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【七転び八起きの六起き目⑥】
世界選手権のファイナリストになり、ファナルのステージからの景色も目に焼き付けたからある程度満足している自分がいた。
でもやっぱり表彰式で表彰台の1番上に立っているタクちゃんを見たら、あそこに自分も立ってみたい、そういう願望や目標も燻り始める。
それはもう夢とかじゃなく、現実的な目標。
終わってからすぐに2019年大会に向けて動き始めた。まずはフィレンツェでジェラートを食べよう、ボローニャでボロネーゼを食べよう、ローマを歩き回って満喫しよう。
つまり御機嫌だ。
2019年。
GALBANIという世界的に有名なチーズブランドからTEAM GALBANI USAに加わりませんかというオファーがきた。一応、概要を確認してみたら、アメリカ在住のピザ職人を対象としたオファーだったので、自分は日本人ですけど……と返事をした。おそらく毎年ラスベガス大会に参加しているからアメリカ在住だと勘違いされたのだろう。そしたら「それでもOKです」という返事がきた、そんなことある?
それならタクちゃんも一緒にお願いしますと伝えたらそれもOKで、2019年のラスベガス大会はTEAM GALBANI USAの一員として参加することに。
ラスベガス大会のエントリーフィーや大会で使うチーズのサポートをしてくれて、ネーム入りのコック服も支給された。
チーズの支給してくれるのはありがたいんだけど会場でモッツァレラ2kgとかパルミジャーノ1kgとか渡されて扱いに困ったりもしたけどね、さすがアメリカってとこか。
さらにラスベガスの会場でパフォーマンスをする時間もくれて、なんだかもう夢のようだったよね。
しかし残念ながらフリースタイルの予選は4位でファナイル出場ならず……イタリア大会でファイナリストになった勢いでイケると思ったんだけど、ラスベガスとは本当に相性が悪いみたいだ。
タクちゃんはマスターズ部門で間違いなく世界最高のルーティンを披露したんだけど、僅差で2位に。優勝者もタクミが世界一だって認めるぐらいすごかったんだけどね、ジャッジってのは分からないもんだ。
料理部門にも出場してみて、いつもよりさらに大会の一部のような、フリースタイルの奴らだったり、TEAM GALBANIのチームメイトたちが料理部門の応援にきてくれたりもして、そんなハッピーな気分になったよ。
さて、続くイタリア大会は初めて前々日にイタリア入りして、宿もホテルではなくアパートメントを借りた。
この年はハインツベックトロフィーというプリモピアット(パスタ・リゾット)の大会にもエントリーしたから準備がいつもより大変だった。それぞれ3部門ずつエントリーしていたからイタリアに着く前からバタバタだった。
フリースタイル部門は前年度にファイナリストになったというプレッシャーもあったけど、自分のスタイルがイタリア人に好まれているという自信もあった。
なんとなくだけどイタリア人のツボというか、そういうのが理解できた気がする。95%ぐらい堅実にミスなく、5%ファンタスティックに美しく、そんな感じ。95%ファンタスティックに演じてもイタリア人は上がらない。ただ、たまに子供がやるバカみたいなネタでタコ上がりすることがあるからそういうのは理解不能だ。
3度目のイタリア挑戦。
二度あることは三度あるのか、三度目の正直か、石の上にも三年か、七転び八起きか……いやでもこれは確か6起き目だ。
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