【ワンピース】『ONE PIECE』感想記(第1104話)
※この記事では漫画『ONE PIECE』第1104話(「週刊少年ジャンプ」2024年8号掲載)の内容を扱っています。コミックス派、アニメ派など最新話まで未読の方にはネタバレになりますのでご注意ください。
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少年期、壮年期と最愛の家族を天竜人に奪われる凄惨な人生を送りながら、今大事なものを守るためにできるだけ付き従ってきた“暴君”。三度同じことは起こすまいと子どもの窮地に振り上げた拳が巨悪を打つ姿はまさに待ち望んだものでした。万感を込めた一撃は“彼ら”の守りたい物にまで余波を及ぼすのでしょうか。
バッカニア族の大罪について
『ONE PIECE』では様々な種族への差別が描かれてきましたが、バッカニア族へのそれは一段と惨い印象を受けます。「空白の100年」に20の王国と敵対した“D”の名を持つ者たちでもこれほどの扱いを受けている描写は見られません。
種族(血筋)と隠し名という違いはあるものの、「近年各地に湧き出てきた己の名の意味も知らぬ“抜け殻”共」に対して「生まれながらの奴隷階級」という扱いは相当の隔たりがあります。バッカニア族がかつて世界に対して犯したとされる大罪とは一体何なのでしょうか。
ここでキーワードになってくるであろうやり取りが、38年前のゴッドバレー事件の最中にありました。少年期のくまがニキュニキュの実を口にした直後のサターン聖との応酬です。
『ぼくに今何かの力がついたのなら――ぼくは“ニカ”のように…こんなかわいそうな人達を一人でも多く救いたい!!!』
『…だから消えるんだお前達は』
“解放の戦士ニカ”のように奴隷を救いたいと表明したくまに対して、「だから消えるんだ」という言葉。これは過去にバッカニア族が奴隷の解放に関わっていたことを示唆しているように思います。今回ベガパンクの脳裏によぎった情報も誰かを救うことに関連付けられる能力でしょうか。そしてそれは「空白の100年」に存在したとされる「ある巨大な王国」にも繋がってくるでしょう。
奴隷の解放という点だけ見れば、支配者にとっては秩序の乱れであり、国家ひいては世界(経済)の破壊活動と言っても過言ではありません。あくまでも支配者やその恩恵にあずかる人々の視点ではありますが、大罪とされるのも合点がいきます。海賊王、ゴール・D・ロジャーの処刑後、その血筋を断とうとしていたように、個人の罪(責任)を一族に課す価値観がこの世界にはあります。もっとも、ポートガス・D・エースの処刑に関しては、天竜人と海軍で異なる目的があったでしょうが。
『貴様が“海軍の英雄”などと呼ばれていなければ!! 一族全ての責任を取らせる所だがな!!! ガープ!!!』
さて、ここで当初の違和感に立ち返ると一つの可能性が見えてきます。長きに渡るバッカニア族への苛烈な扱いは、他でもないニカその人に起因するものではないでしょうか。つまりニカはバッカニア族の先祖にあたり、「ある巨大な王国」を興した中心人物なのではないかという考えです。
またバッカニア族の大罪については、資源不足のために青い星へ移住した月の人たちとの関わりも考えられます。奴隷解放の目指す先が他種族との共存であれば月の人たちとの共存も避けては通れないはずで、奴隷解放よりもそちらが争いの火種となった可能性は拭えません。いずれにしても天竜人の発端が全くの悪ということは想像しづらいですね。
『今まで釣ったお魚はみんないなくなっちゃったわよ?』
『共存ってもんを考えろ。当たり前の事だろうが!!!』
戦局の転換
現在の戦況に話題を変えましょう。今回の出来事は主に以下の3点です。
①ルフィが失踪
②サンジ、フランキー、黄猿が参戦
③バスターコールの発動命令
まず、前回サターン聖の目を盗んで食糧を食べていたルフィが忽然と姿を消しました。海兵の「捕えきれず消えちまった!!」という発言から、ベガパンクがルフィたちの前から姿を消した技術をサテライトが使ったのではないかと予想しています。この難局を打開するにはルフィの力が不可欠なので行方が気になりますね。
『じゃあ上で待っておる!!』
スーーーーー
『え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!?』
『消えたーーーーー!!』
『リンゴのおっさーーーん!!』
次に、身動きがとれなかったサンジとフランキーがサターン聖に反撃する中、回復した黄猿も戦線に復帰してきました。ルフィ戦のダメージがあるとはいえ未だ本気には見えませんが、いよいよ決断を迫られる場面に差し掛かっています。手心を加えるにしても応戦しているように見せかけるにしても限界がありますから、まるで今度は自力でこの窮地を脱してみろ(くまたちを救ってみせろ)と期待しているような印象を受けます。
『黄猿!! おれ達は2年前の100倍強ェぞ』
そして、サターン聖への攻撃をきっかけにバスターコールの発動命令が下りました。これがどの程度戦況に影響するかは不明ですが一抹の不安がよぎります。当初サターン聖らにはベガパンク抹殺とは別の目的がありました。既にいくつかは押さえているのか、あるいはくまの登場によって捨てざるをえなくなった物があるのかもしれませんが……。
『守る物は3つだ…。「欲(ヨーク)の身柄」、その脳である「パンクレコード」、マザーフレイムを生む「融合路」!!』『それ以外は失っていい…!!』
終わりに
この危機をどう乗り越えるのかや謎に包まれたバッカニア族の背景など、いろんなことが気になって仕方ありません。エッグヘッドだけでもさらなる仕掛けがありそうなのに、今後エルバフで「空白の100年」の核心に迫っていくような期待感もありますし、各地で起きている戦いの先も気になります。
先々のことは気になりますが、一旦置いておいてまずはこのエッグヘッド編に集中したいと思います。
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