SaaS成功の秘訣ーCoralCapital西村さんの記事を読んでの感想ー

CORAL CAPITAL 西村パートナーの記事。TechCrunch編集長もしていたとありますが、今回の記事はSaaSビジネス開発で最も重要な視点を提供してくださってます。

SaaS事業者が顧客の要望を断る2つの理由
2020-06-24
https://coralcap.co/2020/06/when-to-say-no/

西村さんによる、グラファーの石井代表の取材記事。

顧客の「要求」には応えるが「要件」は自分たちが決めるという言い方をしているそうです。要求とは「顧客が解決したい課題や期待」のことで、要件とは「仕様やシステムが満たすべきふるまい」のこと。

全面賛成です。SaaSの場合カスタマイズする事は=ブランチを作ることとなります。そこに保守が発生するので事業主体、特にスタートアップはそこに貴重な開発戦力を投入する事になります。これによって本体サービスの成長を阻害する可能性も出ます。ブランチは悪手です。

「SaaSの特徴は製品の最終責任が開発側にあるということで、そうなると必然、要件は開発側が決めないとまずい。権利を開発側が持つ形になると、開発サイドの利害はPLからBSにシフトします。自分たちが所有するソフトウェアという資産を磨くことが非常に重要。一方、受託開発ではPL中心になりがちで、このことから案件単価、人月いくら、という話になりやすいのだと思います」
「PL的な発想だと『とりあえず単価が大きい案件だから要望を聞こう』となりがちである一方、BS的な発想では『そんなことをしたら製品価値が下がってしまう』となることがあります」(引用)

このように財務諸表で考える視点も重要です。年々の利益はPLの要でありもちろん大事ですが、BSからの視点では、年々の利益も純資産を構成する1要素。SaaSにおけるソフトウェアは無形固定資産であり、このソフトの良し悪しは、受託製造業でいう工場の価値に等しい。印刷業なら輪転機であり、金属加工業なら、製造機器や金型などになります。

本記事では行政手続きが、自治体ごとにバラバラで、そのため、各行政の話を聞きながら、時には各自治体の要望に対しても問い返しを何度か行う事や検討を通じて真の要件を洗い出し、共通点を見つけながらSaaSに実装するのだそうですが、私はこのような取り組みを継続的に行い、グラファーさんのサービスこそが日本の行政手続きの標準となる日がいつか来る可能性があると期待します。これすなわち、SaaSサービスによって日本の行政の業務そのもののムダをなくす、事にも繋がるし、優れたSaaSになれば他の自治体も行政手続きのお手本が詰まったSaaSになる。新しいプラットフォームビジネスを目指すならば、まずはSaaSビジネスのあるべき姿を考える事が大事なんだと改めて気づかされる良記事でした。

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