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【メモ】婚姻費用の信義則違反・権利濫用

東京高等裁判所昭和57年12月27日判決

婚姻が破綻状態となって夫婦の協力関係を欠くに至り、双方に本来あるべき円満な夫婦の協力関係の回復への意欲がみられなくなっている場合には、その分担額をある程度軽減することも許されるものと解するのが相当である。そして、右の破綻状態に至ったことについていずれの配偶者に責任があるかの点は、離婚に至った場合において離婚に伴う慰藉料及び財産分与の額を定めるにつきしんしやくすれば足りる

東京高等裁判所昭和58年12月16日判決

夫婦の一方が他方の意思に反して別居生活を強行している場合に、別居をやむを得ないとするような事情が認められない限り、自身の生活費にあたる分の婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず、ただ同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまる

大阪高等裁判所平成16年1月14日判決

別居の原因の全部又は大部分が婚姻費用の請求者側にある場合には,一方で,請求者自身が夫婦の同居協力を失わせておきながら,他方で,相手方配偶者に扶助(婚姻費用の分担)のみを求めることは信義誠実の原則に反しているから,このような場合にまで,通常の夫婦と同様の婚姻費用分担額を定めることは不公平な結果となる。
したがって,有責配偶者からの婚姻費用分担審判の申立てがされた場合には,申立て自体が権利の濫用であるとし,婚姻費用分担額を零円とする趣旨で申立てを却下するか,そうでないとしても,通常の夫婦間における扶助義務(いわゆる生活保持義務)よりも程度を減じて分担を命ずるのが相当である。

東京家庭裁判所平成20年7月31日審判

別居の原因は主として申立人である妻の不貞行為にあるというべきところ,申立人は別居を強行し別居生活が継続しているのであって,このような場合にあっては,申立人は,自身の生活費に当たる分の婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず,ただ同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまるものと解するのが相当である。

婚姻の破綻と婚姻費用分担義務
-最高裁平成17年6月9曰決定を契機として-



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