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弁護修習について

 実務修習では、裁判(民事・刑事)修習、検察修習、弁護修習があります。
 今回は、その中から弁護修習について述べてみたいと思います。

1 事務所の選定

 基本的には、一つの事務所に対し、一人の修習生が配置されます。
 なお、どの事務所に配置されるかについては、修習前に提出した書類から判断されており、一応事務所とマッチするようにはなっています(もちろん、合わないと思う人もいると思いますが)。
 事務所の場所によっては、電車等の交通機関を使わなければならない場合もあります。特に、遠方から来た修習生が飛ばされる傾向にあります。ただし、遠方の場合、交通費を弁護士会が補助してくれるので、金銭面での心配はないと思います(全ての弁護士会がそうかはわかりません)。

2 事務所との連絡

 事務所の通知が来たら、すぐに連絡(電話・メール)をしましょう。第1クールが弁護修習でなくとも連絡をしましょう。その際、集合時間や持ち物についても確認しておきましょう。
 また、初めて事務所に行く際には、お土産を持って行きましょう。もちろん、義務ではないので、持っていかなくても良いのですが、弁護士や事務員さんとの円満な修習生活を送るためにも渡しておいて損はないと思います。
 高いものである必要もないです。なので、1000円くらいのものでもいいので渡しましょう。
 なお、修習の最終日(実務修習か選択修習かは悩みどころ)にもお礼は持っていきましょう。

3 昼食事情

 修習生にとって一番気になる点としては、昼食事情です。
 ここで、最初に述べておきたいのですが、昼食を奢ることは弁護士の善意であるということです。よく、弁護士が奢ってくれないとして弁護士会にクレームをいれる人がいますが、指導担当のマニュアル(というものがある)では、昼食を奢ることを義務とはしておらず、むしろ原則修習生が負担するものとなっています。そのため、原則は自己負担例外的に弁護士負担であることを忘れないようにしましょう。もう一度言いますが、奢ってくれるのは弁護士の優しさです。
 そもそも、修習生を受け入れても特にいいこともない(むしろ仕事が増える)にも関わらず、受け入れてくださっているので、奢ってもらえればいい事務所、奢ってもらえなければ悪い事務所という分け方は適切とは思えません(もちろん修習生としては、奢ってもらえる方が経済的にはありがたいですが)。修習は多くの人からの協力や善意により成り立っているものであり、何事も当たり前なことはないということはしっかりと認識しましょう。
 また、奢ってもらった際には、その度に必ず感謝をしましょう。毎回奢ってもらえると当たり前に感じてしまうかもしれませんが、感謝の気持ちを忘れないことが大切です(もちろん、食事以外の際もそうです。また、何かしてもらった際には、弁護士だけでなく、事務員さんにも感謝すべきです。)。

4 実務

⑴ 総論

 どのような事件を扱っているのかは事務所ごとに違います。地方の事務所であれば幅広くやっている所も多いですが、逆に都市部の事務所では専門化しているということも少なくありません。その辺は運です。
 もし、自分のみたいものを取り扱っていなければ、里子に出してもらうことも考えられます。里子とは、一定の期間、別の事務所で修習させてもらうことです。必ずしもできるとは限りませんが、修習先や弁護士会に相談してもいいかもしれません。

⑵ 各論

ア 事件内容

 ざっくり分けると、民事事件、家事事件、刑事(少年)事件、行政事件、顧問対応みたいな感じでしょうか。

(ア) 民事事件

 民事事件では、相談(事務所、法テラス、市役所)の同席、起案(訴状、答弁書、準備書面)、弁論準備、口頭弁論の傍聴、が挙げられると思います。なお、控訴事件があればついていくといいと思います。
 同席や傍聴については、積極的に参加するといいと思います。私の事務所は車を使用していたので、ドライブできて楽しかったです。それはおいておいても、勉強になることは多いと思います。私も、傍聴については、記録を読んで行くのである程度は理解した状態で挑めるので何となくは分かりましたが(難しい論点についてはどうしたらいいかわかりませんが)、相談の同席に関しては、その場で法律構成を考えなければならず、自分の勉強の足りなさを痛感しました。
 起案についても、機会があれば積極的に取り組むといいと思います。正直初めはよく分からないとは思いますが、とりあえず書くことが大切です。書いて弁護士に修正されてでいいと思います。
 なお、起案の際ですが、事実関係をしっかりと把握すること(時系列表とか作ると良い)、証拠を把握すること、リサーチをしっかりとすること(文献、裁判例)、形式面をしっかりとすること(インデント、半角全角、誤字脱字、引用、日本語のわかりやすさ)について心がけるといいと思います。もちろん、法律論的な話についてしっかりと記載できることが望ましいですが、難しいものであれば誤りは当然ありうるものです。他方で、上記の点は意識をすれば誰でもできることであり、新人弁護士になった際にも当然に求められるもの(むしろ、指摘されないのが好ましい)といえるので、練習をしておくといいと思います。
 もう一つだけアドバイスですが、起案は早めに書き始めましょう。リサーチをしっかりすることと矛盾するようですが、リサーチをして、その後に無駄に悩んでいる時間(行き詰まっている時間)があれば書きましょうってことです。とりあえず作ってあれば修正は簡単ですし、時間に追われずにすみます。
 なお、起案の数ですが、私は1〜3日で1起案くらいしていたので、結構な数はしたと思います(民事事件に限らず)。

