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司法修習ハンドブック

第0 総論

1 はじめに

 全体像を把握しようという観点で記載しているので、細かい点について書き損じがあるかもしれません。また、75期はオンラインだったので、和光での修習を行う76期とは多少異なります。その点はご了承ください。

2 修習とは

 修習は、導入修習→実務修習→集合修習(or選択修習)→選択修習(or集合修習)→2回試験、と構成されています。順番は地域によって異なります。
 導入修習及び集合修習が和光、実務修習及び選択修習が地方(修習地)です。

第1 事前準備

1 申込

⑴ 前提
 〆切までに必要な書類を揃えて、提出しましょう。
 必要書類については、司法修習のサイトに上がっています。
 提出できない書類については、追完する形でも大丈夫だったと思います。
 なお、提出する書類の写しはとりましょう。

⑵ 修習地
 修習地をどこにするのかが正直一番気にする点だと思います。
 ただ、これに関しては、運です。
 様々な推測がなされているところですが、司法研修所はそこまで考えていないと思われます。
 強いていえば、実家通いの方や家族(子)のいる方、就活の必要性のある方については、希望が通りやすいと思います。
 基本的には、合理的な理由のない限り、何か理由を書いても意味はないです。
 あとは、確率論的なところではないでしょうか。例えば、あえて2群から選ぶとか、第2希望を2郡にする等。

⑶ 貸与金
 親からの援助や預貯金がたくさんある人はいいですが、そうでない人は貸与金を借りましょう。特に初期はお金がかかりますし、基本的に、家賃補助や移動費、引越補助費に関してはすぐに振り込まれません。
 すぐに借りる場合には、書類と一緒に提出する必要があるので、急ぎましょう。

2 採用後

⑴ 流れ
 採用通知後、修習地と白表紙一式が郵送されます。大体10月頃には届いたと思います。
 まずは、修習関係の書類に必ず目を通して、日程を把握しましょう。特に、提出物(金銭関係)に関しては、〆切を過ぎると受け付けてくれなかったりするので、日程を把握して〆切を守るようにしましょう。

⑵ 家探し
 修習地が決定され次第、家探しをしましょう。現地に行くのがベよいですが、日程的に難しい場合には、オンライン内見等で済ますことも考えられます。とりあえず早く行動しましょう。
 基本的には、裁判所や検察庁、弁護士会周辺に居住すると思います。ただ、それらが分散している場合については分かりません。
 なお、交通費は出ません。そのため、交通費のかかるところに住んでいると無駄に支出が増えます(弁護士事務所が遠方の場合には、弁護士会が負担してくれます。)。

ア 費用
 給付金13万5000円に加え、家賃補助が3万5000円もらえたと記憶しています。
 とはいえ、家賃補助は1ヶ月後からなので、初月は基本給与のみです。
 また、契約時には、家賃、敷金、礼金、仲介手数料、保証金、その他様々な費用がかかります。その辺もしっかりと考えましょう。

イ 設備
 オートロックは必須です。一人暮らしだと何があるかわかりません。案外事件は多いです。
 そのため、少し割高になっても、安全面には気を配るべきです。その点からは、3階以上がいいと思います。
 また、宅配ボックスがついていると便利です。日中不在にしていることが多いからです。
 さらに、wi-fiもあるといいと思います。意外と家で作業することも多いですし、家によっては、携帯の電波が入りにくかったりするのからです。

ウ 立地
 危ない場所は避けましょう。なるべく大通りや路地に入らないところがいいと思います。
 また、近くにスーパーやコンビニがあるところがいいです。遠いと大変です。

エ 手続
 電気やガスに関しては、自ら行う必要がある場合があります。入居したのに使えないとなると困るので、確認しておきましょう。
 また、wi-fiに関しても、入居時から使用できるのか、さらに手続きが必要なのかは確認しておきましょう。

オ 契約書
 契約書はきちんと読んだ上で署名押印しましょう。特に、違約金条項(1年未満解約で違約金が発生するか)や敷金、原状回復(いわゆるクーニング特約についても)の規定については確認しておくのがいいです。

⑶ 白表紙
 準備として、白表紙を読んだ方がいいのかという点ですが、どちらでもいいと思います。
 ただ、対面で教官から当てられるという環境では、読んでおいた方がいいのではないかと思います。
 また、起案に関するもの(事実認定、要件事実)は事前課題のためにも読むことにはなると思います。
 とはいえ、実務修習まで行けばわかるようにはなるので、あまり気にしすぎる必要はないです。

