寿司屋で半ベソ。

その日、私は寿司屋で席が空くのを待ちながら、5ケ月になる長男に哺乳瓶でミルクをあげていた。

車であげても良かったが、2人目の育児、どんどん大胆になる。

私の母がその状態を見たら何と言うかは容易に想像がつく。

「いやだ、こんな所(公共の場)であげるの?やめなさいよ。」と言うだろう。母に限らず、そう思う人は多いはずだ。

でも、隣に座ったご婦人は違った。

少し前から隣からの視線を感じていたので、内心少し構えていたところに彼女は笑顔で言った。

「あら、可愛いねー!でも、大変でしょう。頑張ってるね。」と。

私は一瞬ぽかんとしてしまった。

だって、こんな時って大体ネガティブなこと言われるでしょ?言われなくても含んだ言い方する人がいるでしょ。(笑)

彼女は真っ直ぐ私の目を見ながら、自分の育児の思い出について話し、私の話を聞きながら、褒めたり励ましたりアドバイスをくれた。早いうちか、ウルウル、半ベソ。


我が息子は6ケ月近いというのに、いまだに夜はうまく眠れない。1時間おきに起きる時もざらにある。日中もほとんど抱っこなのに、9㎏超えという大物。私は長女からの妊娠期間も含めて、約3年まともに寝れていない。という気がしている。

正直なところ、彼女が言った一語一句を詳細に覚えているわけではない。でもその時に感じた温かいモノが忘れられない。寒い冬に家に帰ってお風呂に浸かってほっとする時のような、晴れた日に太陽の光で暖まったフワフワのタオルに包まれた時のような、そんな感覚。彼女が放つ温かいエネルギーの中ずっとお話ししていたかった。

これを残しておきたくて、noteを書いてみようと思ったのも事実。

彼女の隣には、成人した娘さんと息子さんが座っていた。自分もちょうど同じように姉弟を育てているところなので、色々重なった。自分の数十年後の将来も垣間見えた気がした。

「とにかく、楽しんでね。」と彼女は繰り返していた。

これは子育てをしていると、よくかけられる言葉でもある。だけど、この時に感じた彼女の温かさと、この言葉の組み合わせには絶大な力があった。数週間経った今でも、フッと育児に疲れを感じる時に思い出す。そうすると心が穏やかになり、頑張れる。子供を抱きしめたくなる。

子育て中は、人の言葉に助けられることも多いが、それに傷つくことも多い。手探りで子育てをしている中、傷つけられないように、また自分も人を傷つけないように敏感になっている。自分自身を批判したり、自分と比べては他人を批判してしまったりする。彼女はしなかった。

私もあのご婦人のように、いつか、温かく誰かを励ませたらと思う。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?