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ブリュノ・クレメール主演 メグレ警視 第15話『メグレ間違う』(1994)紹介と感想

原作:ジョルジュ・シムノン『メグレ間違う』(1953)
原題:Maigret se trompe
脚本:ドミニク・ルレ
監督:ジョイス・ブニュエル
時間:84分


あらすじ

ルルはご機嫌に生を満喫していた。しかし、その日のうちに殺されてしまった。
捜査を始めたメグレは、グーアン教授がルルを囲っていたことを知る。
しかし、中々教授本人へ会う気持ちにならず、周囲の女性達へ聞き込みを続けるメグレ。
捜査の中でルルが妊娠していたことを知ったメグレは、子どもの存在が事件の鍵を握ると考えていく……。


紹介と感想

原作では話の中でしか生きている姿を見ることができなかったルイーズの姿から始まるドラマになります。

前半、捜査の様子をテンポよく描写し、早い段階で教授周辺へ目星をつけていきます。
原作の筋に沿って進む物語ですが、前半から証言に回る順番や登場人物の行動の変更があり、中盤以降からはドラマオリジナルのエピソードが挿入されていきます。


エピソードとして大きな変更となる、トマ・オリビエの存在。
原作では(明らかになっている限りでは)子どもを作らないように注意をしていたらしい教授ですが、ドラマでは対策は完璧とは言えなかったようです。

これにより、原作から犯人の変更が行われており、結末のつけ方も全く違う形へ変更になっています。
原作が教授と言う異様な存在を中心に据えた物語だとすれば、ドラマ版は教授と言う異様な存在に振り回された女性が主役の物語になっていました。


変更点が受け入れられれば悪くないドラマですが、物語の重心を変えたことにより、エピソード全体としてルルやピエロの存在感が殆ど感じられないところが不満点としてあげられます。

特にルルは、本当の意味で人間扱いをされていない環境で孤独を感じながらも、貧困生活に戻りたくない気持ちから新生活へ踏み出せていないという人物像が好きだったので、ドラマで扱いが薄まった感じがしたのは残念でした。


というわけで、個人的には手放しで褒められない改変でしたが、一本の刑事ドラマとしては緩むことなく楽しめる作品になっていたと思います。

最後にメグレがとった行動は正しいのか。
色々な意味でモヤモヤしたままドラマは終わることになります。


キャスト

  メグレ警視/ブリュノ・クレメール
 ジャンヴィエ/ジャン・クロード・フリッサン

  マリアンヌ/ダニエル・ルブラン
デジレ・ブロー/ベルナデット・フラフォン
アントワネット/ブリジット・カティヨン
    ドコー/アニー・ロマンド
 グーアン教授/フランソワ・ペロ
  コルネ夫人/イザベル・プティ=ジャック


他の映像化

ルパート・デイヴィス主演(英)
 シリーズ1 第9話『The Mistake』(1960) ※日本未紹介

愛川欽也 主演(日)
 第2話『警視間違う』(1978)

ジャン・リシャール主演(仏)
 第52話『メグレ間違う』(1981)


ブリュノ・クレメール主演シリーズ視聴記録

☆がお気に入り、〇がお気に入りには後一歩だけど楽しめた作品、△が思うところはあるけどドラマとしては悪くない作品です。
全て現時点での評価になります。

〇01「メグレと消えた死体」(1991)
 04「モンマルトルのメグレ」(1992)
☆05「メグレと首なし死体」(1992)
☆06「メグレと深夜の十字路」(1992)
☆07「ホテル・マジェスティックの地下室」(1993)
☆08「メグレたてつく」(1993)
☆09「メグレと口の固い証人たち」(1993)
☆10「メグレとベンチの男」(1993)
☆11「メグレと宝石泥棒」(1994)
〇12「メグレと幽霊」(1994)
△15「メグレ間違う」(1994)
☆16「メグレと老婦人」(1995)
〇17「ローソク売り」(1995)
☆19「サン・フィアクル殺人事件」(1995)
☆21「男の首」(1995)
☆23「パリ連続殺人事件」(1996)
〇24「メグレの途中下車」(1996)
☆25「聖歌隊少年の証言」(1997)
△29「マダム・キャトルと子供たち」(1999)
△30「野菜畑事件」(1999)
△31「ジュモン51分の停車」(1999)
△32「メグレは二つに見える」(2000)
〇36「開いた窓」(2001)
△37「メグレとワイン商」(2002)
 38「メグレと政府高官」(2002)
〇40「メグレと奇妙な女中の謎」(2002)
☆41「メグレと田舎教師」(2002)

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