⑷ 事前課題
 早めに着手しましょう。書き方がわからないので、後から起案しようと考えていると詰みます。
 また、締め切りは守りましょう。催促されます。

⑸ 保険等
 一番大事ですが、修習に行く場合、親の扶養から外れます。そのため、国民健康保険や国民年金について自分で支払う必要があります(月2万くらい持っていかれる)。役所に行って手続きをしましょう。   
 また、保険はきちんと手続きをしなければ無保険期間が生まれます。負担割合100なので気をつけましょう。
 なお、修習が始まると、自由修習日以外に役所へ行くことはできません。修習地移動後、実務修習開始までに住民票を移したり、国民健康保険や国民年金の手続、免許証の手続を必ず行いましょう。また、住民票を移す際には、マイナンバーの手続きや電子番号の手続きもしましょう。電子番号は確定申告の際必要になります。

⑹ 確定申告 
 今年(令和4年)一定の収入がある場合、確定申告の対象になります(令和5年は該当者のみ、令和6年は全員)。放っておくと期限に間に合わないということになりかねないので、必要な人はしっかりと日程を把握して準備しましょう。

第3 導入修習

1 総論

 導入修習は約1ヶ月あります。
 76期は和光での修習となります。そのため、引越しをする人は、荷造りをしておく必要があるでしょう。
 とはいえ、私は和光での生活は経験していないので、ブログ等を参照してください。
 なお、開始の際、移動金や引越費用に関して書類を提出するはずなので、忘れずにしましょう(もう少し早かったかもしれません)。

2 各論

⑴ 進め方
 導入修習は基本的に課題があって、その予習をして講義に臨むという感じでした。
 基本的には、ロースクールと変わらないと思います。ただ、ロースクールと異なるのは、グループワークが多いことだと思います。

⑵ 内容
 内容に関しては、民事・刑事手続の流れ、初回接見、要件事実、事実認定(民事・刑事)、訴状、答弁書等の書き方、和解案、弁解録取手続、弁護士倫理等です。実務修習への橋渡しとして全体像を把握しようというものだったと思います。
 他には、一斉起案があります。なお、評価対象にはなりません。

⑶ 服装
 75期はオンラインであったということもあり、私服でした。和光でも私服なのではと思いますいが、司法研修所から送られる紙を確認してください。

第4 分野別修習

1 総論

⑴ 流れ
 地方に分かれて修習を行います。
 具体的には、検察、刑事裁判、民事裁判、弁護の4つのクールに分かれています。
 大規模庁の場合は、何班かに分かれてローテーションしていきます(第1クールでは、1班は検察、2班は刑事裁判、3斑は弁護、4斑は民事裁判、という感じです)。小規模庁であれば、全員同じクールだと思います。
 なお、第1クール頃(もう少し早いかもしれませんが)、弁護士会から弁護修習先の書かれた書類が送付されます。自分の修習先を確認した上で、電話をして一言挨拶しましょう。電話の際には、司法修習生であることと、指導係の名前を伝えましょう。

⑵ 内容(総論)
 基本的に実務庁で2ヶ月ずつ過ごします。勤務時間は9時30分から17時です(弁護修習は事務所によって異なります。自分で交渉して好きな時間を勝ち取りましょう。)。
 修習内容に関しては、基本的には実務庁の指示に従います。
 ただ、どのクールでも、一斉起案があります。半日から1日かけて書くものです。75期の人が、山形地裁で国賠されていましたが、この一斉起案に対してでしたね。
 なお、任官、任検を考えている人は、分野別での起案を頑張りましょう。任官志望はもちろんですが、任検志望についても、起案は大切です(刑事裁判、検察、(刑事弁護))。

⑶ 服装
 当然ですが、基本的にはスーツです。もっとも、夏(5〜&月頃)からは、クールビズでも大丈夫です(各庁の指示に従いましょう。)。そのため、その間、ネクタイやジャケットを着用しなくても問題ありません。
 女性に関しても、基本的にはスーツですが、夏はスーツでなくても丈夫です。

⑷ 持ち物
 裁判所では(及び弁護士事務によっては)、PCが必須です。毎日持っていく必要があるので、それを考慮したカバンを選びましょう。PCは必須ですが、USBに関しては貸与されるので不要です。なお、USBはTipeAなので、TIpe Cの人は変換ケーブルを常備しましょう(作業の際や印刷の際に困ります。)。
 また、六法及び筆記用具は必須です。メモ用紙に関しては支給されますが、すぐになくなるのでルーズリーフ等の紙を用意をしておいおいて損はないと思います。
 必要な白表紙も持っていきましょう。
 そのほか、修習性バッチ又は身分証(司法研修所の)が必要です。裁判所や検察庁では手荷物検査をパスするのに、弁護修習では、裁判所に行ったり、接見にいく際に必ず必要です。

