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時代劇関係まとめ

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小説に映画、テレビドラマまで、銭形平次以外の時代劇に関係する記事をまとめました
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記事一覧

清水港に来た男(1960)紹介と感想

あらすじ 清水港にやってきた政吉は、腹を空かせて通りがかりの六助の家にあった酒と飯を勝手に食べてしまう。 そこへ六輔と女房のおすきが帰ってくるが、政吉は昔馴染みの振りをして六助を丸め込んでしまう。 そのまま居候を決め込もうとするが、二人揃っておすぎに追い出される。 道中、犬に吠えられ困っている娘を助けて恩の押し売りをしつつ、次郎長一家の三下として潜り込むことに成功した。 ある日、森の石松が都鳥一家に闇討ちされたとの報告が入った。 次郎長と子分達は仇討ちへ出ることになり、

鞍馬天狗シリーズ短編「鬼面の老女」「西国道中記」紹介と感想

「鬼面の老女」(1924) 大佛次郎『鞍馬天狗 第十巻』中央公論社, 1969, p.3-32 あらすじ 小野宗春亡き後、弟の小野宗行が全てを奪ってしまった。 宗春の忠臣・浦部甚太夫に連れられ、逢阪山で武術を教えられながら育った宗春の一子・宗房。 成人し、甚太夫も亡くなり、金に困って叔父を頼って実家へ行くが、計略に嵌められ一銭ももらえなかった。 その帰り、密使を捕まえようとしていた鞍馬天狗一味と刀を交わす宗房。 誤解も解け、父を知っているという鞍馬天狗と知己を得る。

鞍馬天狗 長編第3作『角兵衛獅子』(1927~28)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第一巻』中央公論社, 1969, p.1-200 野村萬斎が鞍馬天狗を演じたNHK時代劇が好きで、いつか嵐寛寿郎の映画も観ようと思っていた『鞍馬天狗』。今回、原作を手に取る機会があり読んでみました。 最初に選んだのは、鞍馬天狗と言えば杉作少年とのイメージから、超有名作『角兵衛獅子』にしました。 ちょうど、入院中に読んだ『ねこぱんち』で大佛次郎と猫の関係を描いた漫画を読んだので、これもまた一つの運命だと思うのです。 あらすじ 角兵衛獅子の杉作は、稼ぎ

鞍馬天狗 長編第6作『山嶽党奇談』(1928~1930)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第一巻』中央公論社, 1969, p.201-499 あらすじ 京都東山の高台寺横の路地には、白髪の老人の姿をした化物が姿を見せると騒がれていた。 また、化物だけでなく最近は山嶽党という暗殺集団まで現れていた。 鞍馬天狗は、ただの人殺し集団を野放しには出来ないと山嶽党を追いかけるが、中々尻尾を掴めず、何度も命を狙われてしまう。 隠れ家を変えようとしていたある夜も、鞍馬天狗と杉作は山嶽党の一味に命を狙われる。 同士である大前田逸郎の援助もあり、短筒で撃た

鞍馬天狗 長編第22作『女郎蜘蛛』(1957)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第八巻』中央公論社, 1969, p.1-212 あらすじ 京で起きた公卿連続予告殺人。死の日を予告した書状が舞い込むと、その予告通りに人が死ぬのだ。 高倉三位という最初の犠牲者から手紙を見せてもらった鞍馬天狗。その後、高倉は血染めの衣類だけを残して消えてしまった。 鞍馬天狗は岡っ引の長次や、犬猿の仲である与力の鹿倉藤十郎とも情報を交換し合い事件を調べ始める。 事件を調べて見えてきたのは、人を見下し秘密主義、しかし内実は金もないのに物欲と色欲に溢れる公

三屋清左衛門残日録07「ふたたび咲く花」(2023)紹介と感想

あらすじ 清左衛門は、道場前で子ども達が喧嘩をしている所へ行き交う。 柘植俊吾という少年が、他の子ども達に喧嘩を吹っかけているらしい。 問題の仲裁を頼まれた清左衛門は、父・柘植孫四郎に接触するが取りつく島もない。 孫四郎は、8年前の護衛任務の失敗や、半年前の妻との離縁により心を塞いでいた。 俊吾は、身体の悪い祖母の面倒を見ながら、そんな父のことも気にかけていた。 清左衛門は、俊吾と少しずつ交流を重ねながら、不審な点がある8年前の事件についても調べを進めていく。 家族の想い

鬼平犯科帳SEASON1「本所・桜屋敷」(2024)

今まで中村吉右衛門版を数話観た程度で、しっかり触れてこなかった鬼平犯科帳。 今回、時代劇専門チャンネルで新作を製作するとのことで、良い機会とドラマと原作を一緒に楽しむことにしました。池波正太郎を読むのも初です。 あらすじ 多数のヤクザ者を一人で倒す銕三郎を、盗賊の道へ誘う蓑火の喜之助。 しかし、ある人との約束があるからと銕三郎は誘いを断る。 それから長い年月が経ち、銕三郎こと長谷川平蔵は、火付盗賊改方の御頭となった。 ある日、平蔵はぶらりと本所へ立ち寄った。若い頃に通っ

鬼平犯科帳SEASON1「でくの十蔵」(2024)

