【ワンピース】『ONE PIECE』感想記(第1102話)

※この記事では漫画『ONE PIECE』第1102話(「週刊少年ジャンプ」2024年4・5号掲載)までの内容に言及しています。最新話を未読の方はこの記事をお読みにならないことを推奨します。

数々の謎を紐解いてきた未来島“エッグヘッド”編も、いよいよクライマックスを迎えようとしています。これまで綿密に展開されているくまとボニーを巡る過去の物語は、これまで『ONE PIECE』で描かれたストーリーの一部分を別の視点から捉えたものでもありました。果たして二人の、そしてベガパンクの行く末はどうなるのでしょうか。

まもなく時間軸が現在に戻ろうとするこのタイミングで、エッグヘッド編についての感想を残していきます。

現在のくまについて考えていたこと

まず、前回までに現在のバーソロミュー・くまについて考えていたことをざっとまとめます。

現在くまは世界政府との取り決めにより自我を失った“生物兵器”であり、彼の記憶はエッグヘッドの「ルームNIKYU」で保管されています。革命軍によって一度はその身柄を救出されましたが、にわかに走り出すやマリージョアを強行突破して(おそらく)新世界方面へと姿を消しました。

この部分について、「ルームNIKYU」はくまが自我を失う前にニキュニキュの実の能力によって弾き出したもの(記憶そのもの)を、本体に戻らないように留めておく装置ではないかと予想していました。そして自我はおろか記憶もないはずのくまの体には、かつてゲッコー・モリアの切り取った影やDr.ホグバックが作り出したゾンビがそうであったように、まだ何かしらの記憶や意志があり、それに突き動かされているのではないかと。

『“影”とは…いつ どこにいても人に従い動く“もう一つの魂”なのです』

第455話「王下七武海ゲッコー・モリア」より

『魂のない体にも…意志ってあるのかな…』

第469話「出て来い麦わらの一味!!!」より

エッグヘッド編の冒頭で登場した“海獣兵器”メカシャークについても、ベガパンクのサテライトである「リリス(悪)」がこんなことを言っていました。

『また失敗か。…なぜ生物の“欲”は制御できない……!?』

第1061話「未来島エッグヘッド」より

カマバッカ王国で修理されていたくまが立ち上がったのは、タイミングが同じであればベガパンク抹殺の任務にあたるCP0がエッグヘッドの開港を求めた時でした。その時、CP0のロブ・ルッチはボニーについても「出会ったら消すさ…!!!」と口にしています。もし何らかの意志がくまの体を駆動させているのだとすれば、それはかつて“解放の戦士ニカ”のようなヒーローに憧れ、ジニーが遺した愛娘ボニーに献身した在りし日のくまの意志かもしれません。

現在のベガパンクの技術をもってしても本能まではコントロールが及ばないのだとすれば、およそ2年前に自我を消失したくまはどうでしょうか。たとえ自我のない(とされる)人間でも子供を守ろうとする想いが働いても不自然ではありません。ただしボニーの危機を知り得た理由については根拠が乏しく、ルッチの背後にいたセラフィム“S-ベア”が怪しいという印象に留まります。

また、今後くまが自我を取り戻すことはあるのかどうか。これについては処置したベガパンク自ら元に戻せないとボニーに告げているので、現状は不可逆な技術であると断定してよいと思います。

ただ、ベガパンクの元にはくまの血統因子と記憶があります。そこへ革命軍の同志エンポリオ・イワンコフの能力が加われば、元の体ではないにせよ“くま”を取り戻すことは可能でしょう。もっとも、個人的には非科学的と言われようともベガパンクの技術さえ及ばない奇跡に期待していますが。

いずれにせよ何をもって「生きている」とするのか、何をもって「人間」であり「その人」とするのか。これまでのストーリー、そしてこのエッグヘッド編でも述べられてきたことが、くまの境遇を通じて問いかけられているように感じられます。

『「いる」か「いない」かは……おめェらが決めろ。その言葉すら俺には旧時代の概念だ』

第1062話「科学の国の冒険」より

最新話で明かされた内容を踏まえて

さて、最新話を読んで認識を改めなければいけない点が出てきました。

それも含めて、この記事では以下の3点に着目していきます。

①「ルームNIKYU」で保管されているくまの記憶は触れれば消えてしまう「コピーの様なもの」である
②くまの体にはジェイガルシア・サターン聖の命令により自爆機能が搭載されている(可能性がある)
③ベガパンクは「二重人格の様に意識を切り替える脳の回路を発明した」

まず、くまの記憶についてはコピーの様なものであり、ベガパンクの技術で触れずに見られるようにしていたようです。ベガパンクがボニーに触らないよう注意したのはこちらの理由もあったのかもしれません。つまり、今もくまの体には記憶がそのまま残っている可能性が高いです。

次に、サターン聖が命じた自爆機能について。わざわざこのタイミングで話を持ち出したのですから、この先の展開に関わる重要な要素と見てよいと思います。

例えば黄猿。CP0と同様に黄猿もベガパンク抹殺の任務にあたっていますが、よくよく言動を見ていくとその意思は感じられません。対峙したルフィをはじめ麦わらの一味に対しても明確に危害を加える素振りがありませんし、何よりなぜベガパンクの命を狙うのかとルフィに問われてこう返しています。

『殺してェわけねェでしょうが…!! ベガパンクとァ長ェ付き合い…。だから邪魔しねェでくれ…』

第1092話「暴君くま聖地暴走事件」より

例え不本意であっても「社畜」として抹殺の意思があれば、二言目までで足りるのではないでしょうか。しかし「だから邪魔しねェでくれ…」という一言にベガパンクを救う意志が垣間見えます。だからこそ海軍としてルフィには聞かせられない本心を遠く離れた場所から明かしたように思えてなりません。

現状、おそらく黄猿は手を尽くしたが何らかの理由でベガパンクを取り逃したという落とし所へ持っていこうとしているのでしょう。そのためにはベガパンクをCP0や海軍、サターン聖から遠ざける必要がありますし、何より救出の要である麦わらの一味を排除する理由はありませんから。

少し話は飛びますが、現在の世界政府による統治体制はいずれ終わるでしょうし、かねてから世界政府に不満を抱いてきた海軍が反旗を翻すのも必至です。あくまでも海兵(の大半)は世界の治安を維持することが目的(=広義の正義)であり、天竜人が支配する歪な構造を温存することは本意ではないためです。

いずれは黄猿もその“うねり”を大きくする存在になることを予想していましたが、今回の自爆機能を踏まえて少し違う展開も浮かんできました。もしかするとそれは近い将来ではなく、今ここエッグヘッドで明確に離反するきっかけとなるのかもしれません。

そして、ベガパンクがサターン聖との交渉に持ち出した技術について。これは実際に発明したのか、それとも時間稼ぎのためのブラフなのかはまだ分かりません。少なくとも現在は実用化された技術であるならば、くまの行く末にも一筋の光明が差した思いです。その時に選択を委ねられるのはボニーでしょうし、もしかすると彼女の出自が明かされるタイミングとなるのかもしれませんが。

終わりに

今後の展開に思いを巡らせても、結局はくまが救われてほしいという期待に尽きます。ただ献身することによってボニーを自由にするだけではなく、くま自身も“解放の戦士”によって救われてほしい。そして、ボニーの願いを叶えてほしい。

また、今回の話を受けて、第1071話のサブタイトル「英雄出撃」は改めてくまにもかかっていたのではないかと思えてきました。

とにもかくにも『ONE PIECE』、ますます目が離せません。

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