【ワンピース】『ONE PIECE』感想記(第1103話)

※この記事では漫画『ONE PIECE』第1103話(「週刊少年ジャンプ」2024年6・7号掲載)の内容を扱っています。最新話まで未読の方はネタバレになりますのでご注意ください。

くまとボニーの過去を巡る物語に一旦ピリオドが打たれ、舞台は戦況が逼迫した現在へと戻ってきました。怒涛の回想を経てもなお情報が矢継ぎ早に明かされていく中、満を持して本編の主役が登場。未来島“エッグヘッド”編のキーマンが一堂に会し「世界に思いもよらぬ『衝撃(ショック)』を与える」事件の結末へと向かう待ったなしのクライマックスが幕を開けます。

ベガパンクがボニーに渡したかった物

まだエッグヘッドが混乱に陥る前、Dr.ベガパンクは気絶したボニーを一瞥してこんなことを言っていました。

『この子には…渡さねばならん物がある…!!』

第1067話「PUNK RECORDS」より

これはくまの形見か、くまを別の形で復活させるための道具かと考えていましたが、今回それがくまから預かっていた10歳の誕生日プレゼントであることが明かされました。今思えば確かにあれだけ頻繁に手紙を送っていた人が、子供の特別な誕生日に何も用意していないわけがないなと理解できます。

そのプレゼントはサファイアでできた太陽のネックレスでした。ベガパンク曰く「お守り」だそうですが、今のところは言葉以上の意味を見出すことができません(何か特別な力があるわけではなく、願いが込められた物)。かつて親子を苦しめていた太陽と“宝石”が、故郷の教会にも見られた“太陽の神ニカ”伝説を象徴する希望の意匠となり、まるでルフィと引き合わせたかのような流れは感慨深いものがあります。

『この世は全て強い望みの赴くままに…巡り合う歯車なのである』

第237話「上空にて」より

ボニーに秘められた可能性

これまで奇想天外な力を見せてきたボニーですが、やはりその能力は幼さゆえの青天井であったことがサターン聖の口から明かされました。この点についてかねてから『シャーマンキング』のあるエピソードを連想していましたが、別の作品のため詳細は割愛します。

サターン聖はこんこんと「現実」を突きつけてボニーの精神を追い込んでいきますが、これはかえってボニーがサターン聖を追い詰める展開を予見させます。サターン聖が言うように、ボニーの能力は現実と空想のギャップが埋まるごとに可能性を閉ざしていくものなのでしょうが、裏を返せば空想が及ぶ範囲であればいくらでも再現できるわけです。

ボニーがニカをイメージした「ディストーション・フューチャー(ゆがんだ未来)」が最も威力を発揮したのは、おそらくソルベ王国を出航する時にサイファーポールのアルファに放った一撃でしょう。ボニーの想像力や「ニカ」を信じる思いはこのときが一つのピークだったはずです。重要なのは、この時から現在に至るまで、ボニーはニカについて抽象的な伝承しか知らないという点です。そのためにニカ本来の姿や力は発現せず、力が「また」弱まっていました。

しかし、この場には現代のニカであるルフィがすぐそばにいます。先のルッチ戦、黄猿戦ではいずれもその姿を見ることが叶いませんでしたが、再びルフィがギア5を発動し、それがニカの再来であると確信した時にはルフィ以上の力を発揮しても不思議ではありません。人の想像力を侮ったサターン聖の悪事が巡り巡って自らの窮地を招くのだとすれば、なんとも因果な結末です。

『ニカの姿は誰も知らないが…その体はゴムの様な性質を持ち空想のままに戦ったそうだ…』

第1101話「ボニーへ」より

『“悪魔の実”とは……!! 誰かが望んだ「人の進化」の“可能性”である!!! ああなれたらいいな……!! こうなれたらいいな……!! 多岐に渡る人類の未来が“能力”である!!!』

第1069話「万物は望まれてこの世に生まれる」より

このやり取りの脇ではギア5の反動で無力化していたルフィが、何者かが用意した食糧を暴食し始めました。その前後には照らされたようなサターン聖の顔と、仰向けに倒れていた黄猿が体を起こしている姿が描かれています。かつて海軍として海賊との独自交渉に釘を刺していた黄猿が、ついに親友(知り合い)として海賊に手を貸したのかが気になるところです。

『誰とでも組むさ…ハァ』『恩人をこの島から逃がせるんなら!!!』

第1091話「戦桃丸」より

終わりに

今回はその他にもサターン聖が試みた2つの実験という情報が出てきました。1つは直接悪魔の実を食べられない人に能力を与える方法について。もう1つは副作用で青玉鱗を引き起こす何らかの“薬物実験”です。前者はベガパンクの研究に繋がった可能性もありますが、いずれも目的はまだ分かりません。

そして、冒頭に本編のキーマンが一堂に会したと書きましたが、エッグヘッドに接近していた黒ひげの船も気がかりです。いよいよ物語が大きく動き出そうとしている中での2週間はとても待ち遠しいですね。

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