innocent world ~降りてきた話

1994年6月1日に発売され、大ヒットした、Mr.Childrenの5thシングル「innocent world」がどのように生まれたのかという秘話。
当時のミスチルにとって、この5thシングルの制作は、善作「CROSS ROAD」がミリオンセールスを達成した後であり、「アクエリアス」CMソングというビッグタイアップもついていたため、とても重要なものでありました。
その制作は、都内西新宿ヒルトンホテルのスイートルームにこもって行われました。
桜井和寿さんがアイディアを出し、小林武史さんがダメ出しし、再び桜井さんが練り直していくことを繰り返し、早いうちに曲はできたようですが、詩はなかなか完成しなかったといいます。

1994年2月27日のこと。
『Replay」を踏襲したような恋愛の歌詞を提示してくる桜井さんに対し、小林さんは、「今の桜井だから書ける詩、今の桜井がうたうからこそ意味がある詩じゃないとだめだ」という趣旨のダメ出しを桜井さんにしたそうです。
その日、桜井さんがホテルから家へ車で歌のない新曲を流しながら帰っている時、環状七号線の早稲田通り付近で何かが降りてきたといいます。
桜井さんは、車を止め、降りてきた思いをノートに書き綴りました。
最初に綴った言葉は、「少しだけ疲れたなあ」で、そこから一気に詩を書いてしまったようです。
それが、仮タイトル「innocent blue」の歌詞でした。
メンバーは、これまでの妄想の恋愛の歌詞とちがう、桜井さんの内面をさらけ出した歌詞に驚いたそうです。
この「innocent blue」は、詩が修正され、さらに洗練されて、「innocent world」に生まれ変わりました(3月7日に完成したとされている)

これらのことについての桜井さんと小林さんの発言をいくつか・・・。

【桜井】
「悩んでて悩んでて、そのとき、本当に疲れたなーと思ったんですよ。それで、『少しだけ疲れたなあ』という詩を最初に書いて、それまでドアに鍵をしてたようなもので、『少しだけ疲れたなあ』っていうのが鍵を開けてばーって自分の心の中を開いてくれたみたいな感じになって、そのときに本当に気持ちよかったっていうか、便秘だった人のお通じじゃないですけど(笑)、本当にスッキリしたっていうか…」

【桜井】
「スポーツ飲料水のタイアップがついてたもので、その絵コンテも見せてもらって、その清涼飲料水のイメージ、それから、絵コンテのイメージに詩をこれでもかって言うくらいあわせて書いたら、小林さんが『そういうのはもういいんじゃないか』と言ってくれて、『たとえこれが大事なチャンスのタイアップがついていたとしても、ボーカリストとして桜井和寿個人としての思いを詩にするべきなんじゃないか』と言われ、書けたのが今の『innocent world』で。」

【小林】
「『この詩でいきたいんですよ!』と僕に言ってました。それまでは、恐る恐る『どうですかねぇ…』という漢字だったんだけど、それが当時、『innocent blue』って仮タイトルだったんだけど。全てがあの曲が始まりだったとは思わないけど、ものすごく色としてスピード感として、僕がやってきたブリティッシュな音楽と和の雰囲気とがここで一気に集約されるなーって手応えはあったんでね。それこそ一個のカタルシスを得るためには、『innocent blue』ではだめで、『innocent world』にしようと。」

ブルーからワールドへの変更は小林さんの提案のようですが、ぶるゔーと最後が口を窄めるより、ワールドのwぁーと口を開いて解放される方が良いということみたいですね。
確かにそうですね。

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