※ 法律としては、商標法、民法、会社法、労働法、その他マイナーな法律など様々なものを扱いました。どういう案件を見たいかを聞かれると思うので、気になるものがあれば言ってみるといいと思います。

(イ) 家事事件

 離婚や相続事件が多いです。私は、もっぱら離婚事件を傍聴していました。
 家庭裁判所での調停の傍聴がメインですが、傍聴もなかなか大変です。記録自体多いですし、相手方と入れ替わりで話を聞くことになるので、とても時間がかかります。また、相手方が弁護士をつけていないと紛糾することが多いです(当事者双方が弁護士をつけていない場合については家裁修習でみてください)。
 家事事件に関しては、特に起案をしていなかったと思います。
 なお、一般民事志望の場合、家事事件は避けて通れないものなので、この修習で手続等しっかりと押さえておくといいと思います。

(ウ)刑事(少年)事件

 刑事事件に関しては、接見や公判の傍聴が挙げられます。
 なお、そもそも刑事事件は取り扱っていない弁護士もいるので、刑事事件をみたい場合はその旨を伝えておいたほうがいいと思います。
 起案としては、最終弁論や示談書があると思います。私は、情状弁論の起案を1通書いたと思います。
 なお、接見の際には身分証は必須ですが、バッジではなく、紙の身分証を持っていった方が安牌です。場所によっては、紙を求められます。
 少年事件に関しても、審判や接見が挙げられます。また、家庭裁判所での記録(法律記録、社会記録)の閲覧もあります。
 少年事件については、成年の刑事事件と比べて取り扱いが少ないので、どうしてもみたいという人は事前に伝えておいたほうがいいと思います。
 感想ですが、少年をいかにして更生させるかについて調査官と一緒に考えることは、大変ためになりました。なぜやってはいけないのかについて教えることはとても難しいです。法教育の普及に難しさもその辺りにあるのだと感じました。
 少年事件であれば、意見書(だったと思う)の起案があります。成年の情状弁論よりもやりがいがあります。 

(エ)行政事件

 事務所によって全く取り扱っていないところもあると思いますが、意外とやっている事務所はあるのではないかと思います。司法試験が終われば行政法などやらないものだと思っていたので、案件を振られると少し驚きます。
 いわゆる行政救済法だけでなく、対行政庁事件(民事)もあります。どちらかといえば後者の方をよくみました。
 起案自体は、民事訴訟で紹介したものと大差ないです(監査請求とかあるかもしれませんが。なお、私は断りました。)。
 将来、行政庁の顧問となった場合には頻繁に扱う分野であるので頑張るといいと思います(行政法自体は、企業法務でも割と使います。)。

(オ)顧問

 契約書チェックや法律問題への回答など様々です。お願いすればできると思いますが、スピード感が大事になってくるので、意外と大変かもしれません。
 基本的には当日中に作成して、指導担当に提出していました。
 個人的には訴訟案件の方が面白かったです。

5 結語

 割と真面目にやれば、実務に出た際に即戦力(仮)くらいにはなれると思います。例えば、新人弁護士のつもりで起案したり、裁判例を網羅的にリサーチしたり、法律論について指導担当と議論したするといいと思います。逆に、事件について、指導官の話を一方的に聞いているだけでは身につきにくいです(OJT!)。
 あと、色々話を聞いてみるといいと思います。仕事の仕方(時間管理や起案)や依頼者との向き合い方、顧客の獲得(営業)、参考書籍等、今後の弁護士生活にとって役に立つものとなるはずです。
 最後に、責任なくというのは語弊がありますが、楽に弁護士としての仕事ができる機会なので楽しんで頑張ってください。

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