骨折や仕事の関係で劇場版は観れていませんが、放送があったので先にシリーズ新作「でくの十蔵」を鑑賞しました。 あらすじ 火付盗賊改方の同心・小野十蔵は、野槌の弥平一味と疑われる助次郎という男を、虚無僧に扮して探索していた。 ある日、助次郎の家へ忍び込んだ十蔵は、助次郎の死体の傍で放心している女房おふじを発見する。 助次郎の正体を知らず子を孕んでいたおふじを不憫に思い、助次郎の死体を隠しおふじを知り合いの家へかくまうことにした。 十蔵は妻に頭があがらず、常に肩身の狭い思いをし

鬼平犯科帳SEASON1「血頭の丹兵衛」(2024)

「でくの十蔵」の後始末も描く「血頭の丹兵衛」を鑑賞しました。 あらすじ 江戸の市中で残忍な盗みが行われており、現場には「血頭の丹兵衛」と書かれた木札が残されていた。 先日の事件で捕縛した盗賊・小房の粂八は、かつて血頭の丹兵衛の一味だった。 しかし、"殺さず、女を犯さず、貧しき者から盗まず"という三ケ条を掟とする本格派の盗賊だった丹兵衛により、盗みの場で女に手を出そうとしたことを理由に破門になった過去をもっていた。 いま暴れ回っている丹兵衛は偽物だと訴える粂八は、平蔵へ願い

若さま侍捕物手帖・長編01『双色渦巻』(1948)+大川橋蔵主演・若さま第1・2作目 紹介と感想

城 昌幸『時代推理小説 若さま侍捕物手帖』光文社, 1986 あらすじ 質店・布袋屋の土蔵が盗人に入られたが、盗まれたものはなく、追いかけた番頭が峰打ちをくらっただけだった。次の日、二つ目の土蔵に盗みに入られるがまたも何も盗まれず、土蔵の扉の内側に血がべったりと着いていたが、店の者は無傷だった。 遠州屋小吉に連れられ布袋屋を訪れた若さまは、布袋屋の未亡人・おかくに用心棒を頼まれる。 その夜、酒を飲みながら質物の出入り帳を調べ始めた若さまは、三日前病死した主人・彦兵衛が管理

若さま侍捕物手帖・長編04『おえん殿始末』(1955)+大川橋蔵主演・若さま第3作目 紹介と感想

城 昌幸『おえん殿始末 若さま侍捕物手帖』講談社, 2021(電子書籍) あらすじお中﨟歌川の局・おえんの方に仕えるおみよは、歌川の実家・駿府台へ口上を承って来いと言いつけられたが、駕籠は見知らぬ屋敷で止まった。 美しい児小姓に顔見知りの女形、怪しい気持ちを持ちながらも酒を進められるままに飲んでいると、伝三という見知らぬ男が忠告に飛び込んできた。 しかし、その伝三の背後で刀が振り下ろされる。 場所は飛んで、船宿・喜仙では、遠州屋小吉が若さまへ奇怪な事件を持ち込んでいた。

若さま侍捕物手帖・中編「五月雨殺し」(1947)+大川橋蔵主演・若さま第4作目 紹介と感想

城 昌幸『縄田一男監修・捕物帳傑作選 若さま侍捕物手帖』徳間書店, 2008, p193-369 あらすじ夜間、浅草新堀橋を歩いていた若さまは、いきなり見知らぬ侍に斬りつけられた。若さまと対峙した侍は、そのまま闇に消えて行った。 侍の正体は分からなかったが、その後ろから商人風の男が歩いていたため、それが狙いかと若さまが後をつけてみると、質店・阿波屋の者らしい。 二日後、遠州屋小吉が阿波屋へ行こうとしている若さまへ、殺しがあったので来て欲しいと頼む。 殺されたのは、かつぎ小間

若さま侍捕物手帖・中編「だんまり闇」(1954)+大川橋蔵主演・若さま第5作目 紹介と感想

城 昌幸『若さま侍捕物手帖 第十四巻 まんじ笠』捕物出版, 2020, p63-134 あらすじ五月初めの雨上がりの夕方、若さまがぶらぶら歩いていると、明神下のおゆみと呼ばれている女スリが、追手に追われているので一緒に歩いて欲しいと近づいてくる。 どうやら、人からの依頼で何かしらの書付を掏り取ったらしい。 その後、若さまも匕首で斬りつけられたり、おゆみを尾けていた老人が家まで押しかけたりと様々なことが起こった。 次の日、森田屋の娘・おあいが殺されるが、家の者は口をつぐむばか

若さま侍捕物手帖・長編05『人魚鬼』(1956)+大川橋蔵主演・若さま第6作目 紹介と感想

城 昌幸『縄田一男監修・捕物帳傑作選 人魚鬼 若さま侍捕物手帖』徳間書店, 2009 あらすじ小森新太郎は四人の侍に闇討ちを仕掛けられるが、これを見事に撃退した。 翌日、青山下野守と懇意にしている医師・江川了巴に、二千五百石で重大な役目を受けるように声をかけられる。その役目は、稀世の美女と名高い、青山家の一人娘・うつぼ姫の守護だった。 同じ頃、江戸では貧乏暮らしだが美しい娘ばかりを法外な金額で身請けする人物が現れ、いかにも不振に思った遠州屋小吉は若さまへ相談する。 自分を快