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司法試験短答式試験対策

 今回からは司法試験対策について書いていきたいと思います(口述についてはもう少し先で)。まずは、短答についてです。
 普段の勉強では論文がメインで、あまり短答について考えることはないと思いますが、せっかくの機会ですので少し考えてみてください。

1.分析

 司法試験での科目は民法、憲法、刑法、の3つです。ただし、配点は75点、50点、50点と民法が高くなっています。なお、足切りは30点、20点、20点です。
 今年の司法試験の合格点は99点、平均点は126.4点です。約78%の人(2672人)が合格しています。なお、足切りは189人、75人、147人(重複者あり)です。
 おおよそ8割の人が短答式試験に合格していることからすれば、短答式試験のハードルはあまり高くない印象を受けます。そのため、あまり対策をしないまま受ける人は少なくないと思います。
 しかしながら、法科大学院ごとの合格者で見てみると、上位のロースクールでも2~30人程度落ちています。未修・既修や一回目か否かといった内訳まではわからないですが、普通に落ちる人はいます。そうであるなら、短答式試験についてもそれなりに対策はしておくべきです。
 なお、最終合格は短答式試験の点と論文式試験の点の合計点であることからすれば、短答式試験でギリギリの点を取ればそれだけ論文式試験で高い点を取らなければならなくなってきます。そのため、論文式試験に自信がないという人は、短答式試験で平均点以上を目指しておきたいです。
※合格点ギリギリだと、合格発表があっても自分が受かっているのかわからないという弊害があります。法務省の発表では自分の番号が出ないので、結果が届くまでは怖いですね。

2.対策

 勉強のやり方の大枠については、予備試験短答式試験の方を見てもらえればいいので、ここでは科目ごとにもう少し踏み込んで説明していきたいです。

2.1.民法
 まずは過去問を回しましょう。できれば肢別本(辰巳法律研究所)を解くことをお勧めしますが、別にパーフェクト(辰巳法律研究所)を使っていたならそっちでもいいと思います。肢別本を勧める理由は、それができるようになれば、短答は余裕だからです。旧司の過去問も入っているので、すごく難しく、嫌になることも多いため、そこまではいいやって人はパーフェクトにしましょう。
 民法の短答では、論文で出てくることが多いので、すごく苦戦するということはないと思います。しかし、いい点を取るためにも論文であまり見ない部分についてしっかりと対策しておきましょう。特に、家族法分野についてはそこまで難しくはないので、そこで点を落とさないようにしたいです。
 民法対策として効果的なものは、(全)条文を素読することだと思います。条文を知っていれば解けるという問題は多いです。また、過去問では改正について聞かれているわけではありません。しかし、今年の問題は普通に改正について聞いてきていたので、改正に対応するという意味でも、しっかりと条文を読むことは大切です。論文の問題でも条文を読んでいれば対応できた問題があったので、論文対策という意味でも条文を読み込んでおくことは有用であると思います。

2.2.憲法
 憲法に関しては、パーフェクト(辰巳法律研究所)でいいと思います。
 過去問を回すことはそうですが、しっかりと判例を読み込むことが大切だと思います。ふわっとした感じで覚えていると、足で切れない憲法ではただの博打になってしまうので、しっかりと判例の言い回し等を確認してください。特に人権分野はそうだと思います。割と面倒だからといって判例を確認しないことも多いと思いますが、

・「憲法判例百選Ⅰ・Ⅱ〔第7版〕」(別冊ジュリスト245号・246号)

でいいのでちゃんと引きましょう。余裕があれば、

・木下昌彦ほか編「精読憲法判例[人権編]」(弘文堂、2018年)
・木下昌彦ほか編「精読憲法判例[統治編]」(弘文堂、2021年)

を読んでもいいですね(オーバーキルですが)。
 また、統治分野や最初と最後の方に関しては、

・芦部信喜「憲法〔第7版〕」(岩波書店、2019年)

