『ムーンカーフ』の裏側
久間健裕 ひとりでやる公演『ムーンカーフ』1日限りの配信公演が無事、終わりました。いち早く配信を観てくださった皆様、ありがとうございました。
疲れました。本当に、疲れました。
今回は予算の都合上、乗り打ち(本番当日に劇場入りして仕込んでゲネプロやって本番やって撤収すること)だったんですが、やっぱりやるもんじゃないすね。
準備期間は1ヶ月近くありましたが、本番は1日しかも1ステで終わってしまったので、本当にあっという間というか、今でもあれは夢とか幻覚の類だったんではないかと疑っております。尋常じゃない身体の疲労感が現実の出来事であることを如実に物語っていますが。
更に今回は「ひとりでやる公演」ということで、作・演出・出演・音響・照明その他諸々を全てひとりでこなすという、正常で合理的な人間ならまず実行に移さないであろう形態を取りました。
ひとりで作・演出・出演している舞台や、出演している俳優さんが音響や照明をいじるみたいな舞台は過去に見たことありましたが、ここまで人の手を借りない公演は他に類を見ないんじゃないかなと思っています。
ただ結論としては、借りれる人の手は借りた方がいい。改めて、いつも関わってくれる裏方のスタッフさんに感謝したくなる公演でした。スタッフの皆さん、いつもありがとうございます。
ネジマキトカゲの公演では毎回のように「自分たちだけで済ませようとしすぎ」「マンパワーで頑張ろうとしすぎ」「人の力を借りることを覚えなさい」などと言ったり言われたりしていたのですが、なんにも反省していませんでした。
まあ、これも全て、人の心を狂わせる満月に導かれたせいでしょう。
内容にも触れたいところですが、この公演はアーカイブが残っておりまして、チケットを購入された方は6月9日(水)までは何度でも観れるようになっています。これより先は観てからの方が楽しめるかと。
まだ観てない方は、是非ご覧くださいませ。
観てくれた方へ
ご視聴ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。
お客さんの反応がないので、こちらとしては全く手応えが無いです。終始不安でした。ただ、ウケるウケないという概念を取っ払ったら幾分か楽になりましたね。
とにかく紆余曲折ありまして、当初は何のコンセプトもなくただの短編集になる予定でした。が、自分の中の面白いと思うものに忠実に創作していったら、結果的にああなりました。何本ものコントをボツにしたりひたすら書き直したりして、脚本も製本したのは本番3日前。ひとりじゃないと絶対に出来ないですね。良くはないですけど。
演出もコロコロ変えていて、プロジェクターを使ったオープニングの演出なんて本番2日前に思いついて、Amazonで安いプロジェクターを購入してそのまま現場に持ち込みました。これもひとりじゃないと絶対に出来ない。良くはないですけど。
内容に関しては、月を物語のモチーフにすることが決まって、そこから動き出した感じです。大好きなサン=テグジュペリの「星の王子さま」やアンデルセンの「絵のない絵本」から着想を得たり、敬愛する小林賢太郎さん、吹越満さん、バカリズムさん等のお芝居を参考にしたりして、短編や繋ぎを作りました。
基本は笑って欲しくてやってるんですけども、ひとりでやる公演ということで、図らずとも自分の内側を曝け出すような作品になってしまいました。特に後半とか、稽古中に本気で落ち込んだりしちゃいましたし。オチも最後まであれで良いのか悩みました。
ただ、僕はご都合主義で能天気なハッピーエンドがあまり好きじゃなくて、かといって誰も救われないような後味の悪いバッドエンドも苦手です。なんというか、人生そうそう上手くはいかないけど、それでも生きている価値はあるんじゃないかと思えるような、そういう良い塩梅の物語が好きです。
あの終わり方は人によってどうとでも捉えられるんじゃないかと思っています。希望とも捉えられるし、絶望とも捉えられる。好きに受け取ってもらえれば良いと思います。逃げ道がある方が楽だし。
以前、先輩の脚本家さんが僕の脚本を「絶望を優しさでそっと包み込むような作風」と評してくれて、言い得て妙だなぁと思ったことがあります。背中を押すよりは、寄り添うような物語でありたい。
そんなこんなで、結構大切な作品になりました。
正直まだ研磨出来そうだなと思っていて、またいつかやりたい気持ちがあります。既に台本に修正を加えたりしています。とりあえず体力をつけます。もうひとりじゃやりたくないけど、コンセプト上ひとりでやらないと面白くないしな…。
まあ、期待せずにお待ち下さい。
次は是非、皆様の目の前でやりたいです。
サポートされればほぼ間違いなく喜ぶ男です。