【ワンピース】『ONE PIECE』感想記(第1105話)

※この記事では漫画『ONE PIECE』第1105話(「週刊少年ジャンプ」2024年9号掲載)の内容を扱っています。コミックス派、アニメ派の方にはネタバレになりますのでご注意ください。

バーソロミュー・くまの突貫、さらにバスターコールの発令によって前線から退く糸口を見出したベガパンクたち。幾ばくかの希望が現れては立ち消えになる様は、人類の歩みを具現化した未来都市が崩れ落ちる光景と重なるようでもあります。近海で動く勢力はエッグヘッドの騒動を鎮める一助となるのか、はたまた事態をさらなる混沌へと引きずり込むのか。予断を許さない状況が続いていきます。

矛盾をはらんだ将校の悲哀

サターン聖の上陸に続き、くまの出現、バスターコールの発令と目まぐるしく変わる戦況は、麦わらの一味のみならず島内の海兵にも混乱をきたしていました。ドールら中将に撤退を命じる黄猿にも、もはや上陸前のような余裕は感じられません。それは譲歩を求めるベガパンクとの対話に応じなくなったことからもうかがい知ることができます。(顔を背けているように見えますが、アングルのせいかもしれません)

とはいえ黄猿はまだ任務遂行を決断できないでいるようです。今回は真空ロケットでラボフェーズに向かうアトラスらを落下させはしましたが、まるで狙いすましたかのように座席の間を一刀両断しました。エッグヘッドに上陸して以降ベガパンクであれ麦わらの一味であれ仕留めるタイミングは何度かあったものの、このような行動は徹底されています。

こうした黄猿の行動にサターン聖が不信感を持たないはずもなく。今気になるのは、ルフィと相打ちになり倒れている黄猿に向けた言葉です。もしこれが“ニカ”の力をほのめかしたものではなく、かつて研究所内で解放のドラムのリズムに乗って踊っていた黄猿の思想を指したものだとするとどうでしょうか。任務と私情の間で揺れる想いの行き着く先は果たして……。

『戸惑いこそが人生だよ、黄猿君……!!』

第512話「ゾロ、音沙汰なし」より

命運を握るのは誰なのか

今回は前線以外の状況も少しずつ分かってきました。まずはファビリオフェーズ(工場層)の前線から振り返っていきます。

先述の真空ロケットにはアトラス、フランキー、ボニー、くまが乗り込み、道中にはサンジも同行していました。本来の護衛対象であるベガパンク一人を残してサンジまでその場を離れたことには大きな違和感がありますが、いずれにしてもベガパンクはサターン聖のおかげで生かされていた格好です。しかし今回、エッグヘッドの都市が砲撃される光景を目の当たりにして膝をつく姿には絶望感が漂い始めています。

『誰から死ぬ…? 辛い順に教えてくれ…。我々「世界政府」に楯突いた事を悔やみ死んで欲しいからだ』

第1095話「死んだ方がいい世界」より

さらに上空では落下するボニーとくまがパシフィスタたちの標的となっています。慌てて飛び立つサンジ、最悪のシナリオを想起するベガパンク。この緊迫した状況でも希望を持っていられるのは、改造手術を受けるくまが何気なく口にしたこの言葉のおかげでしょう。

『もしいつか俺に似たクローン兵が誰かの人生を救ったらおれが生まれた意味はあるのかもな』

第1099話「平和主義者」より

その「いつか」はもう少し先の出来事を想像していました。パシフィスタマークⅢには“最強の盾”も駆使してバスターコールから島を守る役割を期待していましたし、サターン聖に命じられた自爆機能を搭載していなかったベガパンクのことですから、ここでも何か先手を打っているだろうと期待感を持って見ていたいと思います。

また、失踪していたルフィが無人調理機の前で海兵たちに発見されました。依然として傍らに置かれた食糧や移動の経緯は分かりませんが、戦線復帰は近そうです。目に光を宿した伝説の鉄の巨人をはじめ、麦わらの一味を「命の恩人」と称えるCPの面々、ラボフェーズ(研究層)で船を降ろされたカリブー、船影が見えていた黒ひげ海賊団などにもそろそろ動きはあるのでしょうか。

そして、ラストではエッグヘッド脱出船の追撃に繰り出した軍艦が大破していました。「あいつら」の正体はさまざまな可能性が考えられますが、少なくとも世界政府に利する勢力ではありません。それがどのような勢力であれ黄猿はまた判断を迫られることでしょう。これをどのような形、タイミングでサターン聖(あるいはベガパンクにも)に報告するのか注目です。

終わりに

物語からは離れますが、最近は1話を読み終えるまでがあっという間に感じていました。それだけ前のめりになっているということもあると思いますけれど、よくよく見返してみるとページ数が減っていたんですね。

これが構成上の都合であればいいのですが、昨年11月には原稿が間に合わないこともあったので気がかりです。いずれにしても万全を期して連載を続けていってもらいたいと思います。

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