と条文をしっかり読み込むことだと思います。条文については、条文を知っていれば対応できる問題が出題されたりしますし、芦部憲法については、記述がそのままでたりしているので、読み込んでおくことをお勧めします。

2.3.刑法
 刑法に関しても、パーフェクト(辰巳法律研究所)でいいと思います。
 まずは、過去問をしっかり回すことです。あとは、条文を素読すればほぼできると思います。
 条文の文言や年数等の暗記事項は、試験前に詰め込めばいいと思います。
 また、学説問題については、論文式試験対策で基本書を読むと思うので、別途何かする必要はないと思います。なお、基本書を読む場合は

・大塚裕史ほか「基本刑法Ⅰ総論〔第3版〕」(日本評論社、2019年)
・大塚裕史ほか「基本刑法Ⅱ各論〔第2版〕」(日本評論社、2018年)

でいいと思います。

3.終わりに

 まとめると、対策としては以下の通りです。

民法:過去問、条文
憲法:過去問、百選、芦部、条文
刑法:過去問、条文、(基本書(学説))

 短答のためにすごい勉強をしなければならないというわけではないですが、あまり対策をしてこなかったという人はまずは9~10月まで(遅くとも年内)に1周はするといいのではないでしょうか(1日10~15問くらい)。この1周に関しては、私のやった方法でも何でもいいので、全力で負荷をかけてやるのがいいです。ただ解くだけでは、結局あまり頭に残らないまま終わってしまうので、大変ですが頑張ってみてください。1日の問題数は多くないので、そこまで時間はかからないと思います。
 また、1周してみて、自分が弱いと思う科目(多分憲法の人が多いと思いますが)については継続して勉強していくといいと思います。憲法であれば、判例を毎日読んだりとかですかね。余裕があれば、もう1周軽く回してもいいかもしれません。
 感覚的には、年末までに短答式試験では落ちないというレベル(平均点くらい)にもっていきたいです。12月に今年の短答の問題を時間をはかって解いてみるといいと思います。
 年明けからも結局やることにはなりますが、自分が思っているより短答をやるモチベーションを維持することは難しいですし(私は放棄しました)、論文対策に力を入れたいというのもある(年明けで短答初めましてだと解くのに結構時間がかかる)ので、今から1ヶ月1科目くらいのペースで少しずつやっていくことをお勧めします。
 最後に、短答の勉強は論文にしっかりと生きてくるので、短答だからと思わずに、頑張ってください。応援しています。

4.補足

 ゴールってどのくらいなのかについて少しだけ補足します。おそらく、短答をやっているとどのくらいまでいけば十分なのかというのがなかなかわからないと思います。
 わかりやすいゴールは過去問の正答率が高い状態にあることです。ほぼ間違えない状態にあれば本番でも平均点を余裕で超えると思います。
 とはいえ、そこまでもっていくのは大変です。私も間違えている問題は多いので、別に正答率にそこまでこだわる必要はないと思いますし、別に普通に間違えてても高得点は取れます。
 そうなると、ゴールは何なのかという振り出しに戻ります。私見としては、ゴールにこだわる必要はないとは思うのですが、やった範囲ができるようになったことだと思います。正答率が高いことと何が違うのかと思うかもしれませんが、問題を解いてそれがあっているか間違っているのかというのはあまり気にする点ではなく、解いた問題についてきちんと理解できたかが大切です。つまり、間違っていたとしても、なんでダメだったのかを考えて、そういうことなのかと分かればそれでいいと思います。逆にいえば、正解した問題でも勘で正解しているだけでは意味がないことになります。
 そのため、理解しながら解き進めて、最後の問題までたどりつければ一応ゴールだと思います(覚えているかどうかは置いておいて、一旦は理解した)。そこから先は、間違った問題やなんとなくで正解した問題を解きなおしたりして何回も挑戦することで、理解している問題を増やしていけばいいのではないでしょうか。

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