⑸ 初日
 初日はオリエンテーションで終わりと思っている方もお多いかもしれませんが、その後に修習があります。白表紙やPCを持っていきましょう。

2 アドバイス

 各クールでは、結果簿というのを書く必要があるので、これは適宜書きましょう。最終日間近で書くのは記憶も薄れていて大変です。
 また、各クール全力で取り組むことをお勧めします。やはり、実務の中で実際に体験することが一番身になります。特に、弁護士志望であれば、裁判官の考えていることは大変参考になると思います。裁判修習は退屈だと言われがちですが、本人次第だと思います。裁判官と積極的に話をしたり、裁判官が参照する文献を適宜メモするようにしましょう。課題や傍聴等についても手を抜かず頑張りましょう。

3 各論

⑴ 刑事裁判
 数人のグループごとに各部(部屋)に配属されます。だいたい、左陪席、右陪席×2、部長です。
 基本的に、記録を読んで、傍聴します。公判前整理手続、公判、裁判員裁判等です。記録を読む際は、手控えを、傍聴の際も、簡単なメモを取るといいと思います。
 傍聴以外としては、裁判官から出された課題を行います。事実認定の課題を最低2題で、合計4題の課題を行います。
 傍聴をするか、課題を進めるかは個人の裁量に任されています。バランスよく進めましょう。なお、なるべく多くの傍聴に行くと手続面がよくわかるようになります。
 また、1日は令状修習といって、令状裁判官の元で、令状について学ぶ回があります(勾留要件等)。
 その他、民事裁判又は刑事裁判のクールにおいて、家庭裁判所での修習が1週間あります。家事事件と少年事件の修習を行います。家庭裁判所では課題はなく、記録検討や傍聴がメインです。
 なお、修習終了時には、菓子折りを送りましょう(任意ですが)。

⑵ 弁護
 ○○修習では、一つの法律事務所に一人が派遣されるという形でした。
 基本的には、指導担当のもとで修習を行うことになります。
 内容に関しては、弁護士によって異なります。○○の弁護士は当たり外れもあるようで、忙しすぎると面倒を見てもらえなかったり、特定の分野に注力していて、幅広く体験できない等あるようです。私は、中心部ではなく、僻地に飛ばされたのでそのようなことはなかったです。そういう意味では、ある程度地方の方が修習をしやすいのかもしれません。
 事務所ごとに差はあれど、具体的には、起案(保全申立て、訴状、答弁書、準備書面、内容証明、弁論)や相談の立会い、弁論準備や本案への参加、接見、公判前整理手続きや公判への参加、契約書チェック等があります。
 分野についても、家事事件、刑事事件。労働事件、医療事件、民事事件、知財事件、行政事件等様々です。自分の関心のあるものについては積極的に希望するようにしましょう。
 弁護修習では、お昼ご飯を奢ってもらえる場という印象が強いですが、弁護士志望の人にととっては、実務を間近で見ることのできる場所です。そのため、訴状等の起案を積極的に行なったり、先生と話したりと、しっかりと修習するのがいいと思います。また、ご飯を奢ってもらった際には、お礼をいいましょう。
 なお、弁護修習についても、修習開始と修習終了時に何か贈るのがいいと思います(任意です)。

⑶ 民事裁判
 刑事裁判と同様です。基本的に、記録を検討して、弁論準備手続や本案の傍聴をします。また、課題もあります(事実認定、手続問題)。
 事件としては、典型契約におけるものだけでなく、医療裁判、知財に関する裁判、行政事件、労働審判もあります。実務に行っても行政法は使うので、忘れないようにしましょう。また、労働法の知識も必要となります。
 他に、交通部での修習や執行保全・破産係での修習もあると思います(◯○ではありました)。
 執行保全の知識は当然ですが、破産・民事再生に関しても勉強しておくと良いと思います。
 民事裁判修習としては、手続を学習することはそうですが、事実認定についてもできるようにしましょう。

⑷ 検察
 大部屋に入れられ、指導担当1人が担当するという形です(1対全員)。
 2〜3人のグループになって事件を担当します。グループに一人、検察志望が割り振られます(いる場合)。基本的には、修習終了までに在宅事件を一人一件(主任)、グループとして、身柄事件が一件振られます。
 詳細については述べられませんが、事件を割り振られてから、最終的な判断についてまで何かしらの形で関わることになります(大変です)。
 主には捜査がメインなのですが、その他に、捜査部と公判部での修習があります。
 捜査部では取調べの見学をします。公判部では、公判傍聴をしたり、冒頭陳述、論告、証拠分け等の課題を行ないます。
 もし、任検志望の人がいるのであれば、自分の成果物は常に評価されていると思ってください。初日の課題から、取調べ、決裁に至るまで全てが評価対象です。公判部や刑事部の検事課題についても積極的に行い、手を抜いてはいけません。指導係検事だけでなく、里親検事も評価者です。今までの起案とこの検察修習で任検できるかが決まるので頑張りましょう。
 なお、検察ではPCが貸与され、私物のPCやUSBの持ち込みは禁止されます。

