に行ったまま帰ってこない夫、反発心の強い若者に、実直そうな男。彼女の周りにいる男たちと彼女の関係は……。
メグレは、自分の感覚を頼りに捜査を進めていく。


視聴記録

前半は原作に沿った物語が展開されるため、物語上の弱点も原作と同じです。
アリーヌとの出会いも、自然になるように改変を入れるのではなく、開始3分で偶然の出会いを印象付ける方向で描かれています。

しかし、ドラマでは中盤以降から原作にないシーンの追加や、情報の出し方を変える事によって、原作よりも納得感のあるドラマとなっていました。
物語の中盤で動機を明かし、アリーヌやパップも拘留することで、二人の交流も原作より直接的に情に訴えるような描き方になっています。

アリーヌは、自分がイメージしていたよりも美人な感じでしたが、性格的な雰囲気は良く出ていました。
また、途中で証言をする駅の預り所の職員が、原作以上に人間臭くて笑いました。

原作でも出番の多いコメリオが出る珍しい話しでもあります。
メグレがコメリオに相談を行い、そのままの流れでコメリオがアリーヌの尋問を始めるシーンは好きな場面でした。

やはり捜査の端緒があまりにも偶然すぎることが気になるのは変わりませんが、その他の面を強化する方向に進んでいるため、全体的な満足度は原作を読んだ時より高かったです。

原作は、ドラマよりアリーヌの掘り下げに深みがあり、その主題のためだけに最後まで進む構成も悪くありませんが、いかんせん全体のバランスの悪さが目立つのがネックでした。
その点、警察ドラマとしての面白さを強めたドラマ版の方が、より多くの人が楽しめるものとなっていると思います。


キャスト

ジュール・メグレ/ブリュノ・クレメール
   ラポワント/フィリップ・ポレ(4、5)
     モリス/ピエール・バイヨ(1、5、9、21、23)

 アリーヌ・カラス/オーロール・クレマン
ディウドネ・パップ/パトリック・フロエルスハイム
   アントワーヌ/ニコラ・トロン
   コメリオ判事/フランソワ=レジス・マルシャソン
    ポール医師/ミシェル・デュッサン


同一原作の映像化

ルパート・デイヴィス主演シリーズ(英)
 シリーズ2 第2話「The Simple Case」(1961) ※日本未紹介

ジャン・リシャール主演シリーズ(仏)
 第24話「Maigret et le corps sans tête」(1974) ※日本未紹介

愛川欽也主演 東京メグレ警視シリーズ(日)
 第10話「警視と首無し死体」(1978) ※未見


ブリュノ・クレメール主演シリーズ視聴記録

☆がお気に入り、〇がお気に入りには後一歩だけど楽しめた作品、△が思うところはあるけどドラマとしては悪くない作品です。
全て現時点での評価になります。

〇01「メグレと消えた死体」(1991)
 04「モンマルトルのメグレ」(1992)
☆05「メグレと首なし死体」(1992)
☆06「メグレと深夜の十字路」(1992)
☆07「ホテル・マジェスティックの地下室」(1993)
☆08「メグレたてつく」(1993)
☆11「メグレと宝石泥棒」(1994)
☆16「メグレと老婦人」(1995)
☆19「サン・フィアクル殺人事件」(1995)
☆21「男の首」(1995)
☆23「パリ連続殺人事件」(1996)
☆25「聖歌隊少年の証言」(1997)
△31「ジュモン51分の停車」(1999)
△32「メグレは二つに見える」(2000)
〇36「開いた窓」(2001)
△37「メグレとワイン商」(2002)
 38「メグレと政府高官」(2002)
〇40「メグレと奇妙な女中の謎」(2002)
☆41「メグレと田舎教師」(2002)


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