Azumi T.

研究者。専門は社会学(社会運動)、現代思想など。博論を基にした著書→『Post-Fuk…

Azumi T.

研究者。専門は社会学(社会運動)、現代思想など。博論を基にした著書→『Post-Fukushima Activism』(Routledge, 2018) 、『不安の時代の抵抗論――災厄後の社会を生きる想像力』(花伝社、2020)

最近の記事

いまこの国で、「反原発」であるということ

2023年2月20日。朝日新聞が伝えた世論調査で、原発の再稼働に賛成する人が51%と、2011年の福島第一原発事故のあと、はじめて過半数を上回った。エネルギー危機の直撃を受けているこの社会で、「3・11から10年」のわかりやすい節目も通りすぎてしまったいま、原発の危険性への市民の関心はますます薄れてゆく。 政府の原発回帰も鮮明だ。 2月10日には岸田政権が、原発の運転期間の延長や、新規増設をもりこんだ基本方針を閣議決定した。福島第一原発事故以来の方針の大転換だ。2月28日

    • 「民主的な知識」を作りたい (平和研究奨励賞受賞スピーチ)

      昨年、拙著『不安の時代の抵抗論-災厄後の社会を生きる想像力』(花伝社)と、『Post-Fukushima Activism: Politics and Knowledge in the age of Precarity』(Routledge)で、日本平和学会の「第8回平和研究奨励賞」をいただきました。 今年6月の日本平和学会春季研究大会で、その受賞記念スピーチをさせていただいたのですが、それが思ったより評判が良かったことをいま思い出したので、すっかり間が抜けた感じですが(笑

      • 市民運動の現在地(寄稿記事)

        京都新聞「人文知のフロンティア」(2021年5月26日付 夕刊)に掲載された寄稿記事を転載します。現代社会の抵抗の難しさについて、3・11後のデモの意義について、それらと民主主義との関係、さらには研究者としての私の思いなど……これまでの自分の研究を紹介しつつ、語っております。 (※京都新聞社様より、転載の許諾を頂いています) *** 市民運動の現在地:不完全でも無力ではない抵抗   私は抵抗運動の研究をしています。抵抗というと、権力に対峙してこぶしを突き上げるイメージか

        • 希望のタイムスパン:『不安の時代の抵抗論』ご感想を受けて③

          3.11後の反原発運動、あるいは同じ時期に世界的に展開していたオキュパイ運動などの社会運動について、「結局、あれは社会を変えなかった」という言い方がされることがあります。 運動の「意義」や「成功」をどう測るのか。それは、自著『不安の時代の抵抗論』の議論の一つでもありました。この中で私は、3.11後の反原発運動が社会を変えなかったという評価に異を唱えています。 前回の投稿『ご感想を受けて②』でも取り上げた川口和正さんの書評も、この議論を受けて、このように述べてくださっていま

        いまこの国で、「反原発」であるということ

        • 「民主的な知識」を作りたい (平和研究奨励賞受賞スピーチ)

        • 市民運動の現在地(寄稿記事)

        • 希望のタイムスパン:『不安の時代の抵抗論』ご感想を受けて③

          非政治性、無関心とは何か:『不安の時代の抵抗論』ご感想を受けて②

          3.11後の反原発運動、反レイシズム運動などに携わってきた野間易通さんから、『不安の時代の抵抗論』の書評を頂いたとき、次のように書かれていたのを、非常に光栄に思いました。  韓国の政変にも香港の民衆運動にもアメリカの抵抗運動にも、賛同であれ批判であれおよそまともな反応を返せないこの日本社会の「非政治性」は、社会自体の幼稚さ、未成熟さに起因しているのだと思っていた。しかし彼女はそれを、「日本人は抵抗を想像すらできなくなっているのだ」と見る。つまり、今と違う(もっとまともな)社

          非政治性、無関心とは何か:『不安の時代の抵抗論』ご感想を受けて②

          絶望の中から:『不安の時代の抵抗論』ご感想を受けて①

          本書にも登場し、私がインタビューをした当時(2012年)、首相官邸前抗議の最前線にいらっしゃった堕落=だらくさんから、拙著『不安の時代の抵抗論』のご感想をいただきました。 こちらが堕落さんのお寄せくださった文章です。 反原発運動の中での経験、その中で抱いた葛藤、これまでの人生について、若い世代へのメッセージなど、たくさんのことが書かれています。とくに心に残った言葉について、何回かに分けて、取り上げさせていただきたいと思います。 「希望の言葉」の希望のなさ堕落さんは201

          絶望の中から:『不安の時代の抵抗論』ご感想を受けて①

          『不安の時代の抵抗論』と筆者のこと

          私は、2020年6月に『不安の時代の抵抗論――災厄後の社会を生きる想像力』(花伝社)という本を出版しました。 不安ゆえ人々が分断され、他者を排除したり、理不尽な権力にも服従してしまう時代に、どのように「この現実」とは違う可能性を想像し、実現できるのか。3.11後の反原発運動に参加する人々の言葉から、抵抗の可能性を考えたものです。 各章要約はこちら★ 筆者について、この本について私はもともと研究者を目指していたというわけではなく、気がついたら、この肩書きが一番しっくりくる

          『不安の時代の抵抗論』と筆者のこと