⑸ 注意点
 修習地へ移動した場合、住民票の移動手続きが必要です。保険や年金との関係でも必要です。確か、住民票があった場所で手続きしてから新しい住所地での手続きがいるので、その辺確認しましょう。
 また、引越し費用の請求や家賃補助の請求のために、賃貸借契約等及び書類の提出が必要です。

⑹ 困ったこと
 困ったことがあれば、教官や指導係、各庁に相談しましょう。
 弁護事務所については、よくない事務所はとことん良くないので、何らかのハラスメントをされたら相談することをお勧めします。場合によっては修習先を変えてくれるかもしれません。
 また、修習生の勤務時間は17時までです。自主的に残る分にはいいですが、何日も残業せざるを得ない場合についても相談してみるのがいいと思います。
 その他、他の修習生からのハラスメント事案もあります。これについては相談しづらいと思いますが、ひどくなると付き纏いに至るケースもあるので(実際にありました)教官に必ず相談しましょう。教官は積極的に協力してくれます。

第5 集合修習

1 総論

 A班は、集合修習が先です。B班は、選択修習→集合修習となります。
 76期は、集合修習が和光なため、修習地からの引っ越しを余儀なくされます。なお、集合修習期間中、家賃補助はありませんので、全額負担だったと思います。

2 各論

 集合修習では、主に、手続面の修習及び起案(×2)、起案の講評、です。
 手続面の修習とは、模擬裁判(刑事)や主張整理、模擬尋問(民事)、模擬和解(民事)、民事模擬相談等です。
 起案については、5科目について2回あります。9時45分から16時30分までです。
 もし、任官を考えている人は、この起案がとても大事です。頑張りましょう。
 また、任官を考えていない人も、2回試験前の最後の起案の機会です。しっかりと勉強を行い、評価が芳しくない科目に関しては、しっかりと復習しましょう。

3 注意点

 8〜9月には、弁護士会登録の書類を各弁護士会に送付することとなります。
 戸籍身分証明書各2通を本籍所在地の役所から取り寄せる必要がありまます。
 また、10万円の支出を余儀なくされるので金銭の使い方については考えましょう。

第6 選択修習

1 総論

 ホームグラウンド修習(弁護修習の時の事務所)、全国プログラム、自己開拓プログラム、個別プログラム、があります。
 ホームグラウンド修習は必ず入っていて、そのほかの3つを好きに入れることができます。
 どのプログラムも募集期間があります。また、特に全国プログラムは応募理由が必要な修習先も多く、準備に時間がかかるので、余裕を持って考えましょう。なお、全国プログラム→自己開拓プログラム→個別プログラムの順番で募集されますが、最初に何も考えずに入れてしまうと、後の取りたいプログラムが取れなくなってしまうかもしれません。気をつけましょう。
 プログラムが全て決まり次第、弁護修習先へ連絡しましょう。

2 各論

⑴ 全国プログラム
 全国プログラムとは、その名の通り、全国各地で募集しているものです。例えば、法テラス(函館等)であったり、裁判所関係だったり、弁護士事務所だったりと、募集のある全国の好きなところに行けます。もちろん、抽選なので外れることもありますが。

⑵ 自己開拓プログラム 
 自己開拓プログラムとは、自分で修習先を探してくるものです。もっとも、裁判所が許可するかは別問題であり、基本的に自分の修習地以外では許可が得にくいです。とはいえ、普段であれば行くことのできないところに行ける可能性もあるので、是非挑戦してもらえればと思います。

⑶ 個別プログラム
 個別プログラムとは、各修習地が提供するプログラムです。例えば東京であれば、東京内での修習となります。裁判所や検察庁での修習やマスコミでの修習等様々です。

⑷ 小括
 というように、好きに選択することができるのですが、入れすぎると2回試験の勉強に響きますし、大変です。その辺を考えて予定を組みましょう。
 他には、この時期(9〜10月)に家探しをすることになると思います。東京であれば、引越し費用も含めて最低でも50万円くらいは必要となります。弁護士登録費用とあわせてかなりのお金の準備を要するので、気をつけましょう。

第7 2回試験 

 一部の人(大阪、京都、奈良、神戸、和歌山)は梅田で、その他大勢は和光です。
 集合修習が起案を行う最後の機会なので、集合修習では頑張って勉強しましょう。
 なお、2回試験終了から1ヶ月ほどで結果が分かります。その間は自由時間なので、やりたいことをしましょう。
 ただ、現在住んでいる家の賃貸借契約を解消することは忘れないようにしましょう(解約通知期間に注意!)。基本的に契約書に特約が付されているので、きちんと確認しましょう。また、電気・ガス・水道に関しても適宜手続きを行いましょう。

第8 終語

 修習は色々な経験ができる機会です。
 適度に頑張ってください。

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