フリーランスの年金問題(前編)国民年金は捨てたもんじゃねー

連日、「年金2000万円不足」問題が取りざたされ、さらに「3000万円は必要」などと火に油が注がれる始末。このまま何の解決策も示されず、選挙に突入しそうな勢いですね。

ですがここで、お気づきの方も多いと思います。この議論は「厚生年金加入の夫と専業主婦の妻」という限られた人々の、そのなかでも、40年間も勤め上げたというある意味セレブな方々がモデルになっていることを。どの専門家も、会社に属さない孤高のフリーランスには言及されませんが、フリーランスだって年を取る。年金は大いに必要です。

厚生労働省の試算によると、現在、フリーランスは約170万人。そのうち本業とする人が130万人いるといいます(2019年4月)。そうした本業フリーランサーのほとんどは国民年金の加入者です。なかには「国民年金なんて馬鹿らしい」と、無年金の方も相当数いらっしゃるかも?

というわけで、フリーランスによる、フリーランスのための年金問題を考えてみたいと思います。

*「国民年金の大切さなんて百も承知!」という方は、(後編)国民年金だけじゃ心配すぎる からお読みください!


(1)老齢年金

「国民年金なんてスズメの涙ほどしかもらえないのに、高い掛け金払うのはばかばかしい」
そういう声をよく聞きます。
確かに国民年金は40年保険料を払い続けた満額支給の方でも、もらえる老齢年金は月々約65,000円。「これで暮らせるわけではない」、「安すぎる」という気持ちはよーくわかります。

現在の国民年金保険料は16,410円(2019年度・翌月末振替の場合)。
なかなか高いです。これを仮に、満額とされる40年かけたとします。

40年間に払う保険料は…。16,410円×12ヶ月×40年=7,876,800円 

約790万円です。「ほらー、ものすごく高いよ」ということが聞こえそうですが。。。

では、40年保険料を払い、国民年金の満額を受け取る人は、先ほど月約65,000円と書きましたが、正確には年額で780,100円(2019年度)です。

65歳からもらい始めると…。10年で7,801,000円。11年で8,581,100円。

10年ではわずかに元は取れませんが、10年2カ月たてば、支払った保険料よりもらえる老齢年金の方が上回るのです。

しかも、公的年金は死ぬまで支給されます。
100歳まで生きたら、35年間ですから27,303,500円。約2730万円!!
もちろん、年金は今後減額される可能性が高いので、この通りとはいきません。それに約10年以上長生きした場合元が取れるのであって、短命の場合はゴメンナサ。
ただ、「払った人が損をする」状態ではないことはお分かりいただけたのではないでしょうか。

(2)障害年金と遺族年金

国民年金の役割は、老齢年金だけではありません。大切な役割があと2つ。障害年金と遺族年金です。

障害年金は、不慮の事故などで障害を負ったときや、病気などで働けなくなったときに支給されるものです。支給額は障害や病気の程度によりますが、仮に1級という重い障害を負ってしまった場合は、年間975,125円支給されます。これは老齢年金満額の1.25倍に当たり、子どもがいる方には、子どもの人数に応じて加算があります。

民間の医療保険のようなものが、国民年金にも備わっているのです。「生活が厳しいから国民年金は払ってないけど、勧められて民間の医療保険には加入している」という方が、たまにいらっしゃいますが、順番が逆!! まずは国民年金、です。
なぜなら、公的年金は死ぬまでずっと支給されるから。民間の医療保険は「定期保険」といって期間が決まっています。公的年金の方がセーフティネットとしては優秀なのです。

さらに、国民年金には「遺族年金」という側面もあります。これは18歳未満の子どもがいる人に限られるのですが、年間780,100円に子どもの人数に応じた加算があります。18歳未満の子どもが2人いれば、年間で1,229,100円支給されます。

子どもが18歳になるまでとはいえ、いちばん大変な時期を支えてくれる。民間の生命保険に近いものです。

かといって、生命保険料と医療保険料を徴収されるわけではなく、国民年金保険料、月16,410円払うだけ。意外とお得だと思いませんか。

私は決して、日本年金機構のまわし者ではございません。念のため。

(3)無年金より、免除・猶予

もうひとつ、国民年金の優れたところがあります。それは、「生活が厳しい」「保険料が払えない」と申請した方には、免除や猶予の仕組みがあることです。

免除とは、「保険料を支払わなくてもいいよ」ということ。

国民年金は以前「25年保険料を払い込まなければ、一銭ももらえない」制度でしたが、2017年8月からは「10年払えばもらえる」仕組みに変わっています。
もちろんもらえる年金は減ります。40年払った人が満額なら、20年払った人は満額×1/2で、10年払った方は満額×1/4。年金保険料は一律、皆さん同じ保険料を払っていますから、払い込んだ期間に応じてもらえる年金額が決まるというシンプルな仕組みなのです。

でも、免除されていると、年金保険料を払っていなくても老齢年金が支給されます。
たとえば40年間加入し、その間ずっと免除だった方は、満額×1/2が支給されます。もちろん加入期間にもしものことが起これば、障害年金も遺族年金も支給されます。保険料をまったく払わなくても、です。

実際は、全額免除はハードルが高く、1/2免除や1/4免除などで保険料が減額される方が多いようです。でも、まったく届け出をせず無年金になるよりはずっといいでしょう。

また、学生時代などは「猶予」という仕組みもあります。これは「今は支払い、ムリだよね。だったら待ってあげるよ。払えるようになったら払ってね」という制度です。

いかがですか。「国民年金なんて…」と馬鹿にしたものではないでしょう。

フリーランスには守ってくれる会社もありませんから、わが身は自分で守らないといけません。民間の保険の前に、まずは、国民年金を第一のセーフティネットとして備えておきましょう。

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